カメラ
念のため防犯カメラのある位置を外して炊き出しの設営をしてしまった。手元が映るのを避けたのだ。
そのせいでコカインをワザと入れたのでは思われたのだ。
会社の顧問弁護士をすぐ呼んで事情聴取を受けた。
「この話が終われば、すぐ被害届を出します。
炊き出しのボランティアを何者かに妨害された訳ですから。
受けていただけますね?」と刑事に確認する。
顧問弁護士の立ち会いで、コカインを入れる事でこちらは何も得しないこと。
衆人環視状態でシェフにも白蘭にも不可能な事。
そして、誰でも入れられる可能性があった事。
などを説明した。
話しながら、白蘭は考えた。
誰よりも鍋から目を離す機会は少なかったのだ。
多分シェフよりずっと鍋のそばに居た。目を離したのは…ママに声を掛けられて、慌ててそばの木立へ連れて行って話した時だけだ。
まさかママが池袋のあんな場所に現れると思わなかった。
懐かしいと抱かれたが、反対に気持ちが離れてるのが分かった。
秘書もママも欲望のスイッチが入らない。
絶望が白蘭のスイッチだった。死ねるなら自分が死にたかった。その中で女性の身体の生命力に縋り付いていた。
が、生きる希望が見えて来た。
姉は死んでない!姿を変えて生きてる!
そんな気持ちになってきたのだ。自分の好きな事に夢中になって周りが見えなくなって、女らしさの欠片もない。
白蘭に注意されて嫌々髪をとかして服も興味なくてトレーナーとジーパンでザンバラメガネで出ようとするのを白蘭が服を選んでメイクもしてと出掛ける準備させないといけなかった。
友達と出掛けても一目散に帰ってきて部屋でパソコンして漫画読んで幸せそうにしてた。
携帯なんかカバンの奥深く眠ってて家で触ってるの見たことない。
あの姉が蘇ったような気がしてる。
仕事にも意欲が湧いてきた。
姉が構想してた店を次々と形にしていこうと。
改めて「つらい時をありがとう」とママにお別れをしたのだ。
あの一瞬しか鍋からは目を離していない。
テレビでも犯人探しが連日されてたが…意外な人間が捕まった。
なんとワールドダイニングの秘書からフードロス対策課に変えられた秘書の1人、前秘書の後輩だった梨花だった。
彼女は大学のミスコン経験者で今はインフルエンサーもやっていた。企業名は伏せてたが、キラキラのOL生活をアップしていた。
なのに突然の現場仕事。ヒールはスニーカーに。オフショルのワンピースからつなぎに着替え、軽トラを運転して店から店へゴミを貰いに回る生活。
10名なので1人で10店を担当し都内を回る。
中には本当に腐ってるものも!
それらを仕訳して箱詰めしてNPO法人運ぶのだ。
それもトラックから自分で法人へと運ぶ。
ボランティアの人達なので、皆仕事があるのだ。
常に事務所に詰めてる人が居る訳じゃない。マニキュアは剥がれて手のアップも上げられない。
彼女はその苛立ちを半グレの彼氏にグチっていた。
モデルやタレントは本当に警察のお世話になる人間と良く付き合う。
若い内からチヤホヤされると人間を学ぶ時間を奪われる。見栄えの良い金払いの良い男は大概裏社会に手を染めてる。
結果、留置施設にモデルやタレントが良く差し入れに来る事に…
ミスコンなんて肩書を持ってる女は、だいたい裏社会の情婦だ。
「じゃあ〜さ〜、その目障りな社長潰そうぜ!
そいつがいなくなれば、男なんてスケベな生き物だから絶対秘書室復活するぜ!」
「そうだよね!地位を手に入れた男がやる事と言えば
綺麗な若い女とセックスじゃんね〜」と2人ははしゃいだ。
彼氏が持ってるコカインをサンシャインの雑踏の中に紛れて社長の鍋に入れたのだ。
とテレビ局で報道された。




