脱線
男はある時間ある場所に間に合うように森の中を歩いていた。
3……2……1……。
そして見通し通り湖に水魔が現れた。
あまり人目に付きたくない男は人間達の避難が終わる頃に到着できるよう歩調をとる。
しばらく歩いて湖に着き岸辺に水魔が集まっているのが見えた。これも予定通りだ。
大群の中心にいる人物を殺される前に魔獣共を始末するべく、男は力を使った。
1体残らず身体の崩壊が始まるのを確認した男はすぐさま踵を返した。
帰りの道中、男は急いで湖へ向かうソフィーに出会った。
「ヴァクスト……。向こうの水魔が消えたのはあなたの仕業か。あなたが手を出したってことは何か重要な分岐点だったってこと?」
「久しぶりだなソフィー。俺を見る時に不機嫌なブルドッグのような顔をするのやめてくれって前も言ったよね。エリザベスを思い出してみろよ、マルチーズのような愛くるしい笑顔をしていただろ?」
「相変わらず何を言っているのか意味不明。私は私。早く行ったら?見つかりたくないでしょ。ついでにセオドアに報告しておいてよ。」
これ以上関わらないでと言うようにソフィーはそそくさと湖へ向かった。
ヴァクストもそれ以上は関わろうとせず森を後にした。
その頃、セオドアは自身の書斎で、立て続けに起こる事件の解決策を思案していた。
するとそこへ急にヴァクストが現れた。
セオドアは驚きもせず淡々と挨拶をする。
「お久しぶりです。400年ぶりですね。なんの用ですか?」
「ソフィーに遣いを頼まれてね。まあ、ほとんど見えていたんだろうけど。」
「そうですね、これは決まっていたことですからね。分かっていても変えることができないというのは、とても歯痒いです。あなたには無縁でしょうけど。」
「そうだな。俺が歴史に干渉するのは、将来的にめっちゃ障害となるものがある時だけだよ。それと、お前のところの生徒に1人見えないやつがいるぞ。あれは、1000年前と同じだ。天才はいきすぎると天災だ。助けて良かったのか、その時がこなければ俺にも分からん。」
ヴァクストはやはり長居したくないのか会話を終わらせ帰ろうとする。
セオドアは何かを問いかけようとしたが、何も聞かずに職務に戻る。
「じゃあな、精々頑張ってくれ。おれはウィルミナルに挨拶して帰るよ。」
そう言いヴァクストは姿を消した。
セオドアは珍しくため息をついた。椅子から重い腰を上げ、窓の外を見る。ちょうど合宿に行っていた1年生達が帰ってきたのが見えた。
「頑張ってくれ、か。ボク……俺は、見ることしかできないんですよ、師匠。」
セオドアは赤い空を見上げ、もう一度深いため息をついた。




