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56.精霊の宣言

いつの間にやらブクマ50件になりました。

いつも読んでくださりありがとうございます!

これからもマイペースではありますが頑張りますのでよろしくお願いします!

 俺はアクエラ様を案内する。

 アクエラ様はなにか言いたげだったが、オンディーヌたちに早く逢いたいのか大人しくついてきた。

 シルフたちが俺に追いつき、風で服と髪を乾かしてくれる。


「ありがとな。」


 しゅるんっと俺の周りを一周し、シルフは去っていった。

「意外にも手懐けておる……」と腑に落ちない様子のアクエラ様。

 畑に着くと、オンディーヌたちがいつものように水やりをしてくれていた。


「おーい、オンディーヌたち、ちょっと来てくれ。お客さん?が来てるんだ。」


 オンディーヌは俺の声を聞くとすぐに集まってきた。そしてアクエラ様を見るなり、一斉に深くお辞儀をする。

 おお、大精霊というのは本当みたいだな。


「どうですアクエラ様。ちゃんと元気に__」

「あああ!妾の可愛い子たち!!!急にいなくなって心配したんじゃぞ?あの人間にひどい目に合わされてないか?いじめられたり、無理やり働かされたりしていないかえ!?」


 深々と頭を下げるオンディーヌたちに飛び込むアクエラ様。えええ、なにこれ。

 眷属って言ってたけど、なんか過保護な母親みたいになってないか?

 精霊同士の関係ってこんなもんなの?ライアはもうすこし威厳を持って接してた気がするけど…………。


 オンディーヌたちを撫で回すアクエラ様に、嬉しそうに飛び回るオンディーヌたち。

 どうやら俺のことなんかを説明してくれえているようで、「ふむ、ほう、そうなのかえ。」と頷いている。

 ひとしきり撫で回したアクエラ様はようやく俺の存在を思い出したようで、「……コホン。」と咳払いをした。


「どうやら誘拐やひどい仕打ちはしてないようじゃな。」

「はい、納得していただけて何よりです。」

「ただ、この子たちは美しき水辺でしか行きて行けぬ。妾の目でオンディーヌの寝床を確認せねば、安心はできぬ。」

「でしたら、ご案内しますのでこちらへどうぞ。」


 なんかわかってきたぞ。要はこの人、ただ単純にオンディーヌたちが心配だっただけなんだな。

 下級精霊って言ってたから主人と召使いみたいな関係かと思ったけど、我が子みたいなもんなのか。

 ならば、この村の快適さをアピールして、お母さん、もといアクエラ様に安心してもらえば良い。







「こちらが、オンディーヌたちの水場になります。みんなで花を植えたり池を作ったりして住みやすいように整えました。もちろん水もきれいです。」


 俺はオンディーヌたちの住む水場に案内した。

 透き通った池、風に揺れる草花、そして水中を揺蕩う水霊花。

 これだけきれいに整えた環境なら、納得してもらえるだろう。


「ほう……確かに、これは美しい…………」


 アクエラ様は池を覗き込み、感嘆を漏らした。

 花や草、ふわふわの苔の生えた石などを見て、段々と表情も柔らかくなる。


「せっかくですから、他の場所も見ていきませんか?オンディーヌたちの好きな果実や、美しい服なんかもありますよ。」


 そう言って俺は村の中を案内した。

 甘い香りの果樹畑や、青々とした野菜畑、のどかな牧場、カタン、コトン、と規則正しい音で織られる美しい布。

 工房の前に並ぶ上質な服や繊細な細工、食堂からは美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。



「どうですか?オンディーヌたちもこの村を気に入ってくれています。アクエラ様もご安心いただけたでしょうか?」

「そうじゃな。想像以上に美しく、活気にあふれておる。ここならオンディーヌたちが住みたくなるのも頷ける。」

「ありがとうございます。」

「それにな、ケイよ。これまでの振る舞いを見て、そなたが心清き男であることは十分にわかった。そなたであれば妾の眷属たちを預けてもよいだろう。これからも大切にしてやってくれるか?」

「もちろんです。俺もオンディーヌたちにたくさん助けられてますので、できる限り快適に暮らせるようにみんなでがんばりますよ。」

「そうか。」


 ほんの一瞬、かすかにだが、アクエラ様が初めて笑ってくれた。

 最後に世界樹の広場に案内する。


「なんと……世界樹があるのじゃな。」

「あら、アクエラ殿ではありませんか。」


 振り向くと、ライアがいた。

 そうか、ライアも大精霊。ってことは二人は知り合いなのか?


