表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

1 前世の記憶~最強の聖女~


 城の大広間にて、私の目の前ではこの国の皇帝が腕を組んで立っていた。


 私の名はリンジーといい、この帝国に聖女として仕えている。つまり、こちらを睨みつけてくる皇帝メルヴィン様は私の主君。のみならず、婚約者でもあった。


 このような関係になった事の発端は今より二年前に遡る。

 先代の皇帝であるメルヴィン様の父上様が私の能力を知ったことで私を大層気に入り、帝国の聖女に認定した上で息子との婚姻も決めてしまった。

 当然ながら、メルヴィン様としては全く面白くなかったのだろう。婚約が決まってから、まるで当てつけるように多くの女性達に手を出しはじめた。


 そして、つい先日、先代皇帝が不意の病で亡くなる。


「リンジー様、あなたとの婚約を破棄させてもらう」


 メルヴィン様は冷徹な眼差しで私にそう突きつけてきた。

 精神的な衝撃の大きさから私は思わず一歩後ずさり。どうにか声を絞り出す。ように装った。


「……分かりました、陛下」


 目に見えて気落ちしているはずの私に対し、メルヴィン様はさらに容赦なく追撃を加えてくる。


「あなたは聖女となってからのこの二年、帝国のために何一つなしておられない。そもそも私はあなたの能力について一切知らされていないし、なぜ父上があなたのような者を取り立てたのか理解に苦しむ」

「誤解です、陛下! 私は何もしていないことは……! 能力についても皇帝におなりになったのできちんとお知らせするつもりでいました!」

「もう結構。どのような能力であろうと、我が帝国はリンジー様の力など必要としていないのだから」


 とメルヴィン様が視線を向けた先の扉から、一人の女性が大広間へと入ってくる。あれは魔法士団のエース、ユイミアだ。


 ちなみに、この世界の人間は通常一人一つの魔法能力を発現する。日常生活に役立つ魔法もあれば、戦い向きの魔法もあり、どんなものが出るかは運次第。さらに、魔法の強さも運次第で、マッチ一本分の火を点けられるだけの者もいれば、最初から巨大な火球を作り出せる者もいた。

 魔法士団とは、高威力の戦闘向き魔法を発現した者達の集まり、帝国の精鋭部隊だった。


 なお、私もかつてはそこに所属する帝国魔法士で、首席のシメオン様からの推挙によって前皇帝に聖女認定されたという流れになっている。私の魔法は国家機密扱いで、その実態を知るのはごく一部の者だけに限られた。


 ユイミアとは魔法士団での同期に当たり、あちらも前皇帝やシメオン様のお気に入りで雷姫と呼ばれていた。

 彼女の隣に立ったメルヴィン様は、あたかも自分事のように胸を張る。


「近頃は帝国に仇なす魔獣はこのユイミアの雷で一掃されている。もう雷姫がいれば聖女はいなくても問題ない」


 この持ち上げられように、ユイミアは私の顔を見ながらニコリと微笑んだ。

 ……くぅ、ちょっと調子に乗ってない? でも、ここは我慢だ、もう少しで私の目的は達成される。


「……仕方ありません。では、婚約の破棄はお受けいたします。私は以前の魔法士団に」


 そう言いはじめた矢先、メルヴィン様が遮って言葉を続けた。


「怠惰な聖女などもう用はない。リンジー様は帝国より追放処分とする」

「「……え?」」


 私とユイミアの声が重なり、二人で顔を見合わせる。


 いやいや、追放までは想定してない。

 確かに多少は怠惰な聖女に見えるように、ここしばらく好きな物を食べて好きな時間に寝る食っちゃ寝の生活を送ってきたけど。

 それだけで追放ってさすがにひどすぎでしょ! ……この元皇子、私がこの帝国のために頑張ってきたことも知らないで。その成果を隠してきたのも私だけど!

 大体そっちがあちこちの女性に手を出したのが原因だよね? そんな人と結婚できるはずないでしょ!


