静夜思
本当にあっという間に床タイルシートを貼り終わった。
潤がエスプレッソマシーンでコーヒーを抽出してミルクフォーマーを作ったりしてる間に貼り終わった。
「早すぎない?」驚き聞く。
「エーッ、部屋が凹凸ないから広げて4方仮止めして
端から接着剤伸ばして貼ったら終わりだから簡単だよ。」と涼しく話すが、多分普通は大変なのだ。
なんでこんな事が出来るのに、簡単な片付けが出来ないのか?理解に苦しむ。
「だって早く貼り終わって…したいから。」鬼丸がもじもじしてる。
「あそこで言えなかったけど要はかなりのマゾなんだよ。でも、なかなか彼が納得する責めを出来る女性いなくてね。
やっと理想の人に出会えたんだよ、彼は。」と話してくれた。そう聞くと納得できた。女王様への注文も多そうだ。厳しそうだ。一刀両断できるママじゃないと手綱は握れないかも。
「俺は…気の強そうな人がもうムリって言うまで汚したいんだよね。」と次は自分の性癖を語りだした。
「白子ポン酢じゃなくて、僕のを食べてもらいたかったよ。壁で押さえていっぱいいっぱい出すから食べてね。」と可愛くない内容をとても可愛く語る。
頭を固定したくて壁紙を張り替えたのだと理解した。
じゃあ、床は?
「立った姿勢から床に手をついた形でやりたかったんだあ〜1番奥まで届くように。」斜に構えてないどストレートな欲望は隠れマゾにはゾクゾクする。
「ムダな事はいっぱい話せるけど、そういうの言えない質なんだよね〜スゴイわ〜」と感心してると
「感心してる暇ないから!
水分取ったの全部出さすからね。」と飲んだカプチーノの水分を絞り取られた。
良い時代に生まれたなあ〜と思った。
一昔前は年齢縛りキツくて、この年齢ならこんな生活って何千万人居ても同じ生き方半ば強制されてハズレると社会から村八分を受けた。
肩身が狭かった。
今は人口減少著しく国としては上向きじゃないが、個人の特に女が幸せな時代だ。
仕事に邁進したい人は仕事が出来、家庭を優先したい人はソレを大きな声で主張しても良い。
本当に女が自由に生きれるようになった。
親や友人に結婚しないの?とか聞かれたが、そんな気持ちになる事も無かった。そして無理して結婚しなくて本当に良かった。
しばらく同棲したら、もう本当に限界が来る。
相手の丸めた靴下触るのも吐き気がするようになる。
あれを子どものためと我慢して何十年も続けるのは拷問だ。特にヲタで我慢効かないのに。
今も鬼丸が別れたあとも衛生的な生活を送れるように出来るだけ自分の事は自分でやってもらってる。
鬼丸の服は捨てたが、洗濯は絶対手伝わない。
料理もしない。コーヒーやお茶は自分が好きだから淹れてるが頼まれて淹れたことは一度もない。
今夜は初めて泊まった。
人と一緒だと寝れないので目が覚めれば帰ろうと思っていたが眠れた。プレイがハードだったせいもあるかもしれない。部屋全部使ってプレイするのでシーツが汚れなくて良いなと思った。
仕方なく家具屋が扉側にセットしたベッドだったが、おかげで窓際が解放され鬼丸は前の事務所が夜中に閉まった瞬間にカーテン開けてガラス窓に手をついてと言われた。月を見ながら後ろから責められるのは、何だか風情があった。川音と月の明かりに漢詩が浮かぶ。「静夜思」だったか?
窓の霜を拭いたら、それは、月光だったと。そびえるビルの合間の月と頭を下げると川音が静かに聞こえる。故郷は思わないが、自分の半生を思う。
時代に合わさず自分に合わせて生きて良かったと。




