人の恋路は蜜の味 sideC
僕の名前はダイジー。ウィルミナル魔法魔術学校1年生カータルの生徒。
僕がこの国、この学校に入学した理由は家族を守るため。
実家はアーデリス国の田舎にあり、貧しくも、父と母と3人で支えあって暮らしていた。
そんな中、父が大病を患い寝込んだ。
毎日毎日とても苦しそうで見ていられなかった。医者に診せる余裕などどこにも無く、ただただ弱っていく父に、僕は何もしてあげられない。
そのため畑仕事などの家のことは母と僕でしていた。
しばらくして、国から召集がかかった。
こんな辺境の地に住む子供になんの用があるのだろうと不思議に思いながらも、僕は遣いの者に連れられ王城へ向かった。
両親を残して行くのはとても心配だったが、気にしないで行ってきなさいと母は言ってくれた。
今思うと、あの時の母はもう二度とたった1人の我が子に会えない覚悟をしていたのだろう。
それからの約6年間、僕は未来の騎士として国を守る者になるため、そして騎士になって両親に楽をさせてあげるため、見習い騎士となり日々鍛錬していた。
そんなある日、突如王の間へと呼ばれ恐る恐る足を運んだ。
そこには初めて見るネリア・アーデリス女王陛下がいらっしゃった。
そして陛下は僕には魔法の才があるとおっしゃり、魔法の訓練を命じた。
その4年後、ネリア様は僕に、世界最強の魔法使いセオドア・フォース・レオンハルトの暗殺を命じた。
耳を疑った。自分にそんなことができるものかと。だが陛下にはお考えがあるらしく、それを聞きそれならばと僕はウィルミナル国に潜入した。その時に、1体の魔獣が封印されている秘石を賜った。放てば自分の思いのままに操れるという優れものだそうだ。
そして今、僕は敵国の女の子と町に遊びに来ている。
なんでも、友のための誕生日プレゼントを一緒に選んでほしいとのことだ。
頭がおかしくなりそうだ。
一緒にいると、これから自分がやろうとしていることの罪深さを痛感する。
「キーホルダーとかいいんじゃない?お揃い。」
つい口から漏れ出た言葉。それに笑顔で相槌を打つ彼女。
あぁ、どんどん大切になっていく。それが、いつか自分の手で消えると分かっていながら…………。
動揺が伝わらぬよう努める。しかし時間が経つにつれ、目の前の友が自分にとってどのような存在かを理解していく。
心を落ち着けようと、この前偶然見つけた夕日が綺麗に見える場所に行くことにした。
しかたがないので彼女も連れていく。
夕日はちょうど見頃だった。
町を真っ赤に染めキラキラと輝いている。
その時、故郷で家族3人で見た夕日を思い出した。その夕日に勝る夕日は、この世のどこを探そうと絶対に見つからないだろう。
殺そう。迷うことなどない。自分にとって最も大切なものが何であるかなど、最初から分かりきっている。
機会が来るまで、僕は僕を演じよう。