 私の中で理不尽な思いがふつふつと込み上げてきて、ついに爆発した。


「おのれ、この浮気皇子っ! おとなしく婚約だけ破棄してくれればいいものを!」

「い、今はもう皇帝だ! なぜ急に人が変わった! さては今まで本性を隠していたな、この悪女め!」

「誰が悪女だ! 偉い人の前で猫をかぶるのは普通のことでしょ! あんたは間違いなくろくでもない元皇子だけど! な、何、あんた達!」


 メルヴィン様の呼び入れた騎士達が私の周囲をぐるりと取り囲んでいた。皇帝の「その悪女を摘まみ出せ!」という指示に従って私にずずいと迫ってくる。

 このやりように私の怒りは頂点に。


「だから誰が悪女だ! ……もう許さない、私の魔法が見たいなら見せてやる! 神の」

「やめなさい、バカ! 大惨事になる!」


 ユイミアの叫び声で私の頭に上っていた血は一気に下がった。

 ……危なかった。浮気皇子はともかく、関係ない人達まで巻きこむところだったよ……。

 私が申し訳なさげな視線を送ると、ユイミアは大きなため息をつく。


「追放されたものはしょうがないでしょ。リンジー、とりあえず外で待っていて」

「……うん、そうする。あ、自分で歩いていきます」


 騎士達に誘導されて大広間を退出する私を見ながら、メルヴィン様が「まるでよく躾けられた犬のようだ……」と呟いた。悪女の次は犬扱いか、この野郎……。



 ――城の外まで連れ出された私は、城門を眺めつつ道の端でしゃがみこんだ。

 うーむ、無能な聖女を装って婚約を破棄してもらう予定だったのに。これは装いが過ぎたか?


「……まさか、追放されるとは」


 これまでの、怠惰と言えなくもない生活を振り返っていると、城門から出てくるユイミアの姿が目に入った。


「あの後、どうなった?」


 即座に駆け寄って尋ねた私に対し、彼女は首を横に振って返してくる。


「別にどうもなってないわよ、あのまんま」

「私の追放処分は?」

「だから変わってないって。追放されたまんまよ」

「おのれ、あの浮気元皇子! やっぱりさっきぶっ飛ばしておくんだった!」


 地団太を踏む私をユイミアは呆れた眼差しで見てきていた。

 私と彼女は、実はただの同期ではなく、かなり仲のいい友人同士でもある。今回、婚約破棄されるために私が立てた計画の一番の協力者でもあった。


「リンジーの計画に乗ったのがそもそもの間違いだった。あんたは表向きぐうたらな生活を送っているだけだったし、実際にも結構ぐうたらな生活を送っているだけだったんだから。そりゃ破棄通り越して追い出されもするわよ」


 手厳しい意見を述べてくる友人に、私は地団太をやめて再びしゃがみこむ。


「……それなら、どうすればよかったって言うの? 何にしても全部遅いよ、私、もうこの帝国にいられなくなっちゃったんだから」

「分かりやすく落ちこんでるわね。慰めになるか知らないけど、私も魔法士団をやめてきたわ」

「……え、なんで?」

「リンジーがいなきゃ帝国はやばいし、一応あんたは友人だし」


 やっぱりユイミアは私の友人、いや、もはや親友だ!

 しゃがんだ状態から勢いよく飛びつくと彼女は迷惑そうに私を引き剥がした。


「私達二人ならどこに行ってもやっていけるし、とりあえずこれからどうするか考えましょ。まだシメオン様がメルヴィン様を説得してくれているから、追放処分もどうなるか分からないけど」

「そういえばシメオン様、大広間の外で様子を窺っていたね」


 喋りながら私達は城下町を歩いていた。

 そのまま町を通り過ぎて、二人でよく訪れる小高い丘に登る。天辺で振り返ると、日に照らされて輝く城を眺めることができた。

 草地に腰を下ろし、ポケットから取り出したクッキーを半分に割って片方をユイミアに手渡す。


「メルヴィン様が婚約破棄してくれなかったら、目の前でこれを食べようと思っていたんだよね」

「本当に、あんたの計画に乗ったのが間違いだったわ」


 クッキーを齧りながら先ほどユイミアが言ったことを考えていた。

 これからどうするか、確かに私達ならこの帝国じゃなくても生きていける。むしろこれは好機なんじゃないかな。国なんかに束縛されず自由に暮らすための。お金はたまに魔獣討伐の依頼でも受ければ充分に稼げるし、世界を旅しながら生きていくのも悪くないよね。

