男女の絆
チャンスだと思って頑張って!」鈴木宗雄は拾ってくれたグランシェフに期待されたが、留学帰りの若手シェフに水を開けられてしまった。
今は会社の独身寮にかろうじて住ませて貰ってる。
自分以外は、学校出たばかりの10代20代しかいない。
30代後半なんて自分だけだ。
調理師免許はあるが、自分の店は潰してしまった。
嫁さんと2人3脚で代々木にイタリアンの店を出した。
順調だったのに嫁さんが妊娠して手伝えなくなったのでバイトの女子大生を入れたのだ。
かなり良い気になってたと思う。つい手を出してしまった。
子供が出来てから嫁さんは髪振り乱して子育てしてて相手してもらえなかったのも原因だ。
子供を連れて実家に帰ってしまった。店は女の子いるから回るかと思ってたが、嫁の父親から貸した金の一括返済を求められた。
そう、自分達に資金が無かったので義父に相当借り入れしたのだ。
少しづつ返すはずだったが、話が変わったらしい。
まあ考えれば、それが普通だ。また離婚で店の権利、嫁の持ち分も一括返済を請求されてしまった。
それが出来なければ、店を売って金を返すよう迫られた。
その頃には、女子大生も不倫の慰謝料請求され、本人が払えないので親へ請求がいった。おかげで大学を辞めて田舎に連れ戻されてしまった。
結局、店を売り嫁に金を返した。子供達の養育費は請求しないと言われた。でも、子供には二度と会わないでと約束させられた。
また雇われコックに戻ったが、自分ペースで出来てたし客も常連が増えてた自信が災いした。結局店のオーナーとケンカして辞めさせられた。
そんな事を繰り返してる内に住む所もなくなり道端で寝るようになってた。
ちよっと若い女で火遊びしただけだ。離婚する気なんて無かったのだ。
嫁が子育てで全く自分の相手してくれなくて寂しかっただけだ。なのに、何を血迷ったのか実家に帰ってしまった。
すぐに頭冷やして戻ってくるとばかり思っていたのに…来たのは義父だった。
「2人で10代から築いた絆は何だったんだ?
そんな浮気くらいで潰れる仲だったのかよ?」と妻との話し合いを求めたが、拒否された。
完全に自分だけ切り捨てられた。
そんな時、炊き出しで声を掛けられたのだ。
店にも何度か来てくれた有名シェフの広瀬さんに。
中目黒に新しいイタリアン出すから、再起を掛けて挑戦してみないかと。
住む所が無いと言うと、中目黒の独身寮を紹介してくれた。「見習いの子が住む所だけど家賃は要らないからね。店まで徒歩だし仕事に集中して!」と期待してくれたのだ。
しかし…競う相手達がレベル違いだった。
フランスやイタリア帰りであちらでも賞を取ったような若手達だった。
語学も堪能で広瀬さんの走り書きのフランス語のメモもちゃんと理解してた。
「君はセンスがある。後は努力だけだよ。」と言ってくれてた広瀬さんもだんだん関わらなくなっていった。
目立とうと我流のスパイスでアレンジして上客の機嫌を損ねてしまった。
もう広瀬さんも庇いきれなくなってしまった。
店に行くのが、もう辛くなって…この頃は寮にこもりっきりだ。




