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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

わらべうた

作者: A-10

ひとつ、



はやりのわらべうた…


うたをうたい、わらべはあそぶ…。



代表的なのは、《とおりゃんせ》や《かごめかごめ》…等。


これらの童歌には《力》がある。


言葉と調子に呪い(まじな)が込められている。


素養のない者でも行える上に、作者の想い・願い・当時の世相等も知れる。


人々は深い理由も知らずに唄を歌い、遊ぶ。


童歌は、遥か昔から存在する。


今日にまで亙りどれ程の人々が歌い、遊んだ事だろうか。





秘められた力、謎めいた力が…童歌によって今…解き放たれようとしていた。


それは個人にではなく、全体へと向けられていた。


誰も気づく事なく、事態は進行してゆく。


ある者の願いを叶える為に…。





異常は直ぐに現れた。驚いた事に、全ての人間に霊がみえるというものだった。


最初は…自分だけか?


戸惑うも、他の者達にもみえていると知る。


この現象は、人々の生活に早くも支障を来す。


この状況にあって、平然としている者もいる。


元々、霊がみえる人間・信仰心の強い人間等だ。


信仰心が強くとも、カルト的宗教は力を成さない。


信仰心が有効と知った人々は熱心に宗教にのめり込む。


詐欺も増えた。





ふたつ、



しらずにわらべはうたう…


ゆえもしらずに、こえだしあそぶ…。





日本全土を覆う異常事態。


心霊現象は尚も続いていた。


しかし、他国へ協力を求めるには難儀な内容だ。


国は手探りで事態の掌握、沈静を図る。


そこには…多くの問題が付き纏う。


国でさえもインチキ霊媒師等の嘘に騙される有り様だった。


様々な有識者が結集し、原因を探る。


警視庁には、新たに心霊課が創設された。


敏感になり過ぎた国民の為、事態が収束しても存続される事が決定した。


紛糾する話し合いの末に、


『童歌や占い等が原因のようだ』、と目星がつけられ、これらの遊びを全面的に禁止にした。


幼い子供達は中々ルールを守らない。


親や大人達は人格が豹変し、鬼の形相で注意する。


怯えた子供達は、一人また一人と歌わなくなった。


とうとう、鳴り止む呪い(まじな)の言葉。



………これらが、全て嘘だとは知らず、更なる異常事態を…引き起こしてしまう…。





みっつ、



まざせてひとつになった…


まざせてまざせて、ひとつになった…。




凶暴・凶悪な霊や妖怪が、人々に襲いかかってきた。


霊等にも種類があり、全ての霊が危害を加える訳では無いが精神的なもので危害を加えられたと、被害妄想に陥る者もいた。


霊等のカテゴリに分類されるものは…全てが恐ろしく危険なものだと錯覚されてしまう事が多いが全てがそうでは無いのだ。


しかし、大方の人間は身を守る為に無意識の内に霊イコール危険と認識している。





占い等には危険なものがあり(こっくりさんやキューピッドさん等)やらない方がいいが、やったとしても例外はあるものの大事は起こらない。


これらの事を禁止にしても、今回の事態の収拾には繋がらない。


しかし…童歌は別だ。


童歌は歌い続ける事で結界をはる事が出来る。


陰陽師がいなくなっても人々を護れるようにと…広まった。


一連の事件の原因は、確かに童歌の中にあった。


急に流行り出した…その唄は、人の潜在能力を開花させる唄だった。


それによって元々いた霊が…みえるようになっただけの事。


日常で起こる事件や事故には霊によって引き起こされるものもあるのだ。





童歌は……


霊は……


人々を守っていた。



霊は……


人に用心する事や、信仰心、そして身を守る術を教えた。


それは、妖怪等にも有効だ。





よっつ、



ぶくぶくはじけてきえる…


あわしてあわして、はじけてきえる…。





襲い掛かって来る妖怪等を何とかしなければならない。


しかし、平和呆けている日本人にいざ戦えと言っても、恐怖が先立ち、重い腰は上がらず…闘争心などの攻撃的感情も湧かない。