 私はクッキーをくわえたままその場で立ち上がる。


「よし、旅に出よう!」

「さっきまでとは打って変わって晴れ晴れした顔をしてるわね。じゃあ、どうせ旅をするなら世界魔獣戦線協会にでも所属してみる?」


 ユイミアの言葉に私は記憶を手繰った。

 世界魔獣戦線協会とは、その名の通り魔獣討伐を主目的にする国際機関だ。世界を股にかけて活動し、各国からの要請に応じて救援に駆けつけたりもする。

 戦線協会の魔法士になればあらゆる国で融通が利くらしい。旅をする上ではきっと助かるに違いない。毎月お給料も出るそうだし。


「所属しよう!」

「今、お給料のことが頭に浮かんだでしょ? 戦線協会は完全に実力主義みたいだから、私達は結構出世できるかもね。でもちょっと待った。その前に、リンジーの追放処分が取り消されるかも」


 ユイミアに促されて視線を向けると、丘を登ってくる一団が目に入った。中心にいるのはメルヴィン様と齢七十ほどのおじいさん、魔法士団首席のシメオン様のようだ。

 彼らを見つめつつユイミアも腰を上げた。


「たぶんここにいるから、とシメオン様に伝えておいたのよ」

「えー……、余計なことを。せっかく国際機関のエージェントになる決意を固めたのに」

「……追放されちゃったってへこんでたのは誰よ」


 私達は丘の上で皇帝の一団が到着するのを待つことに。

 やがて団体が到着すると、まずシメオン様がメルヴィン様の頭に手をやってグイッと下げさせた。


「ほれ、リンジーちゃんに謝るのですじゃ、皇子様! 城に戻ってくださいと!」

「……じいや、俺はもう皇帝だ」

「半人前が何を抜かしますかな。リンジーちゃんがおらねば帝国の衰退は必至、ユイミアちゃんまで行ってしまってはなおさらですじゃ。そんなことも分からないのですからの!」


 シメオン様は大変なご立腹だった。この方はメルヴィン様が幼少の頃からの教育係なので、ご覧の通り皇帝といえど頭が上がらない。そして、私とユイミアを孫のように可愛がってくれている心強い味方でもあった。

 頭を押さえつけていたじいやの手を振りほどいたメルヴィン様は一歩距離を取る。


「ちょっと待ってくれ。大体、俺はリンジー様の魔法がどのようなものかも知らないのだが!」


 これに私とユイミア、シメオン様は互いに顔を見合わせた。

 まあ、私が彼には話さないようにと二人にお願いしていたからね(計画の一部)。さすがにもう教えてあげてもいいかと二人に頷くと、ユイミアの方が進み出る。


「陛下、これまで私が魔獣を一掃できていたのは、実は私単独の力ではないのです」

「いったいどういうことだ?」

「戦闘前にリンジーから神の眼の力を授けてもらっていました。この子が持つ神の眼とはすなわち、魔力の爆発的強化です」

「そ、それほどの強化能力なのか?」

「はい、おそらく現存する強化魔法の中で最高位にあるものです。でなければ、上位の魔獣をまとめて仕留めるなど不可能ですから。私本来の魔力はシメオン様と同じくらいです。それでも年齢差を考えれば私もある程度は天才なのでしょうけど」


