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59.落とし物?

ブクマ、評価ありがとうございます!

まだの方もぜひお願いします!

 翌朝、家の扉を開くと目の前にアヤナミが立っていた。


「おはようございます。ケイ様。」

「え、あ、おはよう……」


 一体いつから立っていたんだろう。……いや、聞かないほうが良さそうだ。


「食堂にて朝食のご用意ができております。」

「は、はい。」


 言われるがままに食堂へ行き、朝食をとる。ま、もともとその予定だったんだからいいんだけどさ。

 当然だが、村のみんなの視線は俺とアヤナミに集まる。初めて見る「メイド」という存在に興味津々という顔だ。いや、気持ちはわかるよ、俺だってメイドさんなんて初めて見るし。

 だが、その視線が自分にも向いていると思うといたたまれなくなってくる。

 でも「見るなよ」なんて言えないし……というか、言ったところで無意味だと思う。

 とはいえ、一日中好奇の目にさらされるとこっちの身が持たないので、アヤナミには食事の片付けとマリアさんの手伝いをお願いし、俺とは別行動をすることにした。

 ちなみに俺はいつものように村の見回りだ。

 うーん、こういうのにも慣れていかないといけないな。まあ、徐々に頑張ろう。



 食事を終え、みんなの視線からようやく開放されたところで俺は村を見回る。

 すでに働き始めている者も多く、今日も変わらずみんな元気に頑張っている。三日三晩による大宴会も終え、村も静かさを取り戻している。


 うん、今日も平和。いつもどおりの日常だ。

 だが、一つだけ、見回りをしていて気づいたことがある。

 そこかしこにピカピカ光る石が落ちているのだ。


 「なんだこれ?」


 落し物か?届けた方がいいのか?

 っていうか、なにこれ??


 とりあえず拾い集める。

 石はそこかしこに落ちていたが、特にアヤナミやレヴィアタンが長く留まった場所に多い。

 ということは、彼女たちの落し物か。


 「村長ー!見てー綺麗な石が落ちてたの!」


 フランカ、カルナ、クラリス、リディアの女子チームがやって来た。

 どうやら彼女たちも同じような石を見つけたらしく、俺に見せに来たようだ。


 「ああ、これな。どうやら落し物みたいなんだ。」

 「そうなの?じゃあ集めて持ってくる!」


 そう言うと散り散りになって石集めを始めた。







 「はい!これで全部かな?」

 「いっぱい落ちてたね。」


 子どもたちが持ってきてくれたものを合わせると、かなりの数になった。

 大小様々、全部で百以上はありそうだな。


 「ありがとな。」

 「どういたしまして!」



 さて、これをどうするか。

 っていうか、ほんとに何これ。

 考えてもわからないので、とりあえずライアのもとへ。


 困った時のライアさん。

 分からないことはとりあえず聞いてみよう。

 疑問を持つことと、分からないことを素直に質問できることが何より大事だって俺の高校の先生も言ってたし。


 「これは魔石ですね。」

 「魔石!?」


 なんでこんなところに?

 やっぱ落し物か!?つか落としすぎだろ。

 どんなうっかりだよ。それでよく大精霊の世話役が務まるな。


 「落し物なら、届けないと…………。」

 「落し物ではありませんよ。まあ、ある意味落し物なんですが。」

 「???」


 どういうことだ??


 「魔石は魔力の結晶だと言うことはご存知ですよね?」

 「ああ、確か自然発生はかなり珍しくて、人間の国では超高いんだよな。」


 魔石は魔力の結晶。

 主に魔法を使う魔物の体内から出てくる。

 エルフ等の魔力の高い種族なら自力で結晶化することも可能らしいが、コントロールがかなり難しく、一人でやるとなると死ぬほど疲れるらしい。


 「龍は存在が魔力の塊のようなものなので、そこにいるだけで結晶が出来てしまうんですよ。彼女が動き回ったので、そこかしこに落ちていたのでしょう。」


 え。

 龍さん……あんた魔力垂れ流してたの…………。

 あれ?でも………………


 「……大精霊は龍以上の魔力の持ち主なんだよな?ライアやアクエラ様がいても、魔石は落ちてなかったけど?」

 「私たちが人間の前に姿を現す時は、姿も力もかなり押さえ込んでいますから。普通の状態で人間の前に現れるとショック死させてしまいます。子龍はあまり外に出ませんから、コントロールが甘かったのでしょう。」