特別な組織に頼るしかなかった。





理由が分からぬまま、


子供達は


童歌をやめた…。





元凶は、民俗学を学んでいた大学生だった。


面白半分でソーシャルネットワークを活用し、あの童歌を広めた。


まさか、ここまで広まるとは思わなかった。


広まれば広まるほど、後悔の念がわく。





民俗学を学んで、人外なる者の正体を知った。


童歌の意味も知った。





そんなこと、起こる訳が無い。


しかし、後悔や恐怖の裏に…期待している自分もいる。





妖怪等が好きで、民俗学を学べる大学を選んだ。


幼い頃から《妖怪》を信じていた。


友達からは馬鹿にされていた。





情報が溢れかえる世の中。


インターネットで調べれば直ぐに何でも分かる。


調べれば調べるほど、夢は崩れ去る。


……妖怪など…いなかった……。


全部、嘘だったんだ。





恥ずかしくて、悔しくなった。





だから…


何かが起こる訳がない、と


知る自分と…


何かが起きて欲しい、と


願う自分がいる…。





いつつ、



やっとこやってきた…


まわってまわって、おおきくなった…。





大学生の元に、痩せ型体型の青年が訪れた。


気が遠くなる程の年月を……


待ち続けていたと、彼は語った。


そして、


お礼に力を授けよう、と…


大学生に自分の力を、送る。


当の大学生は、


何だ?


と、キョトンとしている。


用心しながら、窺う。


近頃…変な奴多いからな……。


まぁ…俺も変人だけど。


大学生の元へ現れた男は何者なのか……。





彼は、普通の子供だった。


普通、といっても……見た目の話だ。


この子供は、ある事をきっかけに邪神となった。


そう…大学生の元に現れた男は、邪神なのだ。





霊のみえる子供だった。


いつからだろう…


数えで4つ位の時には、既に見えていたと思う。


最初は穏やかだった周りの人々は、次第に気味悪がっていく。


子供はいつも一人で遊んだ。


同じ年頃の子は近所にいたけれど、一緒に遊んではくれなかった。


それ所か、石を投げつけられるようになった。


その石が目に当たり、片目を失明した。


家族は逃げるように子供を連れ…人里離れた場所で暮らすようになる。


家族は優しかった。



いつしか子供は化け物だと言われるようになった。



通りかかった旅人に挨拶をすれば、妖怪だと言われ、その噂は瞬く間に広まり、家族は更に追い詰められた。





天変地異が頻繁に起こるようになり、子供は……人柱にされる…。



家族が進んで差し出した。


どこかで人柱の噂を耳にしたのだろう。


子供には弟が出来たばかりだった。


家族の目は、自分を見ていない。


優しい両親は、もういないのだ。





目の前にいる。





手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れられない。





両親は無表情で目を合わせることなく、後ずさる。



目の前が霞み、鼻の頭がツンとする。





熱いものが目から溢れてくる。





子供は思う。





みんながみえていたら、こんな思いしないですんだのかな?





つらくて…


怖くて……


悲しくて……


苦しくて………


悔しくて………、


泣いた。



堰き止められた川に、丸太に括りつけられた白装束の子供がしっかりと固定される。



合図と同時に堰を切り、勢いよく流れ込んだ濁流が涙で顔を濡らした子供を…のみ込んで行った…。





彼の強い力が、今まで犠牲になった人柱の魂と、後に人柱となった人々の魂を掛け合わせ集まり、


そして……


邪神となった。





その後……、


最後に人柱になった若者に邪神が入り…今の姿になる。



邪神を封印していた童歌が鳴りやみ解放されたが、邪神の力はとても弱っていた。


この状態では何も出来ない。


常に存在していた妖怪や霊は人々には見えていない状態だったが、大学生が流行らせた童歌によって人々の潜在能力…第七感が開花し、目視できようになる。


(※第六感とは磁力を感じる感覚だと近年発表された為、第七感と表記する。)


