第09話 魔王
「アグマ、話がある。」
そう言ってきたのはグレイスさんだ。
なんの話かは検討がつかないが、かなり険悪な顔をしている。
「どうしました?」
「ここじゃあれだからとりあえず私の部屋に来い。」
そう言われてグレイスさんの部屋に入れてもらった。
「失礼しまぁす。」
結構緊張する。だって女の人の部屋だぞ!?
「その椅子に腰掛けてくれ。」
言われるがまま僕は椅子に座った。
グレイスさんも対面する椅子に座った。
やはりシャングリラ家、同じ部屋なのに高級感が半端ない。
「アグマも知っているだろうが、今日ジェネラルオークを討伐しに行ったんだ。」
そうだったな、もしかしたらグレイスさんでも倒せないほどの強敵だったのか?
「無論、奴は倒した、というより自爆した。」
流石、倒しているのか、でも自爆した?
「奴から出た魔石をフェイドが調べたところ、生命力がある一定の値を下回った瞬間に魔力が暴発し、そいつの身体を媒体に魔力の大爆発を起こす仕掛けがなされていた。」
なんだそれ、そんなこと出来る奴がいるのか!?
「そんなこと出来る奴がいるのかって思っただろ?いるんだ。」
あれ?心の声漏れてたかな?
「魔王だ。」
魔王?あの伝説のか?復活したのか?
「魔王が復活したと断言していいそうだ。」
やはりか。
「はっきり言わせてもらう。私たちでは奴を倒すことは不可能だ。」
「え?何言ってるんですか!グレイスさん達なら余裕ですよ!」
だってそんなはずない、グレイスさん達はSランクだぞ?
「2000年前、過去の勇者達が魔王を滅ぼして以来魔王は復活せず、情報が圧倒的に足りないんだ。」
「確かに、魔王の跡を継ぐような敵は多く現れてきた。しかし果たして魔王と同じくらい強かったのだろうか。」
「私たちの先祖も言っていたが、強い敵達は皆口をそろえて倒される時は『魔王様が復活すれば』と言っていた。」
そんなにも魔王は化け物なのか。
「Sランク冒険者を全員集めて討伐隊を組むつもりではあるが、正直分からない。」
「グレイスさん、話は分かりました。ですが、僕にそれを話す意味とはなんなのでしょうか。」
「私はお前に希望を持っている。魔剣士という珍しい職業を選ぶ君をだ。」
ん?僕もしかしてdisられた?
「お前は強くなれる。これからいくらでも鍛えてやる。そして何より若い。」
純粋に嬉しい。てかグレイスさんも若いだろ。
「私たちも諦めず討伐に行くが、お前も強くなってほしい、次の世代として、頑張って欲しいんだ。」
なるほど、そういうことだったのか。
「分かりました。まだ駆け出しですが、精一杯頑張ります。」
「あぁ、そうしてくれ。今日は急に呼び出してすまなかったな。今日はもう休んでもらって構わない。」
「分かりました、グレイスさん!応援してますし、僕も頑張りますね!おやすみなさい。」
「ありがとう。おやすみ。」
そして僕は自分の部屋へと戻った。
グレイスさんのこと、復活した魔王のこと、これから強くならねばならいない自身のこと、色んなことが僕の頭を駆け巡った。
僕は今、順調に伸びている。あともう少しでダンジョンにも入れるようになる。とりあえずはそこを目指そう。
グレイスさんののためにも、自分の夢、いや違うな。
自分の目標のためにも僕は強くなる。強くならねばならない。
あの日から数週間後、遂に僕はDランクの昇格まであと昇格試験を残すだけとなった。
「アグマさん、今日は昇格試験の日ですね、こちらの試験場の方で行いますので私についてきてください。」
カエデさんにそう言われ、試験場について行った。
「今回の昇格試験は俺がしてやろう。」
目の前にいたのはなんとオクトさんだった。
「え、オクトさん!?Sランクがなんで...?」
「今回どうしてもと言う事で急遽試験担当が変更になったんです。私自身驚きです。」
楓さんもこれには驚くのも理解できる。
「まぁとりあえずかかってこいやっ!!」
オクトさんが足を地面に踏み込み、斧を構える。
地面が揺れる。
この数週間、フェイドさんやグレイスさんに稽古をつけてもらい、だいぶ技の精度も上がっている。Sランクとはいえ少しは通ずるものがあるはず。
(付与魔法・火、魔纏、縮地!)
間合いを一気に詰める。
「ブレイドアックス」
オクトさんの斧が振り下ろされる。
(縮地、剣撃!)
後ろに瞬時に移動し、剣撃を放つ。
しかし体を逸らし感激を避けつつ僕の体に蹴りを入れられる。
「グハッッ!」体が吹き飛ぶ。
「ライトランスっ!!」
吹き飛びながらも魔法を放つ。
壁にぶち当たる。しかしそれほど痛くはない。
先程の魔法は斬られてしまった。
よし。ここからが修行の成果だ。
フェイドさんの助言もあり、新しい属性魔法を身につけることができた。
「補助魔法:ソニック。」
体が急激に軽くなる。しかしフェイドさんの魔法ほど体が俊敏になるわけではない。
(縮地、ウィンドボール!ライトボール!)
縮地でオクトさんの周りを駆けながら技を放っていく。
そして一気に間合いを詰める。
これはグレイスさん直伝の技だ。彼女いわくこの技は魔力がいるから彼女は聖剣による光属性しか使えないが、僕には全属性の可能性があるらしい。
(付与魔法・水)
「いくぞ、アクアディメンション。」
次元を介するこの技は一度の斬撃に複数の斬撃、さらには追加の威力が加わる。
「グランディス」
オクトさんが地面に斧を叩きつけると彼の周りに土の壁が現れ、周りに衝撃波が起こる。
「クソッッ!」
技が防がれてしまった。
「フハハッッ!技が軽いなぁぁぁ!!」
「スキルなど使わずともこれくらいの威力は必要だぞ!!」
オクトさんが足を踏み込み、斧を地面に振り下ろす。
ドゴッッッという音と共に地面が衝撃波で盛り上がりこっちに向かってくる。
「ウォーターウォール!!」
土に強い水で防ぐ。
防いだ目の前からオクトさんの斧が迫っているのがわかった。
(魔壁ッッッッ!)
オクトさんの斧が僕の魔壁に当たるたびに魔壁が割れていく。まるで豆腐を切るようだった。
「縮地。」
このままでは死ぬと思い距離を取る。
「アックススロウ。」
オクトさんが斧を投げてきた。これはまずい。
体制を変えながら、剣でなんと凌ぐが倒れた。
「ウグッッ」
「ドンッッッッ!」
地響きが聞こえたと思ったら目の前に彼の斧の刃先が首元にあった。
「おつかれさん。」
野太い声でそう言われる。
負けてしまったか。残念だが、良い経験だった。肩の力が抜けて楽になった。
「うん、これでとりあえずDランクは確実にあるな。なんならそれ以上かもしれない。お前の昇格を認めよう!!」
「ありがとうございますっ!!」
こうして僕はDランク冒険者となり、ダンジョンへの侵入許可を得られた。




