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果て
墓参りを終え、住職と立ち話をした。
「そういえば、住職は何代目なんですか?」
「私の親は普通の会社員でした。私が出家し、縁あってこの寺を継いだのですよ」
「へぇ、そうなんですか」
「恋愛でも極道でも、人間は何かの分野で果てを見たら、出家するものです」
「果て?」
「そうです。我々はそれを『恋愛果て僧』や『極道果て僧』と呼びますが、俗世を極めた人間は針が逆に触れる様に出家するのが世の常というものです」
「そう言われてみたら、そんな人もいますね」
「手前味噌ですが、親の跡を継いだ世襲の人間より、果てを見て出家した人間の方が、僧侶としての深みはあるのですよ」
「なるほど、それは分かる気がします。ところで、住職は何の果てを見られたんですか?」
「私は『河原の草野球を一日中眺めているオッサン果て僧』です」
住職は柔和な笑顔で、小さくセーフのジェスチャーをして見せた。
私は急にお腹が痛くなった。




