テンプレ、破壊しちゃいます。
数々の異世界恋愛小説を読んだ私、突然事故で死んでしまった。
転生先は、ふわふわファンタジー世界。
日本の食べ物、天ぷら、ハンバーグも定食屋で売られているし、シャワーもある世界。
トイレも水洗だよ。
そんな世界で私が生まれ変わったのは、なんと天使。
元の世界、日本で小さな善行を積んだおかげで、神様のように世界に介在する力を持つ天使に生まれ変わった。
なぜか、外見は以前と一緒なんだけど、大きな翼があって空を自由に飛べる。
魔法を使えるんだよ。
神様の世界を破壊しなければ、好きにしていいと言われたので、私は、テンプレ破壊を試みることにした。
内気な令嬢が自分より身分の低い男にアプローチされ、結婚。
子供まで生まれてしまった!
その男は財産目当てで、愛人もいて、妻殺害を試みる。
私はそれを阻止!
しかも旦那の悪行を妻の父親の伯爵様に教えてあげて、見事に離婚。
それだけじゃなくて、裏切った旦那もすべてを失い、破滅。
こうして、母が死んで、義理の母と妹に虐められる令嬢の爆誕を止めることができた。
私は一人しかいないし、天使と言っても時を止めることはできない。
なので、すでに可哀そうな令嬢になってしまった令嬢には、虐げられる前に知識を与えてあげ、祖父に現状を訴えた。
おかげで、令嬢は召使のように扱き使われる前にこの現状から脱出。
父と義理の母と妹は、家の乗っ取りを考えていたということで、身ぐるみはがされて、街に放流された。
その後、どうなったかって?想像におまかせします。
虐げが始まったしまった令嬢には、数年後颯爽を現れる王子様に現状をさっさと教えてあげ、王宮に連れて行ってもらって保護。
王によって父と義理たちは裁かれ、国外追放になった。
幼馴染と婚約したけど、婚約破棄されるパターンは、婚約破棄してもらわないと隣国の王子に溺愛されないから、迷った。
だけど、虐げは可哀そうだし、婚約破棄はダメージだよね?精神的に。
だから、隣国の王子に現状を早めに知ってもらうために、彼を留学させ、令嬢を早く会わせた。
運命なのか、婚約破棄する前に隣国の王子が令嬢に惚れてしまい、なんていうか、力業で婚約解消されて、令嬢はハッピーに。
幼馴染は、とりあえず令嬢の義理の妹と婚約したけど、上手くいかなかったねえ。
それはそうだよね。我儘娘だし。
結婚には至らず、幼馴染は婚約破棄していた。
妹は新しい婚約者を探そうとしていたけど、虐めていた事実が明らかになったりして、いい相手は見つからず、結局お金持ちのおじいさんと結婚することになっていた。
テンプレ、壊したつもりだけど、ざまあはしっかり残ってしまった。
「茜。どうだね」
「うーん。神様。色々やってみましたけど、いまいちですね」
「君は何が不満なんだね」
「ざまあです」
「悪いことしているから、罰が与えられるのは当然だろう」
そうか。
神様の言葉で私はやり方を変えることにした。
虐げ令嬢を作り出す、父、義理の母、妹の意識改革だ。
浮気しそうな父には、これから起きることを想像させ、愛に生きたいなら結婚を勧めない。
不倫を続ける美しい女性には、相手の男の妻からざまあされる可能性を教えて、警告。
また結婚してしまったなら、義理の娘を苛めないように教育。というか脅した。
義理の妹ちゃんにも同じような警告をしてあげ、可哀そうな令嬢は生まれなくなった。
その代わり、物語としては面白くないかも。
まあ、私は物語を綴っているのではなく、この世界で生きる人々を少しでも不幸から遠ざけようとしている。
「そうは思えないけどね。完全に茜の趣味だろう?」
「そうですね。はい」
「まあ、いいけど。茜。もう十分楽しんだかい?それなら、今度は僕と物語を作る?」
「か、神様と?」
「うん。どうして、僕が君を転生させたか知ってる?」
「えっと、善行を積んだからですよね?」
「違うよ。君が僕の好みだから。天使の本当の役目を知ってるかい?」
「な、なんですか?」
「神様を慰めることだ」
「え?えええ??」
「僕は君の好みだろ?さあ、僕の胸に飛び込んできてもいいよ」
「遠慮します。いやいや、突然この展開はないから」
「展開とか。関係ないから。むしろギブアンドテイクでしょ?」
「いやいやいや」
なんというか、私が転生した理由は、テンプレを破壊するためではなかったみたい。
外見めちゃくちゃ好みの神様といちゃいちゃライフ。
これ十八禁じゃ?
なんて突っ込みを入れながら、私は転生先でにぎやかに暮らすことになった。
問題は、神様が寿命がないように、天使にも寿命がないこと。
こんな世界ちょっと嫌かもしれない。