しかしそれは、邪神や妖怪・霊の力も向上させた。


そして日本中を包む負の気も、邪な者たちの力となってしまった。



大学生が流行らせた童歌が、なぜ人外をも強くしたのか。



それは……それらの存在は……人と同じだという事を示していた。



人外(にんがい)……人としての正しい道にはずれること。ひとでなし。


人外(じんがい)……俗世間の外。



彼らは、人によって外へと追いやられた存在だった。





むっつ……ややこは、かくれんぼ






きえてはおらぬ、きえてはおらぬやなんのその~。


みちをたがえばひとでなし…


ひとをたがえどおにでなし…


ひとはひとよのひとらしか~?


ややこはおにか、ややこはひとか、


まざしてまざしてぶくぶくきえる…


かくれてかくれてはじけてきえる…


きえたこみえたこどっち~のこ~…。


どっち~のこ~…こっち~のこぉ!




邪神から力を与えられた大学生は、変わった。


彼は、ずっと望んでいた…妖怪になったのだ。


妖怪になった大学生は、自我を保ったまま…妖怪としての生活を送る事になる…。


……後悔しても、もう遅い……。





邪神は、名前に邪という恐ろしい字が入っているわりには明るくさっぱりとした性格だった。


大学生の願いを簡単に叶え、代償は求めない。


しかしそれがかえって大学生を苦しめた。



童歌による唄の結界が唄を紡がなく無った事で壊れ、自身を縛っていたものが…取り払われた。


邪神は強大な力を取り戻し…日本全土に負の気を撒き散らす。


…人々は、言い様のない恐怖に慄いた。



その恐怖が…更に負の気を放出する。



状況は悪化するばかり…。





強悪な力に対抗する為に活躍したのは、《イタコ》だった。


神格化した英雄たちの霊を降魔させ、人外たちと戦う。


アベノセイメイ、ライコウオウと四天王、戦国武将など…。


戦いに慣れている彼らは強かったが中には然程…大した事のない有名武将もいた。


そして、降魔させた後の方が大変だった。


女好きの武将には…毎日のように美女を与えなければ戦ってくれず、美食家の英霊には…旨い飯を用意する。


等々…中々、骨が折れる。


彼らの手によって屠られた妖怪達の断末魔の叫びは、人間の悲鳴と変わらなかった。



そんな中、封印の童歌を創った人物を呼び寄せる事に成功する。


彼女は、恐れていた事が起こった…と、嘆きながらも力を貸してくれた。





童歌で始まり……童歌で終わる。





子供の…


“みんな見えればいいのに”


という想いが、悪い意味合いで叶ってしまい、日本を黒く染めていった。





邪神になった子供は知っていた。


全てのものが見えても、いい事は無い。


見えていない方が、いい事もある。


しかし、彼の寂しい…孤独…負の感情がそれを超えたのである。


ーーーそして邪神となった。





邪神たる彼は、


人々によって……また、殺される。



封印の唄で力が弱まったところを、ライコウオウ達によって倒されてしまった。



邪神を幾度となく襲った苦痛が、再び邪神を貫く。



つらくて…


怖くて……


悲しくて……


苦しくて………


悔しくて………、


泣いた。



…どれ程の月日が流れれば、楽になれるのだろうか…。



絶望から憎しみが募る…。





童歌を広めた女性は、悲しみながら思う。


「まことおそろしいは人の子よ…」


彼女は邪神へ、


鎮魂の唄を童歌にのせて歌う。


人間がいる限り続くであろう正義という名の悪をも憂いて…。





「 みんな みえれば いいのに 」




ひとつ、はやりのわらべうた…


    うたをうたい、わらべはあそぶ…。


ふたつ、 しらずにわらべはうたう…


ゆえもしらずに、こえだしあそぶ…。


みっつ、まざせてひとつになった…


まざせてまざせて、ひとつになった…。


よっつ、ぶくぶくはじけてきえる…


あわしてあわして、はじけてきえる…。


いつつ、やっとこやってきた…


    まわってまわって、おおきくなった…。



むっつ……ややこは、かくれんぼ

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