 ……ユイミアはこういうことをさらりと言う奴だ。

 話を聞いたメルヴィン様がこちらに視線を向けてきた。応じるように私も一歩前へ。


「隠していてすみませんでした。ユイミアが出撃していた時は私もこっそり同行して強化魔法をかけていたんです。ただぐうたらに過ごしていただけじゃないんですよ」

「……そうだったのか。そういえば、さっき城で大惨事になると言っていたのはどういう意味だったんだ? リンジー様の魔法は人の魔力を強化するものだろ?」

「あ、私の魔法はちょっと特殊でしてね。……ちょうどいいみたいだから、今からお見せしましょう」


 と私は帝都とは反対の方角に視線をやる。すでにユイミアとシメオン様もそちらを向いていた。彼らは私も感知したのに気付いて向き直る。


「私達でも何とかなる相手だけど、ちょっと骨が折れるわね」

「ガルファドスじゃよ。まったくもって厄介な魔獣が入りこんだものじゃ」


 シメオン様が言った通り、草原の先に上位の魔獣がいた。二つの頭を持った虎で、通常の獣の虎より倍ほど大きく、両方の口から火炎を吐くガルファドスという魔獣だ。

 あれはたった一頭で村を灰にしてしまうので放置はできない。今ここで発見できたのは幸運だと思う。


「私がやるよ。しばらく右眼しか使っていなかったからね、左眼もたまには発動しないと。食っちゃ寝してると運動不足になるし。もうぐうたらとは言わせない!」


 そう決意を固めてメルヴィン様の方に体の向きを戻す。


「私の神の眼はですね、右が他者の魔力を強化できて、左は私自身の魔力を強化できるんです」

「そうなのか。だが、リンジー様は他の魔法は使えないだろ」

「ご心配なく、左眼は私限定なだけに上がり幅もさらに大きいので」


 言葉の最後に、「他の魔法なんて必要ないくらいにね」と付け足して神の左眼を発動させた。

 この瞬間、強度が跳ね上がった私の魔力に呼応して周囲の空気が軋むような音を響かせる。メルヴィン様や護衛の騎士達が驚いている間に、私はもう草原を駆けていた。


 すぐに巨大な双頭の虎ガルファドスが目の前に。あちらは猛スピードで接近する私に一瞬怯むも、即座に二つの口から炎を発射。

 高熱の攻撃に周辺の草木は燃え、大地は焦土と化したが、私は全くの無傷だった。トンッと地面を蹴って空中へと跳び、ガルファドスの背中に着地する。


「ていっ!」


 というかけ声と共に虎の魔獣の背中をはたいた。


 ドッゴン!


 ガルファドスの巨体は地面にめりこみ、周囲の大地を震動させる。

 その直後、魔獣の体は塵に変わっていた。どうも魔獣とは魔力で構成されているらしく、倒すとこんな風に消えてなくなる。


 再び草原を駆けて元いた丘の上に帰還した私は、まだ驚いたままの顔でいるメルヴィン様の所へ。


「どうでした? あ、遠すぎて見えなかったかな」

「……いや、目に魔力を集中させていたからしっかり見た。あの凶悪なガルファドスが、まるで子猫扱いだった……」


 子猫にあんなひどいことはしないよ。

 次いで、ユイミアとシメオン様の方に視線をやると、二人は苦笑いを返してきた。


「凶悪なのはリンジーだけどね」

「じゃのじゃの、神の左眼を発動した時のリンジーちゃんは地上最強生物だと思うのじゃよ」


 ……この二人はなかなかに失礼だな。

 改めてメルヴィン様の顔に視線を戻した。


「せっかく追放していただいたので、私とユイミアは戦線協会のエージェントになることにしました」

「ま、待ってくれ! 追放処分は取り消す!」

「ふ、手の平を返してきましたね。だが、もう遅い」

「……こんな魔法は他にない。元々実力のある魔法士の力をさらに強化でき、自身は肉弾戦最強になるなんて……。まるで本当に神の魔法だ……。大変な逸材を手放してしまった……」


