可愛いの暴力
若い時は、ミステリアスな男に惹かれた。
言葉少なく感情も見えないような…
年を経ると、それらは警戒心と自己防衛本能、ひいては自信の無さや劣等感から出てる事に気付いてしまった。
鬼丸みたいに気持ちがまんま正直に出るのは、社会と自分の間に要らない感情が無いのだ。壁がない。
信じてると言うより、話さないと表現しないと人間同士が分かり合えないだろうと思ってるのだ。
無口な男に「察してちゃん」が多くて疲れた潤には、この気持ちが全部出てる鬼丸は、本当に癒される。
背中がスゴい傷ついた男のソレだ。
たまにチラッとこっちを見る以外、ずっと背中しか見せない。
そんなに窓の外は複雑な風景じゃない!
目黒川と桜の木とその向かいのスープの会社の人が忙しく動き回ってるだけだ。新しいスープの開発室のキッチンでたまに集まる姿が見える。
本当に良く働く人達で24時間誰かは残って働いてる。
「せっかく写真いっぱい撮ったんだから編集しましょうよ!暇があったら寝室も早くキレイにしてください!」ワザと声をいっぱい掛ける。
その度に肩がモゾモゾ動いて…楽しい!
淹れたコーヒーも手だけで探り探り飲んでる。
いつかこぼすぞ!と眺めてるが、なかなかこぼさない。
その体全体で悲しみを表現するの辞めて貰いたい!
寝室の掃除は探偵開業してから1度もした事無いらしい。特にベッド下のゴミは奥に行くほど圧縮さるてるようだ。
やっと少し様子見に入ってバルサンを数回たいた。
シーツに人型のシミがあるのが、もうホラーだ。
はがして棄てた。
この環境で身体に何も異常が無いのがスゴい!
壁の隅の方には換気したことないせいでカビが発生してる。
…この部屋では、無理かもしれない。リフォームしないと…
潤は通販でベッドを頼む。寝具類も頼んだ。
「新しいベッド頼んだので、今あるのは持って帰って貰いますね。」と鬼丸に報告する。
鬼丸が顔だけこっちに向ける。
「それは…」と言いかけて、また窓の外を向く。
すっかりスネてる…いじけた背中がめちゃくちゃ可愛い!
「ベッド下を片付けると言うのが無理なら、ベッドの方を退けましょう。
そうしたらゴミを袋に詰めるだけです。それなら、できるでしょう?」と鬼丸に問いかける。
料理でも掃除でもワンクッション外すと、かなり作業効率が上がる。
「それって…」やっと鬼丸がこっちを向いた。
唇に軽くフレンチキスをする。
「とりあえず寝室用スリッパを買っとけば、どこにも触れずにベッドまで行けます。それでしのぎましょう。」鬼丸がガバッと潤をハグする。
「舌入れますよ?良いですか?」ちゃんと聞いてくる。こう言うのも若いとヤボだと感じるが、人と人の精神的距離はそれよりもっと離れてると分かると大事なのだ。
梅毒や性病は口接でも伝染る。
彼自身は発症しなくても相手だけ発症する事があるのだ。
「歯を毎日磨いてるのは確認してます。病変もありません。お風呂も濡れてるので大丈夫です。」と答えた。




