第01話 始まり
「すげぇ、緊張する」
とアグマの口から溢れる。それもそのはず、今から行われる天職審査によって人生を左右されかねないからだ。
とある冒険者は農家という天職だったのにも関わらず、努力だけで実力者になったと聞くが僕にはそんな勇気はない。
「おい、次お前の番だろ?ぼーっとするなよノロマがよ」
と後ろの少年から声がかかる。
後ろにいたのは僕の幼馴染のハルトだ。こんな事を言っているが結構優しいやつなんだよ笑
そして僕は審査玉の前に立つ。
「手をかざしてください。」と神父から言われ手をかざす。
手をかざすと、審査玉が光り輝く。
そして神父から金のペンダントを渡されながらこう告げられる。
「あなたの天職は魔剣士です。」
僕は肩を落とした。後ろからは笑い声や諦めの声も聞こえる。それもそのはず、魔剣士というのは魔法と剣技が組み合わさっており最強の職業であると言われていたが、実際にはかなりの難易度であり、まともに使えた者は1000年以上前の魔剣王と呼ばれた伝説の者くらいである。
つまり農民や商人がほぼ確定なのである。
そして僕の次のハルトの番が回ってきた。ハルトも同様に手をかざす。
「あなたの天職は格闘家です。」
「よっしゃぁ!」
ハルトがガッツポーズをする。
格闘家というのはその名の通り格闘技を使う者なのだが、その職業上、防御力と脚力が大幅に上昇する。それに加えてハルトは格闘家の家系なので本当に天職なのである。
一通り審査が終わった後に神父からペンダントの説明が始まる。
「それに向かってステータスと言うとペンダントから青い光と共に自分のステータスが表示される。ペンダントは他人には開けられず、ステータスも他の人には見ることはできない。ですが、決して無くさないように!以上!」
とりあえず今日のところは帰ろう。僕はトボトボと家へと向かった。
家に着いたアグマは今日のことを家族に話した。
親は僕が昔から夢を知ってのことなのか冒険者の道を閉しなどしなかった。
両親は今は農家であるが昔は母が魔法士、父が剣士だった。
両親からはいつ準備していたのだろうか、お金と魔法剣と呼ばれる魔剣士のみが扱える武器を渡してくれた。
「たまには顔を出しにくるのよ?」と母。
「母さんと父さんはずっとお前の味方だからな。」と父。
家族の愛はいつも感じていたが、この日は特に感じたと思う。
その夜、俺は枕を濡らした。
次の日僕は家族全員に見送られながら家を出た。
行き先はそう大都市マグナ・ファミリア。
家を出て少し歩いたとこで1人の女の子が立っていた。
彼女の名はエリス・クインハート。
クインハート家の長女であり、僕の一個下の幼馴染である。
「私に何を言わずに出ていくの?」
彼女に迷惑はかけたくなかったし、黙ってるつもりだったが無駄だったようだ。
「ごめん、迷惑かけたくなくてさ。今からマグナに向かうつもり」と申し訳なさそうに言った。
「冒険者になるんでしょ?私も来年なるつもりだからパーティに入れてよね!」と笑顔で言ってきた。
エリスも冒険者を目指してることを今初めて知った。驚きもあったがそれ以上に嬉しかった。
「分かったよ、じゃあまた来年な」そう言って僕はまた歩き始めた。
道中はモンスターが出るようなので敢えて町まで歩いていくことにした。
「とりあえずステータスを見てみようかな」
「ステータス」
ペンダントに向かって言葉を発すると青い光と共に目の前に青いスクリーンが表示された。
アグマ・ライオレット
年齢:10歳
職業:魔剣士
Lv.1
HP:30/30
MP:25/25
ATK:20
MAT:30
DEF:10
MDF:20
INT:50
AGI:48
LUK:100
スキル
剣撃Lv.1、付与魔法(火、水、風)Lv.1
固有スキル
ラストリベンジ(他人には表示されない)
なるほど、どれも微妙な数値だ。運は高いみたいだけど他が平凡すぎる。固有スキルは貴重だと言っていたが、どんなスキルか分からないしな。
そんなことを考えていると目の前に狼が現れた。
「狼か、初めにしてはなかなか厄介だな。」
幸い群れではなく1匹だったので戦うことにした。
「付与魔法、火」
体からMPが抜けていくのを感じる。すると自分の剣が赤く燃える。不思議と熱さは感じない。発動者だからだろうか。
「剣撃!」
間合いを詰めて一気に斬り裂く....が間一髪のところで避けられてしまった。やはり考え無しには無理か。
なので次は左手に土を持って狼を睨んでいるとこちらへ飛びかかってきた。瞬時に土を顔の方へ投げ狼の視界を塞ぐ、今度こそいける!
