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68.招かれざる客

いつも読んでくださりありがとうございます。

本日新型コロナワクチンの2回目を接種したのですが、思った以上に副作用がきつく、執筆できる状態にないため、数日間投稿をお休み致します。

毎日のように通ってくださる方には申し訳ありませんが、少々お待ちいただけたらと思います。

 村長の館も神殿も無事完成し、村の大規模な公共事業(と言っていいのか?)も一段落ついたので、派遣ドワーフは里に戻ることになった。


 村の食事と毎週出される酒にすっかりドハマりしたドワーフたちは散々渋っていたが、追加報酬ということでワインとリンゴ酒を渡してなんとかお帰りいただいた。


 送別会で酔っ払ったドワーフの一人が「わしは帰らんぞぉ!ここに骨を埋めるんじゃぁ!遺骨は酒樽の中に頼むぞぉ!」と叫びだしたときは若干頭痛がしたよ。

 美人な女性が集まる中、なんで酔ったおっさんを慰めにゃならんのだ。

 というかドワーフが酔うところなんて見たことがないぞ。どんだけ帰りたくなかったんだよ。

 気持ちはありがたいが、そもそも期間限定でという契約だ。また人手が足りなくなった時にはぜひお願いするよ。

 そう伝えて彼らを送り出したのが四日前の話である。



 大忙しの工期も終え、ようやく村に平穏が訪れた、と思った矢先。

 いきなり客人が現れた。しかも人間の。


 ダリオとイヴァンが見張りをしていた村の入口に、馬に乗った七人の人間がやってきた。

 そのうち六人は護衛だろう。いかにも傭兵、いや盗賊か?といった荒々しい風貌で、手にはそれぞれ武器を携えている。

 その中央には、一際立派な馬に乗った身なりの良いおっさん。おっさんの後ろの護衛は馬車を従えているから、すぐ近くまでは馬車に乗っていたんだろう。


 立ち振る舞いから見て、どう考えてもただの客ではない。『侵入者』と言うのが正しいだろう。


 初めての侵入者に緊張感が走る。

 こういうときのためにと、村人には指示をしてある。

 女性と子どもは俺の館へ。鬼人と男性陣は決められた持ち場へ。

 俺はアヤナミとともに入口の方へ急いだ。


 俺が入り口についた時、護衛風の男が「下がれ!下賤な鬼どもめ!この方を誰だと思っている!!」などと喚き散らしていた。

 しかし鬼に向かって行く勇気は無いのか、その場で武器を構えて動かない。勿論門番の二人も大人しく引き下がるはずがない。

 まさに膠着状態といった感じだ。


「なんの騒ぎだ!?」


 俺が尋ねる。先程まで喚き散らしていた男が今度は俺に食って掛かる。


「はっ!醜悪な魔物に隷属するクズが!ちょうどよい、ここの長をだ……んぐっ!?」


 急に口を閉じ、目を白黒させて狼狽える男。

 なんだ?口が開かなくなったのか?

 見るとアヤナミがなんとも冷たい目で男を睨みつけている。

 あぁ、アヤナミの力で口が聞けなくなったのか。

 男の異変に他の護衛たちも狼狽え始める。

 さすがにこっちが先に手を出したと知られたら分が悪いな。

 アヤナミを手で制し、俺は声を張り上げる。


「俺がここの長だ!来訪時の礼儀も持ち合わせていないとお見受けするが、あんたたちは何者だ?」

「こいつ、言わせておけば……っ!」


 さっきとは別の男が逆上するのを手で制し、身なりのいい男が進み出る。


「まあまあ、山猿が精一杯縄張りを主張しているのだ。合わせてやるのが優しさというものだろう。」


 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男。

 誰が山猿だって?

 その山猿の縄張りに武器を持ち込んで喚いてるのはどっちだよ。


「我が名はコンラッドレ王国子爵、ラジスラフである。聞けば、ここには美味い酒と食い物、そして世界樹があるというでは無いか。特別に我が領地に加えてやろう。我に従い、持てる財を全て差し出すのだ!」



 ………………はぁ?

 いや、コンラッドレ王国とか知らんし。どこだよ。

 というか、急に来て随分な言い草だな。


 驚きと呆れで黙っている俺を見て、恐れているとでも勘違いしたのか、ラジスラフとやらは上機嫌で続ける。


「まあ、そう固まらずともすぐに殺したりはせんよ。大人しく配下に下れば命は助けてやろう。それに、後ろの女もなかなかの上玉だ。言うことを聞けば可愛がってやるぞ?ん?」


 気持ちの悪い笑みでアヤナミを見るラジスラフ。

 何勝手なことを言っているんだ?

 あまりに呆れて声を張る気も起きなくなった。


「……いや、コンラッドレとか言われても知らないし、特別に我が領地に加えると言われても、そういうの求めてないんで。」


 俺は村のみんなと静かに平和に暮らせればそれでいいです。

 領地とか、支配とか、面倒な匂いしかしない。


「貴様……っ!…………ふははっ!さすがは山猿、偉大なる国の名も、世界樹の価値も知らぬとは。」


 予想外の俺の回答に一瞬顔を赤くするも、相変わらず見下した口調で高らかに語るラジスラフ。


「我が国は水の神のお力により、古より大河を支配する神の国だぞ!?世界樹は富と繁栄を司る樹!まさに偉大なる我が国にこそふわしい!いや、我が領地に世界樹を植え、大陸中に覇を唱えてやるわ!」

 「なんか勘違いしてるみたいだけど、あんたにここを渡すつもりは無いし、誰ひとり殺させるつもりもない。わかったら早いところ出て行ってくれないか?多分、そっちが怪我をすることになると思うぞ?」


 こっちは水龍にエルフ、鬼並みの力を持った鬼人。

 対する相手はゴロツキが数人。

 話にもならない。

 様子見だけだったとしても、相手を甘く見すぎだろ。


「貴様!無知な田舎者と思って優しくしておれば……!逆らうなら容赦せんぞ!お前たち全員、この土地共々ズタボロに切り刻んでやるわ!!!」


 ラジスラフは顔を真っ赤にし、唾を飛ばしながら喚く。

 ゴロツキ共に「やれっ!」と司令を出し、護衛たちが武器を構え直す。

 こっちも武器(と言ってもちゃんとした槍を持っているのは門番の二人だけで、あとの者は狩りに使う弓矢やナイフだが)をかまえ、身構える。

 まさに一触即発。




 ―――その時、不意に凛とした声が聞こえた。

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