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町内会
「町内会の役が回って来たわ」
妻がそう言いながら、古い自転車を押して帰ってきた。
ブレーキを掛けるとキーッとうるさい自転車だ。
「この前、夕方に焼き魚の匂いを流す役が終わったばかりじゃないか」
そう私はボヤいた。
妻はため息混じりに言った。
「あのね、多様性の時代に人情味溢れるコミュニティを取り戻しましょって言ったって上手くいかないんだから、こうやって形から入るのよ」
「形から人情ねぇ…」
「もう。明日から暇な時は、これに乗ってよね」
古い自転車は嘘みたいに錆だらけだった。
路地から飛び出す子ども、町内に響き渡る音量のクシャミをするオジサン、野良猫に餌をやるお婆さん…。これらも全て、この町を人情味溢れるコミュニティにする為、持ち回りで行われている。
町内会とは、何と面倒なものだろうか。
しかし、それ以上に私はこの町を気に入っている。




