仄暗い
「もしかして、またこのマンションも何かあるの?」
夜、店が閉まる間際の時間に訪問する。
ちょうど丑三つ時だ。
「はい…ここの最上階のワンルーム内見に来た事あります。」言いにくそうに潤が言う。
「でも賃貸探してる時ですよ。ここは賃貸マンションなんで。」潤が説明する。
「なんで借りなかったの?」こわごわ鬼丸が聞く。
「川沿いの桜並木で無かったからです。」手短に潤が返事する。
「それは訪問する前に分かることだよね?本当は?」
1階の通路を歩く。
「昼間に内見に来たんですが…何だか暗かったんです。まだ、線路の事件知る前でしたが。
何だか…気配がすると言うか…映画の『仄暗い水の底から』って知ってますか?団地の共用廊下をずっと部屋まで歩いてるシーンと同じ感じがしたんですよね〜
誰もいないのに沢山人が居る気配がすると言うか…
それで帰りに周りをウロウロしてて、あの石碑を見つけたんです。」潤が申し訳なさそうに言う。
「ア〜ッ、石碑を見つけるキッカケになった場所なのね!ア〜ッ、はい分かりました。」鬼丸は泣く。
「今の線路はかなり外に膨らませたと思うんですよ。安全のために。
多分その前はもっと石碑寄りのこの辺りまで線路がカーブ描いていたと思うんで…です!
私はその頃まだ実家で関西だったので知りませんが。」
潤が言葉を濁してるのが鬼丸にも分かる。
「もう、ハッキリ良いな!」鬼丸が覚悟する。
「1階のこの廊下に上半身と首だけの人が並んでる感じがしたんです。ゴメンナサイ!」頭を下げた。
つまり電車内の上半分だけが、ココに見えると言うのだ。
鬼丸は撃沈した。
「それで、ここを毎日通って部屋行くのはキツいなあと、諦めました。」と潤が語る。
「部屋は最上階で抜けてて明るかったんですけどね〜
部屋までの廊下がキツくて。諦めました。」潤が頭をかく。
「え〜っと、裏の赤いバーは見えなかったと言ってなかった?」鬼丸が泣きながら聞く。
「あそこは悲鳴がすごいです。たくさんの人の断末魔みたいな声が響いてました。ここは…その結果の場所だったんじゃないかな?分からないですけど。」潤が苦笑する。
そんなビジョン感じても、まだ池袋のサンシャインよりはマシなのだ。サンシャイン通りを歩くだけで呼吸困難になる。
昔ハンズがあるし楳図先生も画材買いにしましまシャツでウォーリーみたいに歩いててお話ししてもらえたのだが!
息が苦しくて他のハンズへ逃げてしまったらしい。
そんな共用廊下の突き当たりに卓球バーの入り口があった。
「あれ?コレってボイラー室とかエレベーターの機械室みたいな扉だけど…良いのかな?開けて?」鬼丸は迷ったが開ける。




