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リバース  作者: √k
32/41

呪いが2人を分かつまで

北の山脈─────ウィルミナル国北部に連なる巨大な山脈で、山頂付近では1年中雪が降っている。

そこを超えると独自の文化を持ち、独自の言語を話す民族の国があるというが、険しすぎるこの山を超えたものは少なく、情報がほとんど無い。


会議終了から3時間後、作戦部隊は宗教団体の拠点の入口に到着した。

日没寸前の日光は木々に遮られ、辺りは足元が見えない程暗くなっていた。数人の魔術師が明かりを灯し全体の足元と敵拠点の扉を照らす。


「第1部隊を先頭に慎重に進みましょう。」


CJの指示に従い、他の部隊も後に続く。

アイリスは後方支援の第3部隊に入り、アイクは前衛の第2部隊に入った。

石造りの重く大きな扉を開けると風が中に流れ込み、その先には真っ暗な長い通路が続いていた。


周囲に注意を払い1歩1歩歩みを進めていく。

何も異変が無いまま数分歩き続けるとそれまでよりも広い通路に出た。

先頭の数人が広い通路に足を踏み入れると突然天井に明かりが灯され、眩い光が視界を覆った。


皆の目が光に慣れるのを待ち、一同はさらに進む。

CJは奥から魔力を感じ、止まるよう後方に合図を出すし前方を注視する。


「前方より魔獣多数接近!前衛第1・第2部隊は迎撃、後衛第3部隊は前衛の支援、第4部隊は周囲の警戒に当たれ!」


CJの号令が響き渡り、各々戦闘態勢を取る。


前衛が接敵し1体ずつ確実に仕留めていく。

前衛を潜り抜け後方に迫り来る数体の魔獣を第3部隊が魔術で捌く。アイリスも精神魔法を使い魔獣の動きを制限しサポートに徹している。


全ての魔獣を倒し切り、5分の小休止を入れ再び歩みを進める。


その後も接敵と小休止を繰り返し、計100体程の魔獣を斬り伏せさらに進むと広い空間に出た。

壁には無数の松明が掛けられており、20メートル程の高さのある天井が薄暗く見える。


入口とは反対側の壁に目を向けると何者かが1人立ち尽くしていた。

一同は空間の中央まで歩みを進め、止まった。


「ようやく来たか、王女様とその他大勢。遅すぎて何度あくびが出たか分からんぞ。」


女は俯いていた頭をのろりと上げCJを睨みつける。

その殺気に驚いたCJは思わず1歩引き下がり固まってしまった。


「CJ大丈夫か?」


「えぇ、大丈夫です……。」


エレンに声をかけられ身体の緊張が少し解れ、深呼吸をしCJは心を落ち着かせる。


「貴方がインクリプスですね。我が国に2度も毒を撒いたのは貴方で合っていますか?」


「ああ、そうだ。即死はせん程に、じわりじわりと苦しむ様に調整したからな。まだ死人は出ていないはずだ。」


「なぜそのようなことをする!目的はなんだ。」


「我らの目的は創世神ウィルミナル様の復活。その為にはあそこの人間が邪魔なのだ。すぐに殺さんのは私怨だ。300年前、七大魔術師が魔神を倒してから創世神様はかの地にて眠りについてしまわれた……。我らが神を眠りに追いやった人間どもに苦しみを与えてやった。ただそれだけのことだ。」


