体力増強計画
合宿が終わって1週間が経ち疲れが取れてきた頃、フィイがまた妙な噂話を拾ってきた。
今度の噂は東の隣国ローウェルズに赤い甲冑の騎士が数人目撃されたというものだった。
「赤い甲冑っていうとアーデリスの騎士なんじゃないの?1度見たことがある。」
CJが首を傾げ思い出しながら答える。
CJはあの後気を失ったが帰り道の列車で目を覚まし、その後頭痛は起こさなかった。
校舎へ到着し、医務員のメアリの検査を受け何も異常は無いことが確認された。
また突発的に痛みだす可能性はあるがひとまず安心だ。
「なんでアーデリスの騎士がウィルミナルを跨いだローウェルズにいるんだろうな。ローウェルズに何かあるのだろうか。」
ダイジーは俯き、独り言のように呟いた。
それが耳に入ったフィイが分かりませんと言いその噂話は終わった。
「フィイはいつもどこからそんな情報を持ってくるの?」
さほど気にしていなかったが、前から頭の片隅にあった疑問をアイリスはぶつける。
「だから噂話ですよ。そこら辺を歩いていると噂の方が私に寄ってくるんです。わざわざ探し回ってる訳ではありません。」
フィイはアイリスの目を鋭く見つめ、自分は噂などにはさほど興味は無いが聞こえてくるのだ、ということを訴える。
「そんなことより、もっと重要な話があるじゃありませんか!」
自分から振った話だろうと思ったが、3人は何も言わずフィイの話の続きを聞いた。
「合宿が終わり、これから涼しい季節になります。そしたら催されるこの都市のイベントと言えば───。」
「───マラソン大会、か……。」
せっかく忘れていたのにフィイの話を聞き思い出してしまったというようなCJの表情から気の抜けた言葉が押し出された。
気落ちしているところ申し訳ないが、アイリスはマラソン大会の詳細を尋ねた。
「マラソン大会は涼しくなりつつあるこの季節に毎年行われる恒例行事です。しかも騎士学校の皆さんとの合同です。ただでさえ身体能力が低めの魔術師の中でも一段と体力のない私たちが体力おばけの騎士学校の生徒さんと走ると、体力の無さがより一層際立ってしまうのです。」
「はぅわっっ………………!!」
絶賛絶望中のCJの代わりにフィイが詳細を教えてくれたのだが、最後の一言がCJにとどめを刺したようである。
「大丈夫だよ。大会までまだ1ヶ月ちょっとあるし、それまでに体力作り頑張ろう!僕も付き合うからさ。」
「私も一緒に走り込みするよ!一緒に頑張ろう?」
見かねたダイジーが2人を励まし、それにアイリスも乗っかった。
かくして、4人の体力増強計画が始動した。




