警告
次の日、全校生徒が講堂に呼び出された。
ぞろぞろと入室し、各々の席に腰をかける。
「こんなに人いたんだねぇ。びっくりだよ。」
「まぁ校舎すごく広いからね。他の学年の人に会うことなんて稀だよね。」
「学年が上がる毎に人数が減っていますね。」
「分かっているとは思うけど、魔法っていうのは1歩間違えば自分の命も周りの命も危険に晒す危ないものなの。学年が上がればより高度で危険な魔法を学ぶようになる。だから進級試験は中間試験よりも難易度が高いの。毎年何十人もそこで落ちて中退してるらしいよ。4年生なんかもう目で数えられるくらいしか残ってないみたいだしね。」
周囲を見回しながら喋るアイリスにダイジーも見回しながら返答する。
それに続きフィイが口を開きCJが答える。
「私達はこの4人全員で卒業できたらいいよね!」
「そうですね。そのためにも日々の学習を頑張らなくてはですね。」
アイリスは絶対この4人で卒業したいと強く思い、これから4年間頑張ろうと改めて自分の心に誓った。
全学年の生徒が席に着きしばらくして校長が登壇した。
「皆おはよう。今日は雲1つ無い快晴で気持ちがいいね。少し暑くもあるけどね。今日は皆に1つ警告したいことがある。
昨日、うちの生徒が1名錯乱状態になり他の2名の生徒に襲いかかろうとした。錯乱した生徒は取り押さえられ、今朝目を覚ましたが一切の記憶が無かった。被害に遭った2人にも外傷は無かった。
今回は怪我人無く済んだが次はどうなるか分からない。各々昼夜関係なく単独行動は控えるようにお願いしたい。
もちろん、我々教職員も警戒を怠らないが全てには目を向けられない。
己の身と隣の学友の身の安全には十二分に注意を払ってもらいたい。」
校長の話を聞き、先程までの講堂内の朗らかな雰囲気は嘘のように消え去っていた。
皆瞬きも忘れたかのように集中し真剣に話に耳を傾けている。
話が終わり各々退室し始めたが、アイリスら4人は最後の方に出ようと席を立たず、じっと1点を見つめ他の人達が進むのを待っている。
空気感に耐え兼ねたのか、ダイジーが口を開いた。
「アイリスとCJ、昨日あの後襲われたんだよな。悪い、あそこで別れなければそこまで怖い思いさせずに済んだかもしれないのに…。」
「そんなことない。結局怖い思いをすることに変わりはないんだから。ダイジーとフィイがあんな目に合わなくて良かったよ。」
CJが苦笑しながらダイジーに返答する。
CJが横目でアイリスの様子を伺うと、顔色を悪くし俯いていた。
その様子をフィイも見たのかとっさに話題を変えようと話し始める。
「そういえばもう少しで合宿ですね。この学校の合宿は厳しい試練を与えることで有名ですが、最終日には海で遊び放題というのも有名です。7日間の内の6日間が地獄、ということらしいですね。」
「ちなみに1泊7日というのも有名だね。1日目は移動と次の日の準備等で終わり、2日目からは各班野宿で最終日まで過ごすそうだね。」
CJがフィイの話に補足を加える。
心なしか、アイリスの顔色がより悪くなったような気がした。
ダイジーは現実逃避をしたいのか、講堂の隅を凝視し黙っている。
「だから、今度皆で合宿に必要な物を買いに行こうよ。息抜きついでにさ。」
困った表情を浮かべながらCJが3人に提案し、各々頷く。
そうこうしているうちに生徒はほとんど退出したため、4人も席を立ち教室へ向かった。
アイリスは気持ちを切り替えようと首を横に振り、今は合宿を楽しみに過ごそうと自分に言い聞かせた。