63.助っ人を依頼することにした
ブクマ、評価、ありがとうございます!
まだの方もぜひ!
今日はドワーフたちがやってきた。
あ、ジークたちではなく、森に住んでいるドワーフたちのことだ。
いつもどおり、酒や食べ物を求めて。
彼らは毎回お金の他に自分たちの作った品を持ってくるのだが、ジークたちが来てからは道具に困ることがなくなったので、ほぼ現金払いである。
「こりゃあ…………!!」
「見事なもんじゃのう。」
ドワーフたちから感嘆の声が漏れる。
ジークを始めとするうちの職人集団が、俺の屋敷を自慢して回ったためだ。
ドヤ顔で案内する職人集団と、悔しそうにしながらも認めざるを得ないといったドワーフ集団。
だが、そのうちの一人が言った。
「確かに見事じゃが、全然出来上がっておらんじゃないか。あっちもこっちも未完成。これで自慢されてもなぁ。」
確かに、彼の言うとおりである。
それに同調し、他のドワーフたちも「そうだそうだ」と言い始める。
うちの職人集団は「ふん!傑作品を作るのにはそれなりの時間がかかるものじゃ!」「お前たちは納期ばかり気にしおって職人としてのこだわりが足りんのじゃい!」と言い返す。
双方ガヤガヤと言い合っていたが、ここで喧嘩されても困るので、「まあまあ」と両者をなだめ、ドワーフたちにはさっさとお帰り願う。
彼らが帰った後、屋敷の会議室で職人集団と話し合う。
「なあ、流石にこの人数じゃ手が足りないんじゃないか?」
「何を言うか!ここまでの出来を見てもわかるじゃろう、儂らとノームたちとで充分じゃ!」
「でも、神殿も造るんだろ?」
「ぐっ!」
そう、彼らが携わるのはこの屋敷だけではない。
アクエラ様リクエストの神殿も造らなきゃいけないし、ノームたちは他の家屋や水道管の工事もある。それに俺たちが使う道具類も。
彼らの腕は十分に認めているが、流石に手が回らないと思う。
というか、働かせすぎてこっちが申し訳なくなる。
「じゃあどうしろと言うのじゃ?」
「ドワーフの職人を追加で何人か募集するとか。」
「ボンクラ共がいくら集まったところで対して変わりゃせん。それに専門も違うじゃろうが。」
「だから、面接官としてみんなにも入ってもらってさ、腕のいいドワーフを引き抜くんだよ。人数によっては期間限定とかになるけど。」
「むむむ……。」
話し合いの結果、渋々ではあるが彼らは了承してくれた。
ただし、人材選びは彼らの意見を十分に聞くというのが条件だ。
早速ドワーフたちに知らせに行こう。今回は俺が直々に行って募集のお知らせをする。
面接はこの村で行い、希望者には来てもらう形になる。
翌日、準備ができたので早速ドワーフの村へ。
案内役としてジーク、護衛兼送迎としてアヤナミの三人で向かう。
前回はジェイクだったけれど、なんてったって今回は水龍だからな。鬼人に続いての水龍だ。威圧効果はバッチリだろう。
アヤナミの背中に乗っていざ出発。
龍の姿のアヤナミはレヴィアタンをひと回り小さくしたような感じでとても美しかった。
初めて龍の姿を見るジークは「おお……!」と感動していたよ。
鬱蒼とした森の上空を飛んで行く。
どこまでも広がる森、遠くには大小様々な山が連なる。人里の気配は無い。
そういえば、この森を上から見るのは初めてだな。
見れば見るほど、ここが深い森なんだなと実感する。
「なんか全然人里の気配とかないんだけど、ドワーフの里ってそんなに遠いのか?」
「あそこに高い山が見えるじゃろ?あれがギア山脈じゃ。わしらの里はそこの麓じゃよ。まあ、歩きで行くとかなりかかるのう。」
「そんなところに里を作ってんだな。」
「馬鹿め。逆じゃよ。こんな森の真ん中に人間が住み着く方が変わっておるんじゃ。」
「あー……確かに。でも俺たちもまさかこんなところだとは思わなくてさ。」
「計画性がないのう。」
「ドワーフに言われたくないよ。」
軽口を叩き合い、雑談をしながら飛ぶこと数十分。
ギア山脈が近付いてきた。
麓には原生林のような深い森が広がり、山の上部は険しい岩肌が露出している。
「神の山」と言われているだけあって、易々と近づいてはいけないような不思議な威厳に満ち溢れている。
ゆくゆくは開拓を〜なんて考えたこともあったけど、なんかバチが当たりそうだし、やめた方が良さそうだな。
そうそう。
向かう道中に、村に来たドワーフたちを見かけた。
小柄な彼らではあるが、真新しい樽をいくつも運ぶ隊列はかなり目立っていた。
一旦降りて、職人募集のお知らせをする。
彼らがドワーフの里に帰り着くまでには時間がかかるだろうし、それから説明してまた村に来て……っていうのも大変だしね。
何度か来ているドワーフの中には、日頃のよしみで〜と擦り寄ってくる者もいたが、そこはコネとか無しに実力で採用させてもらうよ。
面接の日をお知らせして再び飛び立つ。
乗せていってあげたいのは山々だけど、この人数だと残念ながら定員オーバーだ。
アヤナミはさらに速度を上げ、どんどん進んでいった。