6.小屋作り
閲覧、ブクマありがとうございます!
本日も夜にもう1話更新します。
謎の御神木騒動も一息つき、食事を終えた俺達は、当面の計画について話し合った。
まずは村作りの全体計画。
御神木は文字通り村の中心に、その周りを広場として残し、その手前に小屋を建てる。
広場の右手には畑を作り、反対側には木材加工スペースを。
とりあえず当初の計画はこんなところか。
後はもし住人が増えたり、必要なものが増えたときに相談しよう。
俺とロベルトさん、セシルの三人で木材の切り出しにかかる。
といっても、この人数で木造の小屋を建てるとかなりの時間がかかるため、最初は支柱に木を使い、草の葉で屋根を作る簡易小屋だ。縄文時代の竪穴式住居に近い。
とりあえず雨風をしのげる場所を用意してから木造小屋に取り掛かることにした。
支柱となる木材を運んだら、穴を掘る。六人が3:3で寝るとしても二棟必要だから、休む間もなく作業に取り掛かった。
女性陣は屋根部分と、床に敷くための草の葉集め。ついでに野草や木の実などの食材探し。
身体が丈夫になったからか、神様の力で強化されているのか、重労働の割にそこまで疲れはなかった。
ただ、他のみんなは別だ。長年農夫として力仕事をしてきたロベルトさんは別として、女性陣や子どもたちは疲れたようだ。
そういえば、あれを持ってきたんだっけ。
プラスチックの包み紙は見えないように鞄の中で剥ぎ取り、飴玉をみんなに配った。
「この玉は?なんだかいい匂いがするね。」
「なにこれ、宝石!?」
「みて!キラキラ光ってるの!」
飴玉を見たことがない反応のテレサ、セシル、フランカに説明する。
「これは砂糖を煮詰めたもので、甘くて美味しいんだ。疲れも取れるし、みんなで食べよう。」
「なにっ!?甘味だなんて、高級なものを……!」
「あらあら、本当に貰ってもいいのかねぇ。」
同じく興味深そうに覗き込んでいたロベルトさんとマリアさんも、甘味と聞いて驚いたようだ。
この世界は甘味ですら高級品なのか。
こりゃゆくゆくはサトウキビとか栽培して、甘味を普及させねば。
「せっかくだから、みんなで味わおう。俺一人持っていても食べにくいしさ。」
本当に食べて良いのかと迷う大人たちを尻目に、子ども二人が口に放り込む。
「おいしいっ!!!」
「あま~い!!!」
「噛まずに、口の中で舐めるんだ。そうすると長い時間味わえるんだよ。喉に詰まるから、飲み込まないように気をつけてな。」
俺の説明を真剣に聞き、少しでも長く飴玉を楽しもうと注意深く舐める二人。
なんか、いいな。こういう無邪気な反応。今時の地球の子どもじゃ当たり前にあるものだもんね。
「みんなも、ほら。疲れをとって、もうひと頑張りしなきゃ。」
まだ小屋一つすら完成していないんだから。
そう言うと大人たちも恐る恐る口に入れ、その甘さに目を丸く見開いた。
うんうん、いくつになっても甘味は美味しいのだよ。
小屋が二つできた頃には、日が傾き始めていた。
二つ目の小屋は慣れてきた分スピードは上がったけれど、一つ目に大分時間がかかったな。
ロベルトさんは農夫とはいえ竪穴式住居なんて作ったことなかっただろうし、俺だって、こんな経験初めてだ。
昨晩地球で作り方の動画を見といてよかったぜ。
主に作り方や材料の採寸を俺が、実際の切り出しは慣れているロベルトさんが担当し、なんとか出来上がった。
あ、セシルには蔦で支柱同士をくくりつける作業や、屋根に草の葉を乗せてもらうのをやってもらったよ。意外と器用で何でもこなすセシルには驚かされた。
やっぱり子どもって順応早い。
そうそう、トイレも作ったよ。
こっちは水洗式なんて発想はなかったらしく、所謂ボットン便所。