「そなたは、ドライアド殿。そなたもここへ?」

「はい、私はここに住み、今はライアと名乗っています。ここの人たちはみんな、私の大切な友人たちなのですよ。」


 ライアがニッコリと微笑む。


「そうか……ドライアド……ライア殿がここまで言うのなら、もはや疑いようもないな。ケイよ、あらぬ疑いをかけてしまい悪かった。」

「そんな……ちょっとびっくりしましたけど、俺は大丈夫ですから。それに、オンディーヌたちを大切に思ってるんだなってわかったし。」

「ふっ……疑いの詫びと言っては何だが、『精霊の宣言』をしてやろう。皆をこの場に集めるが良い。」

「へ……精霊の宣言?」

「『精霊の宣言』というのは、いわば大精霊がこの場所に加護を与えるという約束です。水の精霊でしたら、水が豊かになったり、水害などが起こらなくなったりといった恩恵があります。」


 俺がぽかんとしていると、ライアが補足説明をしてくれた。

 え?それってめちゃめちゃすごくない?要は干ばつや洪水と無縁になるってこと?

 俺は急いでみんなに集まるよう呼びかけた。





 しばらくして、村中の人が広場に集まった。


「あの人だれ?」

「すっごく綺麗な方……!!」

「なになに?何ごと?」

「なんか女神様みたいな人がいるって!」


「皆さん、お静かに。これよりわたくし、ドライアドの立ち会いにおいて、水の精霊アクエラの加護を授けます。」


「えっ?精霊様?」

「あの御方、精霊様なの?」

「なんと神々しい。」


 口々につぶやき、目の前の美しい女性を拝むみんな。

 アクエラ様、無表情を貫いてますけど、口元緩んでますよ。

 ほめられて嬉しいんですね。このひと、澄ました顔をしているけど意外とわかりやすい。


「コホン……我が名は、水の大精霊アクエラ!我が精霊の名において宣言する!この地は水の精霊の加護を得た!この先、我が名を裏切らぬ限り、この地に繁栄をもたらし、水の厄災から人々を守ると約束しよう!」


 わあっと歓声が上がり、広場は拍手に包まれる。

 こうしてこの村は、水の精霊の加護を得た。


 村は三日三晩の大宴会だ。

 世界樹の広場は飾り付けられ、肉や野菜、果物がこれでもかと並ぶ。あまり大した在庫が無かったのだが、ライアが再び力を使って野菜たちを急成長させてくれたのだ。

 それもあわさって、飲めや歌えの大騒ぎ。いつもは人間とあまり話をしないというアクエラ様も、ライアと共にお酒を飲んで談笑していた。

 さすがにあまりにうるさいと怒りだしそうなので、世界樹の根元に特等席を儲け、一般人は立ち入れないようにはしたけどね。

 村の人は二人の席に向かってかわるがわる祈りを捧げ、女性陣は誰が給仕に行くかを争っている。

 特に、アクエラ様の美しさに触発された女性陣が美の女神としても祭り出した。勝手に違う神にしていいのかとおもったが、当の本人は満更でも無さそうだ。

 ライアも以前から女性陣に、美しさの秘訣がうんたらと質問攻めにされていたのを何度か見たし、やっぱり女性はそういうの気になるんだろうな。


 宴会も一息ついたころ、アクエラ様は上機嫌で俺を呼ぶ。


 「ふふふ、ここの酒は悪くないな。料理も見たことの無いものがあって面白い。なかなか良い村だ。」

 「ありがとうございます。」

 「これからは妾の力でさらに発展するだろう。あぁ、そうそう、加護を与えたのだから神殿を建ててくれ。」

 「神殿ですか?」

 「まぁ、宣言だけしておいて全く放置というほど妾は薄情者ではない。時々様子を見に来てやる。が、あまり人に好奇の目で見られるのは好まぬ。そうだな……あの丘の上に神殿を立てるのだ。そうすればそこからみなの姿を見ることが出来る。」


 オンディーヌの件でも思ったけど、意外と面倒見はいいんだよな。

 俺が「かしこまりました。早速作ります。」と言うと、「うむ。」と満足気だ。


 「わかっているとは思うが、美しい神殿を立てるのだぞ?そうだな白の大理石が良い。北のフォライト山が良いだろう。あそこは良質な白大理石が取れる。あそこの石で神殿を作れ。」


 「あ、はい。頑張ります。」


 随分注文が多いな。白大理石の美しい神殿か……ノームたちに相談だな。

 その後は下見と言いながら丘に登り、オンディーヌの水辺で精霊たちと戯れ、自由気ままに過ごしている。下の広場はまだまだ宴会中だ。


 「あの、アクエラ様、そろそろ下に……」

 「ようやく見つけましたよ。」



 不意に後ろから声が聞こえた。



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