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過労死手前
過労で倒れ自主退職した先輩に三年ぶりに会った。
私は先輩の姿に戸惑いながらも、それを悟られない様に声のトーンを上げた。
「先輩、お久しぶりです。心配してたんですよ」
「おう、久しぶり。ご覧の通り、働き過ぎで過労イカになっちまったんだ。まぁ、過労死じゃないだけマシだけどな」
先輩は頭が三角形で全体に白くヌラヌラしていた。
「先輩…こんな事を言っていいのか分かりませんが、私が想像してたより、だいぶイカでビックリしました」
「だろうな。俺も初めは戸惑ったよ。…でも慣れたらイカも悪くないぜ」
そう言って先輩は、八本の足と二本の触腕をニョロっと動かして見せた。
その手足には、それぞれナイフや栓抜き、ドライバー等が握られていた。
「それは…?」
先輩は恥ずかしそうに答えた。
「実は今、十徳ナイフとして働いてるんだ」
「先輩、素敵じゃないですか」
私は何だか感動して泣いてしまった。
先輩はそんな私を見て、墨を垂らして笑ってくれた。




