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69.神の怒り

だいぶ回復したので更新再開します。

ワクチン接種だけで発熱、関節痛、倦怠感、寒気とか、コロナは本当に怖いですね……。できればかかりたくないなと改めて思いました。

皆様もお気をつけください。

「我が加護を与えし地で騒ぎを起こすのは何者じゃ。」


 声とともに目の前に小さな水球ができ、渦を巻きながらどんどん大きくなる。

 そしてそれは次第に人の形となり。おそろしく美しい女性の姿になった。


「わっ!アクエラ様!?びっくりした。」

「オンディーヌたちの不穏な声を聞いて駆けつけてみれば……そなた、何を騒いでおる。まさか我が眷属を虐げ……」

「違いますよアクエラ様。ちょっと困った人が来ていまして……。」


 アクエラ様、という名前に反応するラジスラフ。

 一瞬で勝ち誇ったような顔になり、両手を広げてアクエラ様に向き直った。


「おお!貴方様はまさか、水の女神アクエラ様でございますか。お目にかかれて光栄にございます。我が領地は古来より水の女神を信仰しており、その加護を受けるものでございます。どうぞアクエラ様、我が願いを聞き届けそこの愚か者に天罰を!」


 大仰な身振りでなにかまくし立てているけど、え、何、この人の領地にも加護与えてんの?


「アクエラ様、この人の領地にも加護を与えたんですか?」

「そのようなものは知らぬわ。なんじゃこの小うるさい人間は?」


 眉をひそめ、心底嫌そうな顔でラジスラフを見るアクエラ様。

 女性にそんな目で見られたらショックで逃げ出したくなりそうだが、アクエラ様ほどの美女がやると絵にもなるから恐ろしい。


「いや、あの、なんか世界樹の木をよこせとかなんとか。ついでにここを自分の領地にするから俺たちに配下に下れと……逆らったら土地をボロボロにするそうです。」

「なに?この人間、愚かにも世界樹に手を出そうというのか?それに我が加護を与えし地を踏み荒らす気じゃと?許せぬ!!!」


 そう言うと、ラジスラフの周りに水が湧き、とてつもなく大きな蛇の形になった。水の蛇はラジスラフを締め付ける。当然、息ができないラジスラフはもがき苦しんでいる。

 その様子に護衛たちは「ひ、ひぃっ!」と悲鳴を上げ後ずさる。構えていた武器を放り捨てるものもいた。

 もはや全員戦意喪失し、主を置いてでも逃げ出したい、そんな思いが読み取れる。

 それでも踏みとどまったのは褒めるべきところだろうか。


「愚かな人間よ。ここで溺れ死にたくなければ今すぐこの地より去るが良い!そして二度と足を踏み入れることは許さぬ!!!」


 怒りの表情でアクエラ様が告げる。

 が、そうしている間にラジスラフは窒息してしまいそうだ。ゴボゴボと大量の泡を出しながらもがき苦しむ。あの様子だとアクエラ様の声も聞こえたかどうか怪しい。


「あのアクエラ様、あの人死にそうです。一度蛇を緩めないとおそらく声も出ないかと……。」

「……ふん!」


 水の蛇は少しだけ締め付けを緩め、なんとか息ができるようになった。

 ラジスラフは息も絶え絶えで何度も頷く。


「はぁっ、はぁっ、はひ…二度と……来ません……っはぁ、どうか…お許しを……。」

「それとだ、愚かな人間。今後三年間、貴様の領地に雨は降らぬ。渇きに苦しみ反省するが良い。」

「あああぁ……」


 領主はアクエラ様の言葉に崩れ落ちる。

 そりゃそうか、三年も雨が降らないって死活問題だよな。飲み水とかだけじゃなく、作物も育たないってことだろ?

 この領主はどうでもいいけど、何も知らない領民が少し可哀想な気もする。

俺は恐る恐る口を開いた。


「あの……アクエラ様、流石に三年雨が降らないのは可哀想かと思うんです。何も知らない領民もいるわけだし……。」

「なんと、そなたは甘いわ。この男のしたことをもう忘れてしまったのか?」

「いえ、忘れるわけじゃないんですが、流石にやりすぎかなぁと。それに領民の中には、本気でアクエラ様を信仰している人もいると思うんです。」

「……ふむ。確かにこの愚か者のせいで信徒が苦しむのはいただけぬ。……よかろう。特別に一年間にしてやろう。ただし、この土地のことは他言するな。また、妾の信徒をこれ以上搾取することも許さぬ。もし約束を違えば、貴様の一族子々孫々に至るまで、水の災いによって死す事になるぞ。」

「は、はひ…………」


 ラジスラフはなんとか返事をすると、馬に乗ることも忘れ、ずぶ濡れのまま逃げていった。顔なんか涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

 従っていたゴロツキも慌てて退散する。

 領主にあるまじき姿だけど、ま、仕方ないわな。

 とにかくアクエラ様のおかげで助かった。



 敵が去って安心したのか、みんな口々に「村長!ありがとうございます!」「アクエラ様が我らをお守りくださった!」と両手を上げて喜ぶ。


 俺は別に何もしてないような……。


「おい、人間、妾は気分が悪い。酒と供物を用意せよ。あと我が眷属も呼び寄せるのじゃ。」

「あ、はい。わかりました。」


 はいはい、オンディーヌたちに慰めてもらうのね。

 ま、アクエラ様のおかげでなんとかなったし、ここは感謝の意味も込めて特上品を用意しよう。


「では、神殿にてお待ち下さい。特上の酒と料理をご用意いたします。」

「うむ。」


 アクエラ様は満足そうに頷くと、「案内せよ。」とアヤナミ従えて神殿に向かって行った。


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