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目線
久しぶりに実家へ帰り、押し入れから古いアルバムを引っ張り出した。
そこには、幼い私を抱き上げてピースサインをする祖父の写真があった。
それを見た瞬間、忘れていた記憶が蘇った。
祖父は一度だけ、私に戦争時代の話をしてくれた。
それは、祖父が海軍に入った事、潮の流れを読むのが上手かった事、上官のしごきで泡を吹いた事、狭い船内で横歩きをした事、岩場に隠れると落ち着いた事、脱皮に苦労した事、甲羅が硬くなり安堵した事、茹でられて想像以上に赤くなった事などだった。
祖父は何の話をしても、いつも途中からカニ目線になっていた。
理由は知らない。
只、祖父はそういう人だった。