 なるほど。

 普段魔力に浸って生活しているようなもんだから、魔力を抑えてるようで抑えきれていなかったんだな。

 確かに最初にあった時のアクエラ様は怖かった。言いようもない恐怖というか、喉元に死を突きつけられたというか。

 なんというか、本当に別次元の存在なんだな。



 「これ、どうすればいいと思う?返した方がいいのか?」

 「その程度の魔力が失われたところで、龍に影響はありません。彼女自信、気付いてすらないと思います。持っていてもいいと思いますよ。」

 「そんなもんなのか。」


 結構な大きさの魔石がごろごろ落ちてるけど、気付きもしない程度なのか。

 なら貰っておこう。魔石は地球で言う強力な動力源みたいなものだし、ありがたく使わせていただきます。


 「ただ、さすがに村中に魔石が落ちているというのはよくありませんね。それとなく注意をしてあげてください。」

 「え?俺?」


 龍に説教なんて恐ろしいんですけど。より上位のライアがした方が良いんじゃないか?

 そう言うと、「今の主はあなたですから。」とサラリとかわされた。


 「それに、魔石ができるほどの魔力が村中に充満しているとなれば、少なからず影響も出てきます。強すぎる魔力は人間にとって毒になりますから、村人を守るためにもしっかりと言い聞かせた方が良いですね。」


 まじか、そうなんだ。

 まあ確かに、村人に影響があるなら何とかしないとな。

 アヤナミは素直でいい子そうだし、きっと聞いてくれるだろう。



 善は急げ、ということで俺は食堂に向かう。

 キッチンを覗くと、ちょうど皿洗いが終わったようだった。


 「あ、ケイ様。今終わりました。」

 「アヤナミちゃんは仕事がものすごく早いのよ!私なんかそのうち抜かされちゃうわぁ。」

 「マリアさん、ちょっとアヤナミ借りるね。アヤナミ、ちょっと話があるんだけど良いかな?」

 「はい、もちろんです。」


 アヤナミはキッチンのマリアに「失礼します。」と挨拶をすると、俺の後についてきた。

 人気のない場所で、俺は話し出す。


 「あのさ、アヤナミが歩いていた場所に魔石が落ちてて…………」

 「あっ!私の魔力……!すみません。お母様から魔力のコントロールについては言われていたはずなのに……。」


 どうやら直ぐに察してくれたようだ。

 深々と頭を下げて謝罪をする。

 「いやそんな怒ってるわけじゃないから!頭上げて!」と言うと、「すみません……。」と恐る恐る頭を上げた。まぁ、なんにしろ話が早くて助かるよ。


 「アヤナミはまだ魔力って完全にコントロール出来ないのか?」

 「いえ、できます!これからは気を抜かずにお勤めを果たします!」


 真面目な顔でピシッと宣言をするアヤナミ。

 うん、本人もわかってるっぽいし、もうこれ以上言わなくてもいいな。


 「分かってくれてるならいいよ。村人のためにも、俺のためにも頑張ってくれ。あ、勿論アヤナミの修行のためにもな。」

 「はい!ありがとうございます!」


 修行頑張れ、と言われたのが嬉しかったのか、にっこりと笑顔で返事をしてくれた。

 うん、これでよし!解決!

 ……って、そうだそうだ。


 「これさ、良かったら貰ってもいい?俺たちにとっては結構有用で。」

 「もちろんどうぞ。もともと不要な魔力が出ていただけですし、私の全ては主であるケイ様のものですから。」


 ニッコリと答えるアヤナミ。

 こらこら、「私の全てはケイ様のもの」なんて、女の子が簡単に言っちゃいけません。

 ……そういうことも含めて、色々覚えていってもらおう。




 集めた魔石は魔導人形研究チームに渡しておいた。

 ゴーレムの動力に魔石が必要って言ってたし、龍の魔力のこもった魔石なら文句無しだろう。

 ロードリックをはじめ、研究チームの面々もドワーフたちもわあわあ言っていたが、半ば無理やり押し付ける。

 これでゴーレムができて農作業が楽になればいいな。



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