今はまだ知らず、決意の根は下ろされた
2ヶ月後、気温が上がり春花がちらほらと咲き始めた頃、街には人々が往来し以前の活気を取り戻していた。
爆破事件により半壊状態になった校舎の改修工事は終わり、1ヶ月後から通常の授業が開始される。
珍しく昼過ぎに目を覚ましたアイリスは寝ぼけた頭で服を着替えた後、窓を開け暖かな空気を部屋に入れた。
吹き込む春の陽気に誘われ、気分に任せ散歩に出かけた。
呆然と歩き続け1時間程が経ち、気がつくと王都から少し離れた川辺を歩いていた。
ふと我に返り、光が反射する水面を見つめる。水の流れに従い目線を川下の方へ移すと川沿いに桜並木が見えた。
「あぁ……綺麗だ……。」
桜が咲き誇る道を歩いていると、擽ったい感覚と共に何かが頬を伝った。アイリスは指先で優しく拭ったが、それは勢いを増し顔を覆った。
その頃、CJはニコライと共に作戦で使うスーツの開発を進めていた。
「強度が足りない。これじゃあ空中での戦闘に耐えられない。」
「だがこれ以上外装を増やすと戦闘時の身動きに支障が出ます。より強固で加工のしやすい素材を探すか作るか、あるいは別の方法を考えるか……。」
「スーツに術式を刻んである程度の強度を上げることはできる。でも調節を損なうと装甲が魔力に耐えられずに砕けてしまう。」
「魔法の心得がないのでそっちのことはよく分かりませんが、術式の付与はとても難しいらしいですね。」
「まぁね。風を同じ場所に留めておくようなものだから…………。」
2人が頭を抱え思案していると研究室の扉が開く音が聞こえ、そちらに目線を移すとアイリスが入ってきていた。その瞳には今までになかった力強さが宿っていた。
「そっか、やっと泣けたんだ。ニコライごめん、ちょっと待ってて。」
CJはアイリスに駆け寄り、その後2人は研究室を出て場所を変えた。
「CJごめん、私、やっぱり手伝いたい。何を、どこまでできるか分かんないけど、でも、やりたい。ずっとあそこにいる訳にはいかないから。」
「うん、分かった。それじゃあ後で説明するからちょっと待ってて。」
そう言いCJは研究室に戻っていった。
数十分後、2人はCJの部屋へ向かった。
CJの部屋は無駄な物がなく綺麗に片付けられていて、王女様の部屋とはかくあるべしといった内装だ。
アイリスは座るよう促され、部屋の中央にテーブルと一緒に置かれてあるソファに腰を下ろした。
「それじゃあ今度の作戦の概要を説明するね。
最終目標はアーデリス国の女王、ネリア・アーデリスの確保。
ネリア女王は生得属性変転現象という未解明の現象を引き起こしている。リバースと呼ばれることもあるんだけど、その名の通り生まれ持った属性が突如として変質するというものなの。それと同時に性格も真逆になるというか─────秘めていた自分、なりたい自分みたいなものになるの。
そしてネリア女王は異能持ちだ。」
「異能……?」
「稀に人の身に宿る魔法を超えた力。ネリア女王の異能は結界と思われる。アーデリス城を囲う結界は強力で破壊は難しい。でも結界は筒状になってて、侵入するなら真下か真上。私達は上空からの落下作戦を考えてる。」
「分かった……。それじゃあ、私にできることってある?」
「うん。前から思ってたけど、アイリスって魔術の才能あるよね。だから武器開発に協力してほしい。」
「え!?う、嘘だ〜。私が実践下手なの知ってるでしょ?」
「たぶん、魔術が属性に合ってないんだよ。基本性能は私なんかよりだいぶ上だと思うよ。」
「ん〜〜〜それが本当かは分かんないけど、協力させてもらうよ!」
その後アイリスは開発に加わり強化外骨格への適性が見出され、作戦当日に先陣を切ることとなった。
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