合宿④
エレンに呼び出されたアイリスはこっぴどく怒られる覚悟をし、教員が寝泊まりするテントへ向かった。
テントの前には他のクラスの担任教師達もおり、何やら話をしている様子だ。
アイリスが歩いてくることに気付き、エレンはアイリスに近づいた。
陽射しが強く、立っているだけで汗ばむ陽気のため、2人は木陰へ移動した。
「まずは怪我の有無を確認させてくれ。それから何があったのか聞かせてもらう。」
全身を魔術でスキャンされ大きな怪我は無いことが確認された。アイクの治療が良かったのだろう。後で一応、医務員のメアリに診てもらうこととなった。
その後10分程絞られ続けた。
叱られるのは嫌だが、心配からくる怒りということが伝わってきて、アイリスは不思議と不快ではなかった。
最後に一言、残りの期間も気をつけるようにと注意を受け、アイリスは自分の班のテントに戻った。
「あ、おかえりなさい。思ったより早かったですね。エレン先生、呼びに来た時はえらい剣幕だったので長くなると思ってました。」
焼いている魚をしゃがんで眺めているフィイは汗だくになっている。この炎天下に火の傍はとても暑そうだ。
これ以上暑さに耐えられないアイリスは火の元から少し離れた場所で立ち止まり、魚を眺めるフィイを眺めている。
2人が暑さに耐え忍び数分が経ち、魚が焼きあがった。
そして山菜を持ったCJとダイジーも合流し4人は昼食を摂った。
その後、アイリスら4人を含めた生徒達は残り数日を耐え抜き、何の異変もなく最終日を迎えた。
「おはようみんな、6日間お疲れ様。色々あったが、本当に色々あったが、大事無く今日を迎えられた。頑張った者には報酬が必要だ。今日はめいっぱい楽しみなさい。」
エレンの挨拶が終わり、皆各々自由時間に入った。テントや木陰で昼寝をする者、森に入り植物や昆虫を採集する者、自由に動き回った。
アイリス達はというと、ダイジーはテントで読書をし、女子3人は自前の水着を着用し湖の浅瀬ではしゃいでいる。
3人だけではなく、他の沢山の生徒も湖に入り楽しんでいる。
「ちょっと!やめてよ2人とも!」
アイリスとフィイがタッグを組みCJに水をかける。それに負けじとCJも2人の作る波を打ち消す程の波を作る。
生徒らがわいわいがやがやとしている中、数人の生徒が周辺の異変に気が付いた。
湖の中から多数の水魔が浮かび上がってきたのだ。
数はその場にいる人間の総数を超える程もおり、500体はいるだろう。
水魔の大群は陸に上がり、人間らに襲いかかる。
「───っっ、どういうことだっ!」
読んでいた本を雑に地面に置き、目の前の光景を信じきれないという表情でダイジーは声を漏らした。
他の生徒らも口々に同じようなことを口にする。
「皆こっちだ、急いで森へ逃げなさい!あの種の水魔は長く水場を離れられない。森に入り身を隠せ!」
声を荒げたエレンの指示が全体に伝わり、我先にと森へ駆けだした。
アイリスら4人も逃げようとした時、突如CJが倒れ込んだ。
「──────────ぐっっっ………。」
CJは頭が痛いのだろうか頭を抱え、唸り苦しんでいる。
アイリスはCJに駆け寄り身体を支え、無理にでも立ち上がらせようとしている。このままでは水魔に殺されてしまう。
ダイジーとフィイ、そしてその後ろからエレンも駆けつけた。
3体の水魔がアイリスとCJに向かい槍を突き出す。
即座に脇に差した剣を抜き間一髪の所でエレンがそれを弾く。
他の生徒教員らは全員森へ避難が完了し、岸辺に残った5人の獲物を水魔は取り囲む。
魚頭の魔獣は武器を持つ手に力を込め、5人の息の根を止めようと構える。
魔獣は徐々に距離を詰めその瞬間に近づく。
しかし、槍が振り下ろされることはなかった。
水魔らは一斉に歩みを止め、微動だにしなくなった。そしてその身体は突如として、少しづつ崩壊を始めた。
「こんなものかな。支障は無いから大丈夫だね。」
姿の見えぬ男の声は水魔の群れの奥から聞こえる。
その気配は遠ざかっていき、魔獣の群れが消え去って辺りを見回しても人1人いなかった。
その後、合宿は予定より少し早く取り止めとなり、明るいうちに王都へ戻った。




