石碑
マンションを出ると大きな幹線道路があり車がひっきりなしに走っていた。
道幅も広く向こう側も大きなビルばかり…だが、その間に小さな石碑が見え、その後ろを副都心線日比谷線の電車がこちらもひっきりなしにトンネルから吐き出されている。
「代官山が名前の通り高台で中目黒が目黒川で低地なので、恵比寿まで地下トンネルから中目黒手前で地上へちょうどこのマンション辺りで吐き出されるんですよ。
おかげでちょうど25年前日比谷線が脱線して隣を走る副都心線にぶつかりました。
なんと満員の通勤時間の電車の腹に日比谷線が走ったまま突っ込み…生きたまま切断されて亡くなったリーマン達が多数いらっしゃいました。」潤が言いながら手を合わせ祈る。
オーナーと鬼丸が固まる。
「えっ、そんなの知りませんでした!25年前なんて、僕地元じゃないし…」オーナーが黙る。
「俺もなんか子供の時スゴい凄惨な電車事故をテレビで見た記憶あるけど…それがココだったんだ!知らなかった!」道が広すぎて反対側の石碑などほとんど分からない。
「エ〜ッ、今でも副都心線と日比谷線が並走する時、私はめまいがしますけど。
特にこの恵比寿のトンネルから抜ける瞬間カーブなのに加速するんですよ電車が。
そしてダイヤルがズレる事なく一緒に走り続けるんですよね、副都心線と日比谷線。
私には鉄の長い破片がつり革につかまる人々を真っ二つにしながら突き進んでるのが見えますけど…」潤が中目黒好きなら当たり前って感じで話す。
鬼丸は、心の中で反論する。
『いや絶対そんなの想像しながら飲んでる奴は、中目黒にいない!コイツはやっぱりヤバい女だ。』と。
そしてマンション前の階段を降りて行こうとする。
「エッ、そこから降りれるんだ!」オーナーが驚く。
「はい、幹線道路と電車がひっきりなしでしょ?上は。
ココから階段降りると駅まで、それらの下を通って行けるんですよ。多分、管理人さん達は知ってたと思いますよ。
代官山は各停しか止まりませんし、こっから中目黒駅へ抜けた方が早く帰れます。」潤が先導してオーナーを駅まで送った。
「ついイメージ良くて何も知らないでマンション棟買いしましたが、そんな歴史があったんですね〜
それに今の下道夜は恐いでしょうね…今通って思いました。」とオーナーが暗い顔をする。
「いや〜っ、俺は良く下道のカレー屋が好きで通ってますが、夜は飲み屋がキラキラ地帯なんで賑やかですよ〜酔っ払いが地下トンネルの壁に並んで吐いてたり〜」鬼丸が笑う。
きっとそのメンツの中に鬼丸も居るのだなと潤は思った。