 心も手放してしまったようにぼんやりする皇帝陛下を見て、私は思わず「ざまぁ」と呟く。それから、しょんぼりしているシメオン様の方に向き直る。


「帝国がピンチの時はエージェントとして助けにきますので、元気を出してください。シメオン様の弟子として恥ずかしくないよう頑張って出世しますから」

「ほんに、残念じゃのう……。じゃが、二人なら大いに出世できるじゃろう。ユイミアちゃんはわし以上の才能を持っておるし、リンジーちゃんは地上最強生物じゃからの」


 この人は本当に私を孫のように思っているのか、疑問に感じる時がある。

 しかし、シメオン様が言ったことは概ね当たっていて、私達二人は新天地で大いに出世することになった。



 ――帝都を旅立った私とユイミアは、早速、世界魔獣戦線協会の支部で登録をした。


 そこそこ大きな帝国の元聖女と元エースなだけあって、私達は任された仕事を容易にこなすことができた。

 短い期間で次々に任務を片付ける私達ペアは組織内でも有名になり、それに伴って階級もどんどん上へ。腕力主義、じゃなくて、実力主義とは本当に素晴らしい。

 ついには、私は総司令官に、ユイミアは副司令官になり、揃ってワンツーフィニッシュを遂げる。


 そして、帝国を旅立ってから五年後、戦線協会のトップに上り詰めた私は思いがけず祖国への帰還を果たすことになった。


 帝国の領土にかつてない規模の魔獣の群れが迫っており、案の定、聖女とエースを欠いた国は滅亡の危機に瀕していた。

 緊急の応援要請を戦線協会は受諾。

 かつてない規模とはいえ、さすがに組織の長が出向くほどでもなかったんだけど、私は直接現地に赴くことにした。何しろ、ぜひ会いたい人がいたので。


 私の乗った馬車が城門前に到着すると、皇帝陛下が自ら出迎えに姿を現した。下車した私は彼に向けて微笑みを浮かべる。


「私達が来たからにはもう大丈夫ですよ、メルヴィン殿」

「よ、よろしくお願いします、リンジー総司令官殿……」

「過去に私を追放した国であってもきちんと救いますので、ご安心ください」

「……くっ、ありがとう、ございます。かつての無礼をお許しください……」

「はっはっは、どんなひどい国でも私は見捨てたりしません。元聖女ゆえに!」


 こんな風に少し気持ちのいい凱旋帰国もできたので、頑張って出世してよかったと思う。


 しっかり祖国を救った後も、協会はあちこちの国からの応援要請を受けることになった。

 この頃、各地で魔獣が大量発生しており、私も総司令官として対応に追われる日々を過ごす。

 やがて魔獣達は巨大な群れをなすように。


 人間と魔獣との間で大戦が勃発した。

 大戦は十年以上にも及び、開始時二十代後半だった私とユイミアはこれにかかりきりになって完全に婚期を逃す。人類を救うため、二人で世界を飛び回ることになった。

 どうにか戦争には勝利したものの、その後も残った魔獣の討伐に協会の総司令官として忙しい毎日を送る。


 瞬く間に時間は過ぎていき、私もユイミアもやがて協会を退官した。


 気付けば人生のほとんどを魔獣との戦いにほとんど費やしていた。にもかかわらず、肝心の魔獣の正体については一切分からず。通常の生物とは全く異なる生態を持ち、突然一つの意思に統合されるように群れをなす。

 自分の結婚は諦めがつくものの、それを解明できなかったのが唯一とも言える心残りだった。


 私とユイミアはさらに年を重ね、共に終わりの時が近付いていた。

 互いに直感的に感じ取る。きっと、会うのはこれが最後になるだろうと。


 その日のユイミアは、若い頃に戻ったようにやけに雄弁だった。


「私は自分の人生を後悔していないわ。結婚はできなかったけど、それなりに恋愛は楽しめたし、何よりリンジーと一緒に世界を救えた」

「はは、私達はもう腐れ縁だね。この歳まで一緒なんだから」

「私はこの縁が次の人生でも続くことを願うわ」

「どうしたの、急に。らしくないでしょ?」

「最後だから、いいのよ」


 ユイミアは私の目をまっすぐに見つめてきていた。


「私はまたあなたと共に生きたい。時間も場所も、どれだけ離れていようと必ず会いにいくわ」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


画像の下になろう版へのリンクがあります。よろしければお読みください。


521aahel72hyb6tlhbufjth6ay2z_dle_dw_jm_ciau.jpg




なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~



― 新着の感想 ―
ユイミアが追い出す側かと思ったら普通に友人でしたか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