49.実感
ブクマ、評価、ありがとうございます!
まだの方もぜひよろしくお願いします!
厳しい寒さはしばらく続いたが、俺たちは特に大きなケガや病気もなく過ごした。
子どもたちは雪合戦にハマり、雪が積もった日なんかは学校のあと必ずと言っていいほどみんなで雪合戦をしている。
いつの間にかエルフの子どもたちもすっかり馴染んでいる。やはり遊びというのは偉大だ。
冬季学校のおかげで大人も子どもも少しずつではあるが読み書きができるようになって来ている。
特にもともと読み書きがそこそこできているエルフの子どもたちは時に先生役にもなり、子ども同士で教えあっている。
ゼノはこの冬から学び始めたというのに、もうエルフの子たちに負けないくらいのレベルだ。もともと頭の良い子だと思っていたが、これはますます将来が楽しみだ。
暖かくなったら畑を拡張し、大豆やイネ、薬草、白ブドウなどの作物を植えようとみんなで話し合った。
春になったらエルフたちの本格移住が始まる。人手が増えればできることも増える。
鉱石資源も探して、鉄製品も増やしたい。
ジークをはじめとしたドワーフ達も早く本格的に色々作りたいらしい。今はなけなしの資源で何とかやっているレベルだからな。
俺も彼らの働きには期待している。機械化できるところは機械化して、さらに発展した村にしたい。
今狙っているのは耕運機と唐箕、そして水車を利用した新たな製粉所だ。
これが出来れば少人数で畑を維持できる。今は全て手作業の重労働だからな。みんなも喜ぶだろう。
エルフの男性陣には何度か食料の支援をしている。また、ドワーフたちも二回ほどやって来た。
腕によりをかけた自慢の品物との交換はもちろん、人間の街で売ってきた金で食料以外に酒も購入。というかおそらくそっちがメイン。いくつもの樽を大事そうに運んでいったよ。
ちなみに相場はロベルトさんやジークが知っていたので任せた。たぶん一般の酒よりも少し高い値をつけている気がするが、「この味でこの値段なら誰も文句は言わない。」と言っていたのでまあいいか。ドワーフも文句は言ってなかったしね。
そもそも俺、この世界の貨幣価値とかものの相場とか全く知らないんだよな。これを機に貨幣のことだけでもロベルトさんに聞いておいた。
なんでもこの世界は全ての国で共通の貨幣を使用している。勿論魔族領もだ。
なんて便利。異世界人の俺からしたらなんともありがたい。
貨幣の種類は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
話を聞いている限りでは、鉄貨=十円、銅貨=百円、銀貨=千円、金貨=一万円、大金貨=十万円ってところだろうか。ちなみにロベルトさんの村ではじゃがいもは麻袋(中)一つで銅貨五枚程度と言っていた。麻袋(中)が大体五キロ位だとして百円/kgか。
まあそんなに暴利ではないのかな?
「ちなみにじゃが、安物のワインじゃと小樽で金貨八枚と銀貨二枚。安いビールは金貨一枚と銀貨六枚くらいじゃったかの。」
「へぇ……。ちなみに小樽ってどのくらいの量が入ってるんだ?」
「……?小樽は小樽じゃろう?」
どうやらこの世界の量り売りは樽の大きさで決まるらしい。中樽は小樽の四倍、大樽は中樽の四倍だそうだ。
樽は一応規格化されているらしいが、それって正確性に欠けるような……。本格的に交易するなら、単位とかもしっかり決めとかないと。樽の単位って一バレルだっけ?一バレルって何リットルなんだ??
…………重量計とか作った方が良いな。
あれ?確かドワーフたちにはビールを大樽で金貨四十二枚で売っていたような……とんでもなく暴利じゃないか?
ロベルトさんに言ってみたが、「当然じゃ。あんな上物を安値で売れるわけなかろう。あれくらいが適正じゃよ。むしろ安いくらいじゃ。」と当然のように言っていた。
適正……なのか?
まぁ、地球でも高級ワインとかは安物の十倍二十倍の値段はするしな。場合によってはもっとするらしい。
誰も文句は言ってなかったし、大丈夫なんだろう。
うん、そう思うことにする。
ざっくり整理すると、イモやタマネギなんかの庶民御用達の野菜類や主食となる小麦類は比較的安価で売られ、果物や傷みの早いトマトみたいなものは高級品、魚も腐りやすく輸送に苦労するため内陸部では高級品だ。
前に「朝から果物なんて貴族のようだ」と言っていたのはこういうことだったのか。
驚いたのは服の値段だ。
この世界では衣服=高級品という認識が当然らしい。例えば店で普通の綿のシャツを買った場合、金貨二〜三枚はするんだとか。
金貨二枚って約二万円だぞ!?シャツ一枚で。どこの高級ブランドだよ。
だから大抵の庶民は布の状態で買い、自分で仕立てるらしい。
といっても上手く仕立てられる人は少ない。そういう場合は古着屋で買う。替えの服も最低限だ。破れても補修して使うし、子ども服は代々お下がり。
「だから今のような、二枚も三枚も服が手に入る環境など、普通ではありえないことなんじゃ。」
「へ、へぇ……。」
……ちなみに俺が下着にしようとしていたシルク。あまりの高級品でロベルトさんも正確な値段は分からないが、おそらく布の状態でも金貨五百枚はくだらないだろうとの事だった。
キ、キンカゴヒャクマイ…。
俺は改めて、ここは異世界なんだなと実感した。