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リバース  作者: √k
23/41

フィイ

フィイは早足で目的地へと向かう。

王都を出て30分程歩き、森の入口に着いた。

そこは思っていたよりも暗く不気味な場所だった。生い茂り荒れ放題の草木が日光を遮り足元がよく見えない。その上、土や草で足が取られ歩きにくい。


「人に会いに行くだけなのに、どうしてこんなに大変なんだろう……。」


足元に十分注意し進み続ける。

行く手を塞ぐ棘の葉がフィイに襲い来る。それを掻き分ける腕や脚には擦り傷が増えていく。


心が折れかける。

自分が行かなくても誰かに伝えれば───。


「───いや、これは私が行きたい。合宿でも、マラソン大会でも、私は何もできなかった……。だから今回は皆のために頑張りたい!」


脚により力を込め、邁進する。

走り込みの成果がここで活きた。あれがなければ、ここまで踏ん張ることはできなかった。

調べによればあともう少しで着くはずというところまで来たとき、草むらから2体の小型魔獣が顔を出した。


「………………っっ!!」


フィイは思わず半歩後ずさる。

しかしこの悪路では逃げ切ることは不可能だろう。ここで仕留める他ない。


歯を食いしばり2つの障害を見据える。少女は覚悟を決める。なんとしてでもここを通り抜け、皆を助ける。

フィイは腕を構え、指先に魔力を集中させる。


連射される魔弾は容赦なく魔獣を襲う。

しかしそれは難なく避けられ、魔力の塊は地のみを穿つ。

小型の魔獣は動きが素早く捉え難いが、その分、1度でも当たればフィイの魔力でも倒すことは可能だ。

だがそれが非常に難しい。本気で駆け回られたら視界に捉えることも困難だろう。


「─────────。」


フィイは両手を構え魔力を込める。

それは片手の時とは難易度が桁違いだ。単純に脳が処理しなければならない情報量が2倍になるのだ。

疲弊した身体への負担はとてつもないものだ。


しばらく硬直状態が続き、フィイの体力も限界が見えてきた。

身体に力を込めつつ、思考を巡らせ打開策を思案する。


「一か八か…………。」


射出を止め右手に意識を集中させる。

今まで距離を保ち一向に近づいてこなかった魔獣共はこれは好機と方向をフィイに定め、真っ直ぐに突っ込んでくる。


挟み撃ちにされたら賭けは負けであったが、幸いにも2体共同じ方向から迫ってくる。


「もう少し…………!」


フィイと魔獣との距離はおよそ5m。しかしまだフィイは動かない。その距離であれば1呼吸のうちに魔獣の爪は我が身を割くであろうことは分かっている。だが、それでも動かない。

あと1歩。それを待ちフィイはありったけの魔力を右手の先に集める。


「私は友達(わたしのたいせつなもの)を救いたいの!!!」


魔獣は目の前の獲物の息の根を止めようと牙をむき出し、地面を蹴り上げる。

次の瞬間、獣の眼前は光で覆われ、消滅した。


フィイの手の先からは強大な光線が放たれた。

それは四大元素を凝縮し生じた莫大なエネルギーを放出したものだった。

その大砲は魔獣どころか前方の森を一直線に斬り裂いた。


「くっ………………。」


身体への負担が限界を超え、フィイはその場に倒れ込んだ。己の技量を超過した全身全霊の最終手段。使えば身を滅ぼしかねない決死の手段だったのだ。それで無事で済むはずがない。


「まだ……動け、せめて、魔術師様のところまで…………。」


とうにありもしない体力を振り絞り、木に掴まりながら前へ前へと進む。


朦朧とする意識の中、遠くに1軒の小屋を見つけた。

フィイはひたすらそこに向かい邁進する。

しかし、小屋に着く前に気を失ってしまった。


どれくらい眠っていたのか、目を覚ますと暖かい空間にいた。

徐々に意識がはっきりとし始め、そこが小屋の中であると気がついた。


「だいじょうぶ〜?」


声のした方に目線を逸らすと幼い少女が心配そうにこちらを見ていた。

なぜこんな人里離れた場所に子供がいるのか。

無理をしすぎたため頭が回らない。今はただ、毒の魔術師に会わねばならないということだけが思考を支配する。


「手当のお礼もできず申し訳ないのだけれども、私すぐに行かなきゃいけない所があるの。ねぇ、解毒の魔術を使える魔術師様って知ってる?」


「それはわたしよ〜」


それは私よ?

フィイは意識の遠い頭で目の前の状況を把握しようと努めた。

つまりこういうことか。

この家は毒の魔術師の住処で、眼前にいる少女は親と暮らしている一般人なのではなく、フィイの探しているその魔術師ということだろうか。


「わたしに用があるの〜?な〜に〜?」


フィイはここまで来た経緯を話した。

その話を聞いた魔術師はすぐさま解毒薬の調合に取り掛かった。


1時間程で寝込んだ生徒全員分の薬が出来上がり、フィイも飲まされた薬によりだいぶ身体の自由がきくようになった。


「はいこれ〜。それを飲ませれば後遺症もなく完璧に解毒できるよ〜。」


フィイは薬を受け取り深々と礼をした。


「それから、あなたセオドアの生徒でしょ〜?さっきの魔術、素質あると思うの〜。あなた私と同じ知恵属性でしょ〜。毎週休みにはここに来て。あなたに教えたい魔術があるの〜。」


分かったと頷き小屋を出ようと扉の前に立った時、魔術師の名前を聞いていないことに気づいた。


「わたし〜?わたしはゼパ……ちがう、今はマリン。あなたは〜?」


フィイは自分の名前を告げた。

そしてもう一度礼をし、森を後にした。


学校へ戻り、事の経緯を説明しエレンへ解毒薬を渡した。

その後エレンから薬を受け取った医者達が患者にそれを投与し、1晩経つと全員が元の体調に戻った。


マリンの薬である程度回復したとはいえ、未だ本調子には程遠いフィイはその後1週間入院した。

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