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66.神殿の完成

ブクマ、評価ありがとうございます!

 ついに神殿が完成した。

 完成披露会として村の全員が神殿に集まった。


 丘の上にそびえる真っ白な大理石の神殿は見るものを圧倒するような荘厳さがある。

 山奥の村にはまったくもって似合わない立派な神殿だ。


「なんて美しい…………。」

「このような美しい建物は見たことがありません!」

「まさに神のいらっしゃる場所という感じがしますね……。」

「外から眺めるだけで心が洗われるようです……!」


 本来森の奥や人里離れた場所に住むエルフや鬼人たちにとっては驚くべきものだったようだ。

 エルフたちも神々を信仰しているとは言っていたが、里で一番大きな木の根元に小さな社を建て、祈りを捧げるといった形だったらしい。


 勿論エルフや鬼人だけではない。


「なんてきれいな建物……!」

「神々を祀る神殿はいくつか知っておるが、ここまで美しいのは他にないぞ!」

「神様のおうち、まっしろでキレイだねー!」

「すっげぇ……!こんなのが村にできるんだ……!」


 みんな口々につぶやく。

 俺も神殿の出来には驚いたよ。

 真っ白な大理石の建物は、入り口にパルテノン神殿のような柱がいくつも立っている。

 まあ、俺が見本としてみせたものがパルテノン神殿とかパンテオンのイラストだったからな。

 神社みたいなのはイメージが違うし、洋風の『神殿』と言われたら、それくらいしか思い浮かばなかった。

 正直世界史の教科書で見たキリスト教の教会などに比べると、シンプルな作りだと思う。

 高い塔がいくつも立っているわけでもないし、サグラダファミリアだっけ?あんな感じで全体に彫刻が彫られているわけでもない。

 それでも部分部分に繊細な彫刻が施され、のっぺりとした印象はまったくない。


 入口を抜け中に入ると広間、神社で言う『本殿』だ。

 広間は円形の空間になっており、天井は吹き抜けだ。おそらく三、四階分くらいはあると思う。

 天井はドーム型になっており、採光のために窓がいくつも作られている。

 ジークベルトのステンドグラスが窓にはめられ、光を通してキラキラと輝いている。

 床は白や黒の色大理石が用いられ、中心から放射状に広がるような絶妙なアート空間になっている。


 正面には巨大な彫刻達。

 アクエラ様のリクエストによる神殿だが、創造神様も世界樹の精霊もいるということで、三体作ることにした。

 創造神様の姿は俺しか見たことがないので、ヴェンデリンに伝えるのに苦労したよ。

「説明が下手じゃ!」と何度怒られたことか…………。しかしこの完成度を見ると怒られてよかったとさえ思える。

 ゆったりとしたローブを羽織り、長い髭と髪。慈愛に満ちた優しげな顔。片手には俺に授けてくれた(という設定の)賢者の書。もう片方はこちらに手を差し伸べるように向けられている。

 そっくりとは行かないまでも、かなり雰囲気は再現できていると思う。


(いつも見守ってくれてありがとうございます。)


 俺は創造神様の像を前にこっそりと心のなかで感謝を述べる。

 みんなは「これが創造神様…………。」と、口々に祈りを捧げている。


 そのとなりにはアクエラ様。これは見事というほかなかった。

 水の中を揺蕩うように絶妙に膨らんだ衣装と長い髪といい、涼やかで吸い込まれてしまうような美しい顔立ちといい、まるで水中のアクエラ様の様子を直に見たかのような再現度だ。

 神秘的、かつ圧倒的な美しさに、みんな、特に女性陣は引き寄せられるようにフラフラと近づいていく。


 ヴェンデリンも「うむ、うむ。我ながらなかなかのもんじゃな。」と満足げだ。

 ヴェンデリン、あんたすげぇよ。わかってたけど。


 反対側にはライアの像もある。本人は「祀り上げる必要はないのですが……。」と困惑気味だったが、俺達がこうやって暮らしていけるのもライアのおかげにほかならない。だからぜひ!という声に押されて了承してもらった。


