攻守
「ねっ、あの人、変じゃない?」フラフラと森から現れた男にママ達が警戒する。
「手に持ってるの…包丁よ!やばい!誰か警察!」「〇〇!戻って!」保育園の先生も子供達を集めて男から逃げる。
「どうした?お父さんだよ?おいで?…皆で幸せになろう?
もう2度と離れ離れならないように。おいで…」鈴木宗雄は呟くが子供達もお母さん達もどんどん離れて固まっていく。
「お前達、お父さんが嫌いなのか?なんで、お父さんを嫌うんだ!
ちょっと浮気しただけじゃないか?ちゃんとお前達の事を愛してたのに!
なんで、逃げるんだーーーーーっ!!!」鈴木が激高して包丁を振りかざし子供やお母さん、保育園の先生達の群れへ向かって走り出した。
「行けーーーーーっ!!」芝生の上をガタガタと潤に押されて鬼丸が乗った自転車が鈴木へツッコんで行く。
「ギャャャャャャーーーーッ!!」鬼丸と鈴木の悲鳴が公園に響く。
鬼丸は自転車で鈴木を轢いて倒れた。まだ包丁を振り回す鈴木の手を掴みひねる。
「こんな切れ味いいの振り回さないでよ〜もう!」と言いながらサクサクと後ろ手に固定する。
自分の腰の辺りを触るが手錠は持ってない。
「そうか!もう警官じゃなかった!」とキョロキョロしてると、「これがあるでしょ!」と潤が鬼丸のズボンのベルトを外して鈴木の両手を器用にぐるぐる巻きにして縛る。
そこへやっとサイレンを鳴らして警察が駆けつけた。
鬼丸が「11時40分、包丁を振り回す暴漢を逮捕しました!」と報告する。
「…警察ですか?」駆けつけた警官達が聞く。
「現行犯は民間人でも逮捕できます。刑事訴訟法第213条、忘れちゃダメでしょ!
元留置管理第一課、花田潤と元捜一機捜隊の鬼丸太郎です。」
鈴木宗雄が鬼丸のベルトごと手錠を掛けられ警察車両に押し込まれる。
まだまだ、公園のお母さん達保育園の先生、そして潤と鬼丸も事情聴取が続く。
「な〜んだ、2人共元警官かあ〜ああ〜面倒だなぁ〜」菅刈公園の横を白蘭は通りながら呟く。
鈴木宗雄が西郷山で占い師に会った話は信じられなかった。公園に防犯カメラはあったが、ベンチの位置のは強風で木が当たり壊れていた。補修工事が8割方止まってる目黒区では、しばらく交換の順番待ちらしい。
他のカメラには、そんなベールかぶった怪しい男は映っていなかった。犬を連れた散歩の人が10人くらい防犯カメラに映っていただけだ。
「知らなかった〜留置だったんですね。」下がるズボンを両手で引き上げながら鬼丸が話す。
「ベルト返してくれませんでしたね。護送車行った後に気付きました。」潤が申し訳なさそうに自転車を押す。
「潤さんこそ、自転車ボロボロじゃないですか!
良いんですか?」鬼丸が心配する。
「良いですよ〜犯人にぶつけたの私だし。鬼丸さんが丈夫で良かったです。」鬼丸は歯も磨かないし風呂も入らないが虫歯も無ければお肌もこすればピカピカでダニにも噛まれてない。
色々とクソ丈夫な男のようだ。
「えっ、俺の事心配してくれたんですか?」鬼丸が勘違いしてる。
「いえいえ、大事なら自転車ごと犯人にぶつけませんて!」潤は首を横に振った。