「何を、言っている─────。」


一同は訳も分からずただ立ち尽くしていた。今まで自分達が暮らしていた地面の下に神が眠っているなど聞いたこともなかった。


「ふん……、知らんのか。まぁ良い、どうせ死ぬのだ。さぁ、喚き散らかしできる限り苦しんで逝け!!」


インクリプスは憎き人間どもに向け多数の魔力光線を放った。

一同は散開し、飛び交う光線から身を守る。


攻撃が止むと同時に第1・第2部隊がインクリプスに向かい突撃した。


「うざったいのぉ。」


女は黒い玉を空中に投げ、後方に飛び退いた。

黒い玉からは禍々しい魔力が発生し、それは魔獣へと姿を変えた。


突撃していた者は足を止め防御姿勢を取る。

魔獣達は目の前の獲物に対し襲いかかり一同の進撃を妨害する。


その隙をつきインクリプスは再び光線を放ち距離をとる。

魔獣と光線の攻撃を捌ききれず前衛から数人の負傷者が出た。


「負傷者は入口付近まで後退!それ以外の者は迎撃の手を緩めるな!」


CJとアイクは前衛で攻撃と防御を上手くこなし苦戦しながらも未だ無傷で立っている。

アイリスは後方から魔獣に錯乱魔術を使い援護する。


「さぁ、インクリプス、魔獣は全部倒した。次は貴方という覚悟はできてる?」


「あーあ。こんなに殺しちゃって、いーのかなー。」


「どういう意味……?」


「どうもこうも、魔獣を生み出していた魔神が死んでしまったのになんで現代にも魔獣がいると思っているの?まさか、何も不思議に思うこともなく今まで生きてきたの?だとしたら笑いものね、お腹を壊してしまう程に。」


一同は女の言葉の意味を理解し青ざめた。

この世界でもし魔獣へと変質させられる程の魔力を帯びた生物がいるとしたら、それは、ヒトだからだ。


「オキノドクネ。まぁ、私が作ってる訳じゃないんだけれども。そんなことよりも、さっきから気になってることがあるのよねぇ──────。」


インクリプスは姿を消し一瞬の間にアイリスの背後に移動した。


「──────────!!!!」


アイリスはそれに気づき思い切り飛び退いたが、回避が遅れインクリプスに捕まってしまった。


「アイリス!!!!!!!!!!!!」


CJとアイクが血相を変え駆け寄るが下手に手を出せず、動きを止めて歯を食いしばっている。それでも一瞬の隙でもあれば女の息の根を止めようと殺意を込め注視する。


インクリプスはそんなことなど気にも止めず、アイリスの眼を覗き込み観察する。


「へぇ〜やっぱり、貴方、ルフの里の生き残りね。」


そう言いインクリプスは不敵な笑みを浮かべアイリスを掴む手に魔力を込める。

CJとアイクは何が起きてもいいように武器を構える。


「どうなるか見せてよ、アイリス?月の御子である貴方がどこまで耐えられるか見ものだな。」


「はッッッッ!う、あ、あぁぁ、ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


アイリスは苦しみだし、それを見てインクリプスは笑っている。

耐えかねたアイクはインクリプスに斬りかかりCJは魔弾でその援護をする。

しかしそれをするりと躱し、女は姿を消した。


「何、これ……。アイリスに何が起きてるの……?」


CJはアイリスの状態を診たが、全く知らない魔術がかけられていた。

その時、それを嘲笑うかのようにインクリプスの声が響き渡る。


「おや、王女様はそれを知らなかったか。まぁ無理もない、何百年も前に失われた魔法だからな。でも聞いたことくらいはあるんじゃない?」


「失われた魔法……。昔読んだ覚えがある。確か、今はもう使える者は存在しないと言われる生命魔法に続く第七の魔法、運命魔法。」


「せーかーい!呪術、なんて呼ばれ方もしてたけどね。これは対象の運命、在り方に干渉し、捻じ曲げ改変する魔法。私は今、アイリスに変転魔術を施した。今はまだ抗っていられるみたいだ、け、ど─────さぁ、どうなるかなぁ〜?」


そう言い残しインクリプスの気配は完全に消え去った。


「とりあえずここから出ましょう。安全確保が最優先です。」


アイリスはアイクが背負い、CJが先頭になり一同は建物から脱出した。

その後アイリスと負傷者を囲むように警戒態勢を整え、負傷者の応急処置を始めた。

アイリスの容態は治癒魔術ではどうにもできないらしく、CJ達では手の施しようがなかった。


満月が浮かぶ暑い日の山中に、生暖かい風が吹き抜けていった。

読んでくださりありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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