 ライアの像は世界樹と一緒だ。

 流石にあの大木を再現するのは難しかったので、細身の樹に寄り添うライアの像が建てられた。

 樹に寄り添うように目を閉じ、幹に添えられるしなやかな手。視線を下にたどっていくと衣服の裾が幹や葉と一体化している。

 ライアの優しい表情といい、繊細で儚げな美しさといい、『精霊』という言葉がピッタリの出来だ。

「私、こんなでしょうか……。美化し過ぎでは……?」と恥ずかしそうにしているライア。

 確かに自分の像が作られるってなんか恥ずかしいよな。でもそっくりだ。自信を持って欲しい。


 村のみんなは広間の美しさに声も出ないようで、あちらこちらから感嘆のため息が聞こえる。

 俺も何度「ほぉー……。」とため息を吐いたことか。


 こういう芸術的な建物っていいな、と改めて感じた。


 一般人が入れるのはここまで。

 広間の横には『神々の部屋』という少し狭い部屋がいくつか用意されている。

 ステンドグラスが貼られ、祭壇があるだけのかなり質素な造りだ。

 別に誰の部屋というわけでもなく、この世界の神殿はそういう作りになっているのだとか。

 アクエラ様がいらした時にはここに来ることになるんだろうか。


 そして広間の奥にも広めの部屋がある。

 ぶっちゃけこの部屋はアクエラ様用に作ったものだ。

 俺がアクエラ様と最初にあったときの底しれぬ恐怖感。あれは圧倒的な魔力と威圧によるものだとアヤナミから教えてもらった。

 村人の近くであんな力を放出されては困るので、この部屋の壁はとても厚くしており、アヤナミに結界も張ってもらっている。

 アヤナミの塔ほど強力な結界ではないので俺が入っても平気なのだが、何があるかわからないので当然一般人は立入禁止。

 ここに入っていいのは俺とアヤナミ、そして精霊たちだけだ。

 中はテーブルや椅子が置かれており、食堂?応接室?のようにしてある。『宴の間』と呼ぶことにした。

 アクエラ様がここにいらした時には、村人たちからの供物でも食べてのんびり過ごしてもらおう。


 一通り見学会が終わり、神殿の広間で式典が始まる。

 村長である俺、副村長のロベルトさん、ドワーフ職人チーム代表のジークとヴェンデリン、ノーム代表のトウリョウ。

 それぞれから挨拶があり、最後に全員で三体の像に向かって祈りを捧げる。

 ぶっちゃけ精霊本人であるライアが精霊の像に向かって祈っているのはおかしな光景だ。

 しかしまあ、絵になるから良しとしよう。



 神殿が完成してから、管理人であるアヤナミは滅茶苦茶気合を入れて掃除をしている。

 いつ行ってもホコリ一つ落ちていないし、床もガラスもピカピカだ。

 本人曰く、「アクエラ様が見守ってくださっているようで自然と気合も入ります。」と言っていたが、それはプレッシャーというのでは…………?

 まあ本人が良いなら何も言わないでおこう。俺は空気が読める男だからな。

 オンディーヌたちも頻繁に神殿に通っている。なんだかんだみんなアクエラ様を慕っているんだな。

 あとはヴェンデリンの作った彫刻が素晴らしいというのもある。

 これ、アクエラ様が見たらどんな反応をするんだろうか。ちょっと見てみたい気もする。


 俺も毎日神殿に通っている。主に見回りと、創造神様に挨拶をするためだ。

『天啓』を使えば本人と話ができるので別にわざわざ像に挨拶をする必要もないのだが、まあなんというか、日課みたいなものだ。

 村のみんなもよく通っている様子が見られる。

 祈りを捧げに行ったり、美しいアクエラ様像を見て美意識を高めたりと理由は様々だが。

 利用率も高いし、神殿の前の空き地を広場みたいにして、村人の憩いの空間にするのもいいかもな。


 こうしてまた一つ、村のシンボルが完成した。



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