入寮②
街は大勢の人達で賑わっている。
アイリスとCJはまず服屋へ向かった。
「こういうの似合うんじゃない?アイリス可愛いし!」
「私スカート履いたことないんだよね。いつもズボンなんだぁ。畑仕事しやすいし、皆と遊ぶ時も走りやすいから。」
「じゃあこの機会に履いてみようよ!絶対可愛いってっ!」
アイリスはCJに促され試着してみることにした。
初めて履くスカートは本当に自分に似合うのか不安ながらも、恥ずかしながら試着室の扉を開けた。
「おお!思った通り、めっちゃ似合うじゃん!それ買おう!」
満面の笑みのCJは代金を支払い、アイリスは買ってもらったスカートを履き店を後にした。
その後2人は今街で人気のケーキを食べるためにCJのお勧めのケーキ屋へ足を運んだ。
「これが、ケーキ!すごいキラキラしてるね!」
アイリスは出てきたケーキをキラキラした眼差しで眺めている。食べるのが勿体ないといういうような良い笑顔だ。
「さっ、食べよう!ここのケーキはほんっとに美味しいんだからっ!絶対アイリス気に入ると思うよ!」
CJはフォークでケーキを切り分け、1口食べる。その美味しそうに食べる顔にアイリスは期待が膨らむ。
CJに倣い、1口サイズに切り分けたケーキを口へ運ぶ。
次の瞬間、今まで感じたことのない幸せな味が口いっぱいに広がり、アイリスの顔が笑顔で蕩けた。
アイリスの美味しそうに食べる様を見たCJは安心したように微笑んだ。
「あぁ〜美味しかったぁ。ありがとうねCJ。服を買ってもらったのにケーキまでご馳走してもらっちゃって。」
「いいんだよ!これから4年間同じ部屋になる訳だし!その代わり私が困ってたら助けてよね!?」
「分かった!その時はどーんっと頼ってね!」
この日の最後、CJはこの街の危険地帯をアイリスを教えた。
「アイリスと会った場所あったでしょ?ああいう場所がこの街には何ヶ所かあるの。入ったら何をされるか分からない。だから絶対に近寄っちゃだめ。」
「分かった。気をつけるね。でも王都ってもっと華やかな場所だと思ってたよ、なんであんな場所が何ヶ所もあるの?」
「詳しいことは私も分からないけど、この国のやり方に合わない人達が集まったのがあの場所なのかもしれない。結局、周りに合わせて自分を騙せる人間がこの世界を上手く生きられるのかもしれないね。でも、自分を強く持ってないといつか人の嘘に負けてしまう。だから、何事も程々にねってこと!」
「いいね、それ!私、王都の学校に入らせてもらって、頑張らないとって強ばってたけど、程々に頑張るよ!CJもいるしね!」
「そうだよ?いつでも私を頼ってね?」
2人が帰路につき始めた頃、急に雨が降ってきた。寮まで急いで走ってきたが、2人の服はびしょ濡れで水が滴っている。
「あぁ、これじゃあ風邪ひいちゃうからお風呂行こ?ここのお風呂はすっごいんだよ!」
アイリスはCJに着いてお風呂へ向かった。
大きな扉を潜ると100人程は余裕で収まるだろうくらいの広い脱衣所があった。
脱衣所の広さにも驚いたが、それ以上に浴場の豪華さには言葉を失った。
「これが、お風呂……。」
浴場の中央には大きな窪みがあり、その中心の柱からお湯が注がれ湯船に蓄えられている。それを囲むように壁には無数の鏡が設置してある。
「ほら、なにぼーっとしてるの?冷えちゃうからさっさと入ろ?」
呆然と立ち尽くしていたアイリスの肩を叩いてCJはお湯に浸かるよう促した。
「いやぁぁぁ、まだ明るいから誰もいないね!まさか貸切で入れるとは思ってなかったよ!話には聞いていたけど、想像以上に気持ちいいよね!」
CJは思い切り背伸びをし、だらりと全身を脱力させとても気持ちが良さそうだ。
アイリスもそれを真似て脱力した。一瞬で疲れが取れていくような感じがし、眠ってしまいそうだ。
「アイリス寝ちゃだめだよ?すっごい眠くなるけどね。このお湯には疲労回復の魔法がかけられているの。実践の授業で怪我をすることがあるからそのためにね。だから傷もすぐに治るらしいよ?」
「あ〜だからかぁ。どんどん力が抜けてく。」
「あ〜あぁ。寝ちゃうねこれは、そろそろ上がろうか。」
2人は名残惜しくもお風呂から上がり、自室へ戻って明日からの授業の準備をし早くに寝た。