鼎談
街の騒動が落ち着いてからおよそ3時間後、城の議会の間にはウィルミナル国の中枢を担う者たちが集まっていた。
ウィルミナル国王妃レイラ・ウィルミナル、ウィルミナル騎士団総騎士長ヴィクトリア・カリバーン、ウィルミナル魔法魔術学校学校長兼ウィルミナル魔術士団総団長セオドア・フォース・レオンハルトの3名が卓を囲んでいた。
レイラ王妃は一見、1輪の小さな花のように見えるが、その実中には龍を飼っているのではないかと思われる程威厳に満ちた人だ。
ヴィクトリア総騎士長は約5000年も生きる五大精霊の1人、炎の大精霊と呼ばれている人だ。外見は国中を探し回ってもなかなか見つからない程の美女で、その力とカリスマ性でウィルミナル建国以降約300年間騎士団を取り纏めている。
「お2人とも、集まっていただきありがとうございます。各々、今回の騒動について思うことを述べてください。」
そよ風のような王妃の声が二人の発言を促し、まずヴィクトリアが口を開いた。
「此度の件、明らかに敵意を感じる。国内の者か、それとも国外の密偵の仕業か、そのあたりどう考えるセオドア。」
力強い声と目線がセオドアに向けられる。
セオドアは少し間を置き答える。
「僕の魔力検知でもそれは測りかねる。外からの流れのようにも中からの発現にも感じ取れる。未来を覗いても黒幕までは見て取れない。」
セオドアの話を聞き、王妃が顔を顰めた。
「随分と手が込んでいるのですね。当面はセオドア殿の予見に頼るしかなさそうですね。
今年の1年学生の合宿は中止にした方が良さそうですね。」
「だな、この分ではそれが良いだろう。その方向で頼むぞ、セオドア。」
レイラとヴィクトリアの合宿中止の意見にセオドアは微笑み答える。
「いや、中止にはしない。その代わり例年と場所を変える。今年は月の海にしよう。」
「月の海!!??」
2人はセオドアの提案に大声を出し驚いた。
月の海とはウィルミナル南西部にある隣国アーデリスとの国境に跨る大きな湖のことだ。そこは大森林に囲まれた豊かな自然があるが、その分危険な動物も多く強大な魔獣も出る。その上国境付近ということもあり、セオドアの意見には賛同しかねるのだ。
その時、ヴィクトリアが思い出したかのように発言した。
「そうか、あそこならソフィーの嬢ちゃんもいる。下手な場所に行かせるよりかは余程安全か。」
「ソフィー殿、お会いしたことはなく話に聞く限りですが。ええ、彼のお方がいるのなら心配はいらぬと思います。」
話は纏まり今回の議会は終了した。
セオドアが退出しようと席を立った時、ヴィクトリアに声をかけられた。
「そう言えばだ、坊主。あの娘の様子は大丈夫なのか?そろそろ10年になるだろう。」
セオドアは静かに落ち着いた様子でそれに応答する。
「あぁ、問題ない。僕が生きているうちは心配ないよ。でないと顔向けできない。」
セオドアが議会の間を退出し、部屋には静けさが戻った。




