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リバース  作者: √k
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赤雪

2ヶ月の時が過ぎ、ほとんどの者が毒による騒動を忘れた頃。

倒れた者は誰一人として後遺症などもなく過ごしている。その後は特に変わったことも起きず、アイリス達は平和な日常を送っていた。

フィイの身体も何事もなかったかのように回復した。


中間試験まで1週間となり、生徒らは必死になって予習復習をする。

ここで成績を落とす訳にはいかない。ここを無事卒業し、魔術師として大成するために。

だが例年通りであれば、半年後にはこの半数がいなくなっているのであろう。


アイリスも絶対に4人揃って卒業するという目標のためにも、毎日CJら3人と勉学に励んでいる。


「あ、雪だ。なんか寒いと思ったら───。」


ふと窓の外を見てみると初雪がちらちらと舞っている。

アイリスは冬の澄んだ空気が好きだ。あのなんとも言えない、冷たい酸素が鼻を伝い脳を起こす感覚。


「おはようございます、寒いですね。あれ、ダイジーはどうしたんですか。」


「さぁ、サボり?」


厚着をしたフィイの問いに寒さと眠気で頭の回らないCJが答える。

いつも割と早めに教室に来ているダイジーの姿が珍しく今日はない。体調不良などではなければ良いのだが、とアイリスは心中に呟く。


その数分後、通常通り授業が始まった。

今日の1限は歴史だ。脳が起きていない朝から暗記科目とは、眠くて仕方がない。

頑張って気を張り、薄目で教師の話を聞く。


だが眠気というものは凄まじく、徐々にアイリスの意識は薄れていった。

現実と夢の狭間。眠気に任せて身体の力が抜け、覚える落下感。

その時、夢現に見たものは死のイメージだった。


次の瞬間、アイリスの身体は爆発に巻き込まれ吹き飛んだ。

その爆発はアイリスの傍だけでなく、校舎中至る所で起きていた。

校舎は半壊状態で炎に包まれている。辺りは泣き声と叫び声に溢れかえり、どこを見ても爆発で吹き飛んだり瓦礫に押し潰された亡骸が目に付く。


数分してCJが目を覚ます。傷が浅いことを確認し周囲に注意を向ける。するとそこにはアイリスとフィイだったものが瓦礫の下に転がっていた。


「─────────────────っ!!!!」


CJは突然の吐き気に蹲った。

煙を吸い込み叫ぶこともできない。とりあえず建物から出なければと、立ち上がりふらつきながら外を目指す。


その最中も様々なものが目に映る。

吹き飛んだ者、潰れた者、逃げ惑う者、泣き叫ぶ者、絶望した者。

それらを無視しCJは己が命のため脚を動かす。


もう少しで出口という所まで来た時、行く手を阻む者が立っていた。


「やぁ、CJ。まさかあそこにいて生きているなんて驚きだよ。」


その聞き慣れた声は今日の授業をサボっていたダイジーのものだった。

ダイジーは火の勢いが弱い場所に立ち、CJを真っ直ぐに見る。その目には今までの優しい光は無く、ただただ世を呪うような闇が窺える。


「なぜ、という目だね。いいよ、これで最後だろうからね。僕はネリア様に囚われたんだ。家族を人質に取られてね。言うことを聞くしかなかった。言い訳に聞こえるかもしれないけど……。」


ネリア様……。人への影響力が絶大で、ネリアという名を持つ者をCJは1人しか知らない。

ネリア・アーデリス。アーデリス国現女王。

それが本当なら一連の騒動の黒幕はネリア女王となる。


「僕は魔法が苦手でね。最初は見習い騎士として育てられた。でも、ネリア様は僕のある才能に目を付けたんだ。僕は他の魔法がからきしの代わりに精神魔法だけは得意なんだ。」


ダイジーはこちらにも火の手が回ってきていることを気にもせず、淡々と話し続ける。

その目に映る光景を見まいとするかのように。


「得意といってもまだまだ未熟でね、持続力が無いし適用範囲も狭い。町の人を操った時は僕が中継地点となり、ネリア様の魔法を町に拡散していた。他にも常に魔術を使用していなければならなかったからね、そっちの方が僕に与えられた主任務だ。」


常に魔術を行使していた?

CJは近くにいたにも関わらずその事に全く気が付かなかった。


「い……いったい、どんな任務が……あったっていうの…………。」


CJは焼け爛れた喉から無理やり声を絞り出す。

今にも吐き出しそうな血を飲み込む。


「僕は常に、"セオドアにだけ認知されなくなる魔術"を使っていた。だから彼は自分の死の瞬間が見えていても、いつ、誰に殺されるのかまでは見えなかったはずだ。」


CJはひどく混乱した。

今の発言では、さも自分が校長を殺したとでもいうかのような口ぶりだ。

CJの表情から思考を読んだのか、ダイジーな無言の問いに答える。


「あぁ、僕がセオドアを殺した。認知されないということは見えず感ぜずということだ。とても簡単だったよ。僕の仕事は終わった、さよなら。」


そしてダイジーは炎の中へ消えていった。


CJは涙を流す余裕もなく薄れゆく意識を保ち脱出を目指す。


燃え盛る大きな炎の光は降りしきる雪を赤く染める。

その日、教員生徒含め、ウィルミナル魔法魔術学校のおよそ7割の人々が犠牲となった。


こうして、現在最高峰の魔法使いは散った。

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