「剣撃ぃ!」
狼のお腹を勢いよく斬り裂いた。切ったところが付与魔法で少し焦げている。体に何かが入ってくる感じがした。経験値だ。
「ステータス」
そう呟くと再び青い画面が出てくる。
アグマ・ライオレット
年齢:10歳
職業:魔剣士
Lv.3
HP:58/58
MP:42/42
ATK:40
MAT:38
DEF:30
MDF:35
INT:52
AGI:60
LUK:100
スキル
剣撃Lv.2、付与魔法(火、水、風)Lv.1
固有スキル
ラストリベンジ(他人には表示されない)
お!レベルが3になってるし、剣撃のレベルが上がってる!狼は少し強かったんだな。付与魔法は変化なしか。とりあえず狼を解体するか。
僕は親から貰ったナイフを取り出した。
父や本から解体の仕方は習っていたので毛皮や肉など大まかに分けていく。
「おっ!魔石だ!」
現物も見るのは初めてかもしれない。美しい半透明の紫の石だ。少し魔力も感じる。これが冒険者の収入源だ。
解体したものを魔法袋に入れる。
魔法袋:5/100
少し小さいが初心冒険者にしては十分な方だ。
そしてまた歩き始める。
1時間後....
やっと町の門のところまでたどり着いた。
魔法袋42/100
道中にだいぶ敵を倒した。狼がほとんどだったが、スライムやゴブリン、モグラみたいなのもいた。
「ペンダントのご提示をお願いします。」と門番。
すかさずペンダントを見せると門番が笑顔で言ってくれた。
「ようこそ!マグナ・ファミリアへ!」
町に入ると別世界のようだった。栄える中華街や住宅街、奥にはお城も建っていた。
とりあえずギルドに行かないと。
少し歩くと(ようこそ、マグナギルドへ!)と看板に書いてある建物を見つけた。
恐る恐る入ってみると中にいた人が目線をこちらに集める。ムッキムキの人もいればローブを着たザ・魔術士!みたいな人もいた。
カウンターに向かうと向こう側から話しかけられた。
「こんにちは!マグナギルド職員のカエデです♪ご利用は初めてでしょうか?」
「あっはい、今日は冒険者登録をしようと思いまして。」相手が美人だからだろうか、少し緊張してしまった。
「ペンダントをこの上に置いてもらえますか?あっ料金は100Gです!」
「分かりました。」僕は親から貰ったらお金から100G出してペンダントと共に置いた。
するとペンダントが光った。
「はい!これで終わりです。ステータスのところに所持金と冒険者ランクが表示されます。お金はペンダントの中に収納することができるようになりますよ!」
それは助かる!早速やってみよう。
「ステータス」
アグマ・ライオレット
年齢:10歳
職業:魔剣士
冒険者ランク:G
所持金:9900G
Lv.6
HP:80/80
MP:64/64
ATK:60
MAT:53
DEF:50
MDF:58
INT:55
AGI:90
LUK:100
スキル
剣撃Lv.3、付与魔法(火、水、風)Lv.2
固有スキル
ラストリベンジ(他人には表示されない)
おぉ、これは便利だ。あっ買取してもらわないと。
「すみません、買取の方は...」
「あっ!説明してませんでしたね、買取もこちらで大丈夫ですよ!下の台の上に置いてもらえれば精算いたします。」
僕は言われるがまま魔法袋から今日の成果を出した。
「えーっと、全部で5600Gですね。」
「ありがとうございます!」
思ったよりも高く売れた気がする。相場が分からん。
「あとですね、クエストに右にある依頼板の中から好きなものを取って発注してください。そのクリア回数によってランクを上げていきます。Dランクからは昇級審査もありますので注意してください。では。」
ふむ、なるほど。とりあえずクエストをこなすしかないのか。
とりあえず依頼板を見てみる。
Sランク:オーロラドラゴンの討伐
Aランク:ブリザードドラゴンの討伐
Aランク:リヴァイアサンの討伐
....
....
Fランク:ハニービーの討伐
Gランク:カスミ草の採取
Gランク:お爺さんの肩たたき
....
※依頼は自身のランクの差が1までのものしか受けられません。
なるほどなぁ、ならとりあえずFランクのハニービーの討伐に行ってみるか。
「このクエストの発注をお願いします。」
「承諾いたしました。討伐数は5体です。ハニービーは複数になるとランクがEクラスに上がりますので群がっている場合はすぐに撤退してください。それでは行ってらっしゃい!」
「よし、じゃあいくぞっ!」僕の冒険はここから始まるんだ。
僕は夢を思い馳せながら勢いよくギルドの扉を開けた。
ちなみにこの世界に勇者という職業はありません。全員が魔王へと立ち向かう勇敢なる者、勇者となります。
ATK:物理攻撃力
MAT:魔法攻撃力
DEF:物理防御力
MDF:魔法防御力
INT:知力
AGI:敏捷力
LUK:運
こんな感じです。
この世界でスキルはどんなものなのかはギルドで分かりますが、他人に表示されない固有スキルに関しては知ることができません。