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ざる蕎麦
昼休憩に常務と蕎麦屋に入った。
「ざる蕎麦、バッハで」
常務がそう注文したので、私も取り敢えず同じものを頼んだ。
間もなくして、我々の前にざる蕎麦と白い物体が届いた。
戸惑う私に蕎麦屋の大将が言った。
「その白いのは中世ヨーロッパの貴族達が着けてたカツラだよ。ほら音楽の教科書でバッハが被ってただろ。だからこの界隈じゃあ、それをバッハと呼ぶのさ」
常務は既にバッハを被り、美味そうに蕎麦をすすっていた。
私も慌てて、後に続いた。
常務が言った。
「どうだ美味いだろ。バッハだと、まるで洋食みたいだろ」
「本当ですね、これは完全に洋食です!」
私は感心して蕎麦をすすっていたが、ふいに隣の客がターバンを被って辛そうに蕎麦をすする姿が目に入った。
『…しまった、あっちの方が美味そうじゃないか!』
私はメニューを見ずに注文した自分を恨んだ。




