事故物件
「やあ〜、課長がヤバいと言ってたアナタと一緒に仕事できるの面白そうだなぁ〜楽しみです。」めちゃくちゃ汚いヒグマみたいな男、鬼丸が笑う。
何となく…合格採用みたいだ。
『うん、副署長が私をヤバいと?』
ちょっとそこが気になったがスルーした。
「さっそくなんですが、この近くに立て続けに管理人が自殺してる賃貸マンションがあるんですよ。
そこのオーナーが困ってて何か原因がないか調べて欲しいらしいんですよ。」地図を見せられた。
「あ〜っ、ここのマンションなら何度も前通ってますよ。すごく綺麗なのに比較的安いですよね、賃料。」すでに中目黒の物件はかなり精通している潤だった。
ワンルームばかりのマンションだ。
間取りまで頭に入ってる。玄関が吹き抜けで豪華なシャンデリアが3階から1階まで貫いている。
玄関もオールガラスで夜など素敵なクラブみたいだ。
「わあ〜、本当にヤバい人ですね〜」鬼丸が喜ぶ…が、歯が真っ黄色だ!
「…あの、歯磨いてますか?」思わず聞いてしまった。
「あっ、そうだ!カレーばっかり食ってて全然磨いてないや!」鬼丸が口を抑えた。
本当に素直な性格なんだが…警察と言う箱を失ったせいで、かなりヤバい奴になってる。
大急ぎで鬼丸が歯を磨いてる間に隅に置かれてた段ボールを組み立てゴミをポイポイ放り込んでいく。一箱満タンになった所で鬼丸に聞きに行く。
「この中に残したい物あります?」見た鬼丸は首を振る。すると次は目黒区指定のゴミ袋に入れていく。
燃えるゴミと燃えないゴミを分けボンボン放り込む。
鬼丸が出掛ける支度してる間に事務机とソファの周りだけは片した。ゴミの中には脱ぎ捨てられた服もあったのでそれで机もソファもテーブルもゴシゴシ水拭きで磨いて服は捨てた。
ビルオーナーに会いに行くのでヒゲも剃った方が良いと勧めたので支度に1時間くらい掛かったが、その間にやっとオフィス部分だけは何とか座れる所まで持って行った。
お茶を淹れたかったが…キッチンが恐い!
また、コッチは今度洗剤や道具を買ってきてやろうと諦めた。
ゴミを手分けしてビルのゴミ入れの大きなケースに入れて問題のビルへ向かう。
オーナーがビルの前で待っていた。
代官山からも5分、中目黒からも5分くらいの良い立地だ。おかげで周りは飲食店やレストランやショップばかりだ。
「元々ビルを丸ごと買って欲しいと3年くらい前に言われて買いました。前のオーナーもトラブル多かったらしく
それは全部聞いた上でそれでも立地の良さと価格で買ったんですよ。」オートロックを抜けて中に通された。
左脇に小さな窓があり「ここか管理人室です。」と教えられた。
「今はどうされてるんですか?」鬼丸が聞く。潤は撮影して話しをメモる。会社時代とやる事は変わりない。
ふと前の道を通ると豪華なマンションに見えたが、中に入ると何だか暗く感じた。
吹き抜けの全面ガラスなのに…なんだかどんよりしてる。
そして会社や、学校の時間だとしても静かすぎないか?
まるで建物から人気がしない。
「今のところ入居率はどうですか?」潤が質問した。
「場所が便利なので100%埋まってます。でもね〜管理人はいないので巡回式で掃除だけ頼んでますが、困りましたよ、本当に。」オーナーがため息をつく。
途端に上から視線を感じて鬼丸も潤も同時にシャンデリアをあおぐ。
が3階まで吹き抜けなので人は居るわけない…
2人の様子を見たオーナーがボソッと話す。
「2人目の管理人さんは、この吹き抜けで首吊り自殺したんですよ。それからは、誰を連れてきてもお二人と同じリアクションされるんですよね。
事前に話してなくても…」オーナーが腕を組んで頭を下げる。
「僕も手放すしかないかもしれません。稼働率100%なら事故物件でも高く売れますし。」と半ば諦めている様子だった。




