城攻め
風の弱いとある夜、上空には強い風が吹いていた。
星空に浮かぶ黒い船からは全身を黒く武装した女が顔を覗かせている。
「これより、城塞囲繞結界内空中挺進を開始する。」
バイザーから流れる司令官の声。
それを合図に女は飛び降り、眼下に聳える城へ向かい降下していく。
冷たい突風が全身を襲う。その冷気はスーツ越しの肌に強く刺さる。
女はそれをものともせず目標に向かい落ちていく。
「───────────!」
夜の闇に沈む城からその闇に溶け込むような黒い魔獣が大きな翼を羽ばたかせ、急上昇してくる。
それを目視した女は、両腕に装備した銃を構え引き金を引く。
放たれた無数の弾丸は無数の魔獣を見事に貫く。
次から次へと湧き出てくる魔獣を撃ち落としながら女は進撃を続ける。
目標の敵が多く、重い銃身を力任せに振り回し乱射しているため数体を撃ち損じた。
銃弾を避け進んだ魔獣は女に向かい速度を上げ接近する。それに気づき、急ぎ女は銃口をそちらに向けるが間に合わず、右腕に装着した武器が噛みちぎられてしまった。
「くっっ………………!!」
攻撃を受け崩れた体勢を身を捩り整える。
その間にも残った左の武装で攻撃を続ける。だがさすがに片方だけでは倒しきれず、弾幕をすり抜ける魔獣が襲い来る。
次の瞬間、カチッという不穏な音を手元で感じた。
弾切れだ。
左腕の装備を外し、敵に投げつける。当然、それだけでは足止めにもならない。
しかし無闇に投げた訳ではない。女は弾丸を撃ち出すために銃身に刻印されていた爆発術式を暴発させた。通常はそのようなことが起こらぬようにセーフティが施されている。それを人為的に引き起こした術式は周りを巻き込む大爆発を起こした。
それでもまだ数十体の魔獣が残っている。
機械での攻撃手段が無くなり、予定通り魔術での攻撃に移る。と言っても、女にできるのは何の変哲もない魔弾を撃ち出すことだけだ。
それでも1体1体を狙った射撃には問題がなく、確実に射抜いていく。
地面まで数百メートルというところまでたどり着いたとき、城の最頂部に高魔力の反応を感知した。
「やばっ……!!」
背部に装備していた盾を前方に構えたと同時にその高魔力の結晶が女に向かい放たれた。
盾に刻まれた防御術式が展開され、迫り来る強大な力を受け止める。
盾を支える両腕に力を入れ、歯を食いしばり敵の攻撃に耐える。
エネルギーが霧散し、これは好機と女は加速し落下していく。
地面が近づき両脚を地に向ける。機械の靴は反重力の術式を作動させ、減速し着地する。
その後を追い数人の味方が着地する。
城の中庭へ着いた味方の部隊は周辺の安全を確認し城内へ侵入する。
「前線突破ご苦労さま。周辺を警戒しつつ別命あるまで待機。以上。」
「了解。」
女は通信の指示に従いしばらくその場に留まった。
そしてしばらくして地鳴りがし、石の壁を溶かす程の熱量を持った光線が城内から放たれ空へと消えていった。
それから30分程が経ち、待機命令が解除されない女は空を見上げ立ち尽くしていた。
「お疲れ様アイリス、作戦は無事成功。撤退するよ。」
先程まで通信越しに指示を出していた女が歩み寄る。
「CJも指揮お疲れ。───────目標は消失?」
アイリスは武装を解除し、溜め息混じりに問いかける。
1呼吸置き、司令官が曇った表情で答える。
「うん、彼女は元から死んでいたらしいから……。でも重要参考人は捕らえたから、後で話を聞こう。」
「そうだね。とりあえず、寒いから早く戻ってココアでも飲もうか。」
2人の間に長い沈黙が流れる。
真っ暗な地上とは裏腹に上空では星達が輝いていた。
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