深めの穴を掘って、周りに支柱を立てて荷車に積んでいたホロ布で目隠し。採光と換気のために天井は開けておいた。
雨が降ったときは……うん、しょうがない。
あとは尻を拭く紙の代わりにそのへんに生えていた柔らかい葉を大量に置いておく。
この森の至る所に生えていて、柔らかくて手のひらくらいの大きさがあるから、小屋の屋根や床など、至るところで大活躍だ。
汲み取りとかはどうしよう。それも話していかないとな。
日も沈み始めたので、今日の作業はここまで、広場(と言ってもただの空き地)に集まると、女性陣が夕食を作ってくれていた。
川魚の串焼きと、バーダという植物の根と葉を炒めたもの。
初めて聞く名前だったが、味も見た目もごぼうだった。
この森にたくさん生えていたらしく、エルネアでも山村などでは普通に食べられているらしい。
夕食を食べながら報告会。それぞれの進捗状況を報告し合う。
俺たちの小屋づくりはとりあえず完成。本格的な木造小屋に取り掛かるが、畑などを優先すべきか検討中。
女性陣は草集めの際に、周辺の調査をしてくれたらしい。
ここらへんには、野ネズミやうさぎと言った小動物が多く、大型の獣は見かけなかった。
とはいえ、小動物がいるならばそれを狙う肉食の動物もいるわけで、注意はしたほうがいいだろう。
食材に関しては、バーダや木苺、栗の木などがあったらしい。意外と食材豊富な森のようだ。
ここからは、明日以降の話。今日感じたこと、必要なものなどを話していく。
「やっぱり圧倒的に人手が足りないな。木造小屋に住めるのはしばらく先になりそうだ。」
「食材は手に入ることがわかったし、今日も多めに採ってきたから、私達は明日から畑作りに移るよ。いつまでも採集生活に頼れないしね。」
「そうねえ。と言っても、持っている種はジャガイモとタマネギくらいだけれど。」
名前を聞く限り、どうやら食べられている野菜は地球と変わらないらしい。
よかった、見たこともない食べ物だけだとやっぱりちょっと不安だしな。
「前の村ではどんなものを育てたり食べたりしてたんだ?」
元農夫のロベルトさんと、マリアさんに尋ねる。
二人によると、ジャガイモ、タマネギ以外に、ニンジン、キャベツ、ナスなどがよく食べられていたようだ。
ふむふむ。このへんは地球から種を持っていけるかもしれないな。
「あとさー、魚も生きたままいっぱい獲っておきたいよな。毎回たくさん獲るの大変なんだよ。」
「お水も重たいし、おさかなも重たいよねー。フランカ、頑張ったんだよー。」
子どもチームからの意見。
水くみはこの二人に任せていたし、たしかに人数も増えた分仕事も増えて大変だろう。
生きたまま、か。となると生け簀だな。
水くみの負担を軽くするには、水路とか溜池か。このへんは畑でも必要になるだろう。
地球からいいものがあれば持っていけるといいな。とりあえずメモしておくか。
「ケイ、さっきから何してるの?」
「あ、ちょっと必要なものをメモしてるんだ。忘れないようにさ。」
書いたメモを見せる。文字とかどうするんだと思ったけど、なぜかこっちの文字が書けていた。
「あら!ケイは読み書きができるのねぇ!」
「それにこの真っ白な紙!これほどの上物は見たことがないぞ!!」
「ケイ!あなたひょっとして貴族かなんかのお坊ちゃんなんじゃないの?」
大人たちが口々に言う。
あ、そうか。こんな白くて薄い紙を作る技術は随分最近だもんな。
それに読み書きで驚かれるってことは、識字率も高くなさそうだ。
これは、そのうち教育も充実させなければ。
「えっと、俺の出自はわかりませんが、使えるものは使いましょう。村の発展のためです・・・だし。」
また語尾がおかしくなってしまった。いきなり話しかけられたり詰め寄られたりするとつい敬語が出てしまう。