7.神様からの贈り物
食事も終え、報告会も終わったところで就寝準備をする。
汲んできた水で体を拭き、土や草木の汁、汗をきれいにする。
そうそう、こんなのも持って来てたよな。
取り出したのは昨晩地球から取り寄せた石鹸だ。本当は手洗い用で、身体用ではないんだけれど、まあ大丈夫だろう。
石鹸はこの世界にもあったらしいが、泡立ちの良さと香りの良さ(レモンの香りだ)汚れの落ち具合に驚かれた。
まあ、これでスッキリ寝れるから良しとしよう。
本当は頭も洗いたいけれど、さすがに暗闇の中で川に行くのは危険だ。明日早起きして行くか。
あ、タオルも渡したんだけど、こんな良い布で体を拭けないと言われ荷車に大事にしまわれた。うん、もうちょっと生活水準が上がったらちゃんと使ってね。
そんなこんなで、転移二日目も終了した。今日は俺が前半の見張りだ。
みんなが寝静まったのを確認して、心のなかで声をかける。
(あの~ディミトリオス様?)
(おう、ケイ、そなたか。どうやら順調なようじゃのう。)
(ええ、おかげさまで元気にやれています。)
(早速地球のものも取り寄せたんじゃな。転移能力を使いこなしておるようで何よりじゃ。これからの発展が楽しみじゃのう)
(そのことなんですが、少しご相談がありまして…………)
俺は眠るたびに転移をすると流石に目まぐるしいこと、その影響で眠る時間があまり確保できないことを話した。
(なるほど、そうじゃったか。気づいてやれなくてすまんのう。)
(いえいえ、特別措置として講じてもらったわけですし、ディミトリオス様は悪くありませんよ。)
(そなたは神であるわしに対しても優しいのう。では、これを授けよう。)
ディミトリオス様の声とともに、頭の上にポトンッと何かが落ちてきた。
焚き火の明かりで確認してみると、細い革製のブレスレットのようだ。
(これからはそのブレスレットを鍵とする。これを腕に身に着けて、まあ腕でも足でもどこでもいいんじゃが、とにかく身に着けて、心のなかで「転移」と唱えて眠ると世界間を転移できるぞい。転移間の経過時間は変わらず二時間じゃ。)
(ありがとうございます。助かりました。)
(よいよい。他に困っとることはないか?)
(そうですね。人手がなくて作業がゆっくりなこと以外は、今の所順調です。)
(おう、それなら、もうしばらくするとちょうどよいやつが現れるはずじゃ。それまでせいぜいあの樹を大事にするんじゃな。)
(へ?新しい人?てか、樹?どういうことでしょうか?)
(おっとここまでじゃ、あとは自分で考え、切り開くのじゃ。ではの。)
それきり、ディミトリオス様の声は聞こえなくなった。
新しい人が来るって、どんな人なんだ?来るのは一人か、はたまたテレサたちのような集団?
樹って御神木のこと?一体何の関係があるんだ?
混乱するばかりだが、やらなければならないこともある。
今夜、眠る時間になったら、地球に転移して、必要なものを調達しよう。
そして、迷ったけど、村の発展のためにアレをしよう。
「んぅ……交代の時間じゃ。長い時間ご苦労さん。あとはゆっくり寝なさい。」
ちょうど交代の時間になり、ロベルトさんが起き出してきた。
いつのまにか明け方近くなっていた。
ロベルトさんには半ば無理やり、俺の見張りの時間を長くしてもらったのだ。
俺は転移してしまえばふかふかのベッドで好きなだけ休めるからね。
より過酷な状況の人にしっかり休んでもらわないと。
「じゃあ、後よろしく。おやすみ。」
「おう、おやすみ。」
俺はブレスレットがはめられていることをしっかりと確認し、心のなかで「転移」と唱え、眠りについた。
目を覚ますといつもの白い天井だ。
時刻は午前六時過ぎ。エルネアに転移した時刻から二時間後だ。
今回は少し長く地球にいようと思う。
その上でエルネアに持っていくもの、俺にできる範囲で村の発展に必要なものをしっかり準備するのだ。
それもこれも、ある一点がうまくいくかにかかっているんだけど。
俺は自分のスマホを取り出し、メッセージを打ち込む。
なんだかとても長い間触っていなかった気がする。
三分後、スマホがヴーッと振動し、メッセージが届いた。
さて、夕方まで時間がある。少し休んで、調べ物に取り掛かろう。
エルネアのみんなには悪いけれど、休むのなら断然ベッドのほうが快適だからな。
今度は「転移」と唱えずに、慣れ親しんだ病室のベットで爆睡した。
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