マインド
「ア〜ッ、自殺した気持ち分かる〜!」潤が頭をかきむしってマンションから出る。
鬼丸はガタイも良いし迫力あるから、マンション住人を呼び止めても話になったが、潤には「なんだ?このオバちゃん?」とガン無視を決め込む住人ばかりだった。
「失礼な奴ばっか!今時ってこんなもの?」潤がマンションの階段をガツガツ踏みながらオートロックの外に出た。
「前は警察だったけど、今は一般人だからね。話聞くのは大変なんですよ〜探偵ってこんなもの。慣れてください。」鬼丸はクックッと笑う。
会社や組織でそれなりの立場にいた人が、これはツライだろう。と良く分かった。
「でも、定年退職した人が皆自殺してる訳じゃない。
潜在的な気持ちを実行にうつす…キッカケがあったはずなんですよ。」鬼丸が真顔になる。
鬼丸の仕事は、黒猫みたいに華麗じゃない。地道に積み重ねて行くやり方だ。
でも、適当じゃない。だからこそ、事件の真相に近づいていけるのだろう。
「じゃあ、やっぱりキッカケ探しだね。管理人さんのタイムスケジュールで動いてみましょう!
まずはランチ探しだね。でも今日は日曜日だからなあ〜」2人で駅に向かう地下トンネルを抜けて駅前商店街をうろつく。
あの妖しいバーも今はカレー屋さんになっている。
扉を開け放ち中が見えるようになっている。周りにカレーの匂いが立ち込める。
昼間は別のオーナーなのかメガネのエプロンお兄さんがカレーを混ぜている。
鬼丸と目が合うと会釈する。
「鬼丸さーん、食べていかないの?」メガネのお兄さんに声を掛けられたら、もう座っていた。
「潤さんも食べましょう。美味しいですよ〜」鬼丸は子供みたいに無邪気にはしゃぐ。
メニューは1種類しかないようだ。座るとすぐに提供された。
「ここは昼何時まで開けてるんですか?」潤が聞く。
「う〜ん、適当なんだよね。客足が消えたら閉める感じで〜だいたい3時かな?」1人で回してるので忙しいようですぐカウンターに戻ってしまった。
「管理人さんも来てたかもしれませんね。2時過ぎてもやってくれてるお店は貴重です。」と潤が話しかけたが鬼丸は食べるのに集中していた。
他の店も日曜だからやっていたが、平日は皆1時半から2時で閉まっていた。
食べ終わって会計に行くと鬼丸が携帯で管理人さん達の顔を見せた。
「この頃、来ないなあ〜と思ってたんだ。常連さんだよ、ウチの。」と忙しいそうだが、ちゃんと覚えていた。
鬼丸が手で◯を作り潤に合図した。
聞いてないようでちゃんと聞いていた。
何だかんだと手堅く仕事する。警察無くても探偵でも仕事やれてるのだから、鬼丸は地味にスゴいようだ。
刑事だと定年で現場外されるが、探偵なら自分で引退決めるまでやれる。長くやりたいなら、フリーも良いかもしれない。
去ろうとする鬼丸と潤に、メガネエプロンのお兄さんが一声掛けた。
「白蘭には気を付けろ。あいつは毒だ。」と。




