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リバース  作者: √k
17/41

合宿③

アイリスが目を覚ますと辺りはすでに暗くなっていた。

初めは視界がぼんやりとしていたが徐々に目の前が見えるようになり、1つの灯りを感じた。


耳に入ってくるのは風が葉と葉の間を流れていく音、虫の鳴き声、焚き火の音。

冷たい空気に冷やされた頬を火の熱が温める。


「あ、起きたか。目立つ傷は塞いでおいたけど、具合はどう?」


目を瞬かせ声のした方向に目を向けると、火を跨いだ向こうの木に青年が腰を下ろしていた。


「はい、大丈夫です。手当をしてくださりありがとうございました。」


その後、アイリスは自分が気を失ってからの出来事を青年から聞いた。


青年の名前はアイクと言い、ウィルミナル騎士学校の1年生だそうだ。

騎士学校の1年生も近くの森で合宿をしており、アイクは魔獣討伐中に仲間と逸れ、複数の魔獣から逃げているうちに迷ってしまったらしい。


丸1日彷徨い歩き、ふと上を向くとアイリスが落ちてくるのが見え、アイクはとっさに受け止めた。

その後日が暮れ始め、安全な場所まで移動し野宿をすることにしたのだそうだ。


「俺が見張りをしておくから1晩ゆっくり休んでくれ。明るくなったら歩き通しになるから。」


初めて会ったばかりのアイクを完璧に信用することはできないが、未だ本調子ではないアイリスは言われた通り休むことにした。


数時間後、2人は日が昇りきってから行動を始めた。

アイリスが落ちた崖は200m程の高さがあり、登ることができないため迂回して上まで戻ることにした。

道中魔獣に遭遇した時、1匹の場合はアイリスが精神魔法で混乱させ、その隙にアイクが倒すことにし、複数の場合は隠れるか逃げる手筈となった。


2時間程壁伝いに歩いたが崖の端は未だ見えてこない。

今のところ運良く魔獣に会敵することもなく進めている。


そろそろ一休みしようと立ち止まった時、少し離れた場所に魔獣の気配を感じるとアイクが言った。どうやら徐々に近づいてきているらしく、2人は近くの草陰に身を潜めた。


しばらくして、蜘蛛型の魔獣が2体右から歩いてきた。全長3m程あり、前足の2本の先は鎌のようになっている。血の乾いた痕が見え、鎌で獲物を切りつけ狩りをしているのだろうと見て取れる。


アイリスとアイクは気取られないように息を殺し、2体が通り過ぎるのを静かに見ていた。

2人の前を通り過ぎ暫くして魔獣は足を止めた。それから辺りを見回し振り返った。


「くそっ…バレた!」


この距離では逃げてもすぐに追いつかれてしまうと考えたアイクはすぐさま剣を抜き構える。その後方でアイリスも魔法を使う準備をする。


魔獣は2手に分かれてアイリスとアイクをそれぞれ仕留めようと走り寄ってきた。

アイリスは2体に魔法をかけようとしたが上手くいかず、自分に襲いかかろうとしている魔獣にしか効かなかった。

魔法をかけられた魔獣は混乱し思うように動けずその場でジタバタしている。


「ごめんアイク、そっちにはかけられなかった!」


「大丈夫。1匹だけならなんとかなる!」


もう片方の魔獣は鋭利な鎌をアイク目掛けて振り下ろしてきた。

アイクはそれを剣の腹で受け流し、魔獣の右前足を切り落とした。続き左前足も切り落とし、敵が怯んだ隙に剣を魔獣の頭に突き刺した。


魔獣はその後動かなくなり、死んだのを確認し剣を引き抜いた。

アイクは間髪入れず、アイリスが止めていた魔獣の首を1振りで切り落とした。


「アイリス、怪我は無い?」


「うん、大丈夫。ありがとう。」


2人は小休止し、再び壁沿いに進み始めた。

どこまで歩いても崖の終わりが見えず、各々の合宿地に戻れるのか2人は不安になってきた。


「待って、近くで魔法を使ったのを感じた。」


「そんなことが分かるのか。」


「うん。魔法を使った時の魔力の流れを感じ取ることがあるの。」


もしかしたら人がいるのかもしれないと、2人はアイリスが魔力の流れを感じた方向へ進んでみることにした。

すると、少し離れた場所に大型の猪型魔獣を見つけた。

魔獣はこちらに背を向けていて2人の存在に気づいていないようだ。

2人は気づかれないうちにその場を後にしようと振り返る。


「待って、人がいるっ。」


そう言いアイリスは魔獣の前方を指さした。

アイクがそちらを見てみると、1人の女性が魔獣と向き合い立っていた。

考えるより先に身体が動き、アイクは草むらから飛び出した。


「こっちだ!こっちを向け猪野郎!!」


アイクは魔獣の気を引こうと大声を出したが、魔獣は聞こえていないかのように微塵も動かない。


「大丈夫だよ。この魔獣はもう既に死んでいるから。」


魔獣の向かいに立っている女性が魔獣の陰から覗き込むように顔を出し声をかけてきた。


「本当だよアイク。言われて気づいたけど、あの魔獣生気を全く感じられない。」


恐る恐る歩み寄り、アイクは魔獣の顔を覗き見た。そして確かに死んでいることを確認した。


女性は2人に歩み寄り1人ずつ顔を確認した。


「無事みたいだね2人とも。私はソフィー。各々の学校の担任教師にお願いされて君たちを迎えに来たんだ。ほら、案内するから着いてきて。」


次の瞬間足元が揺れ始め、集合した木の根が地面を割り出てきた。3人はその根に乗り、崖の上まで移動した。


2人が驚きを隠せず言葉が出ないのを気にする様子もなく、ソフィーはまずアイリスを合宿地まで連れていった。


「君たちが合宿しているうちはここら辺をうろちょろしているから、困ったことがあったら声をかけて。」


ソフィーはそう言い残し、次はアイクを合宿地まで送り届けるため引き返した。


「またね、アイリス。」


手を振りソフィーの後を追うアイクにアイリスは手を振り返した。

後ろからアイリスを呼ぶ声が聞こえ、アイリスはその方へ駆け出した。

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