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48.限度というものがあるでしょう

 二回戦、エルフの部。場の公平性を期すため、少し場所を変えて試合をする。

 チーム分けはサラを筆頭にした総勢九人のサラチーム、シャーリー率いる総勢九人のシャーリーチームだ。


「では、よーい、はじめ!」


 ライアの掛け声とともに、試合は始まり______あっという間に終了した。


「そこまで!サラチーム全滅により、シャーリーチームの勝利!」


 もうもうとした雪煙の中、ライアが勝敗を宣言する。

 ……え?

 …………え??

 何がおこったのかわからない。周りのギャラリーもみんなぽかんとしている。


 そんな中、シャーリーチームの女性の一人が勝ち誇ったように笑った。

 たしか、ベティといったっけ?


「ふふん、獲物を追撃するこの魔法の前では逃げられませんよ。開発した甲斐があったというものです!」

「くっ……さすがはエルフの魔法研究の第一人者……まさか狩りに使う魔法を雪合戦に使うとは…………。」


 ええと、要するに、ベティの開発した追撃魔法によって雪玉がサラチームを一人残らず仕留めたってこと?

 ちょっとチートすぎやしませんかね…………。

 とはいえ、魔法禁止とは言っていないので仕方がない。

 あまりにも瞬殺で盛り上がりには欠けたが、二回戦も無事?終了した。



 三回戦、鬼人たちによる対決。

 ガルク、ゼノ、ビオラ、エルド、ダリオのガルクチーム対ジェイク、カルナ、ナディア、エルヴィラ、イヴァンのジェイクチームだ。

「お互い、正々堂々と戦おう。」と両者挨拶を交わす。

 なんだか武士の闘いのようだ。合戦という言葉がよく似合う。


「では、よーい、はじめ!」


 鬼人たちの闘いは圧巻だった。

 目にも留まらぬ早さで雪玉が飛び交う。よく見ると、片手で雪を救い、自らの握力で固めてそのまま投げている。

 髪をなびかせ、ビオラが避ける。腕を振り上げてイヴァンが投げる。

 カルナは人間に近い分不利かと思ったが、素早い身のこなしで雪玉を上手に避ける。

 ジェイクの豪速球にエルドが倒れ、ゼノの隙を突いた攻撃にエルヴィラが屈す。

 まさに互角、息もつかせぬ闘いだ。

 そこからは膠着状態だ。互いに雪を投げ合うも、うまく避けられ人数は減らない。






「そこまで!」


 ライアの掛け声で試合は終了。最後に立っていたのは、ガルク、ゼノ、ダリオ、相手チームはカルナ、ナディア、イヴァン。

 引き分けだ。しかしジェイクは首を振った。


「私は最後の最後でゼノに隙をつかれた。大将が倒れた以上、こちらの負けだ。」


 ジェイクチームはガルクチームに拍手を送る。ガルクとジェイクは互いに固い握手を交わした。

 ギャラリーも思わず拍手をする。なんというか、プロ同士の試合を見ているような鳥肌の立つ内容だった。


「いいぞ、ゼノ!」


 セシルが力いっぱい拍手する。すごすぎてよく見えなかったけど、おそらくゼノもMVPに相当する活躍だったんだろう。

 あのメンバーの中、カルナが最後まで残ったというのもすごい。まったくうちの子たちは将来有望だな。

 興奮冷めやらぬ中、場所を移動して次の試合へ。

 次は精霊の部だ。






 四回戦、ノーム対オンディーヌの精霊対決。

 ノームはトウリョウ率いる各帽子隊隊長の選抜七名。オンディーヌは全員参加の七名。


 普段穏やかで争うことも無い精霊たちだが、大丈夫か?

 というか、ノームたちに至っては雪に埋もれてないか?


 「では、よーい、始め!」


 ライアの掛け声で両者一斉にスタート。

 空を飛べるオンディーヌが有利かと思ったが、両者は互角だった。

 ノームたちは持ち前の連携と素早い動きで広がり、的を分散させる。そして素早く雪玉を作ると、小さな身体から想像もできない豪速球を連発。

 オンディーヌも負けていない。素早い動きで軽々と雪玉を避け、魔法で上から雪玉の雨。

 そういえば雪も氷も水の一部だもんな。

 それをあえて雪に潜り込み、塹壕戦のような形で防ぐノーム。

 さらに勝負は白熱し、オンディーヌ達は地面に積もった雪を巻き上げる。ノーム達は塹壕を奪われ丸見えに。しかしそこは土の精霊、魔法で地面を盛り上げ土の壁を瞬時に作る。

 というか、ノームも普通に魔法使えたのね。


 「はい、そこまで。両方とも、やりすぎです。」


 ライアの声でピタリと動きを止める両陣営。

 残ったのはボコボコに隆起した広場の地面と、巻き上げられ、山となった大量の雪、そして雪まみれの俺たちだった。


 「勝負に夢中とはいえ、限度というものがあるでしょう。責任をもって元に戻すのですよ。」


 ライアに怒られ、一気にしゅんとなる精霊たち。

 ライアに向かって深く頭を下げ、すごすごと片付けに向かう。

 もともと小さな身体がさらに小さく見える。



 「これは…………」

 「精霊の力とは……」

 「これほどの威力があるとは…………」

 「とんでもないわね…………」


 滅茶苦茶になった広場とビショビショな身体に呆然とする大人たち。




 「あっははははは!!!」

 「あはははは!」

 「すっごぉーい!!!」

 「ちょーいい試合だったじゃん!!!」

 「ははははっ!すごいや!さすが精霊だね!」



 そんな大人たちを尻目に大笑いの子どもたち。

 ……まぁ、楽しかったからいっか。

 子どもたちは楽しそうだし、なんだかんだ俺たち大人も楽しんだと思う。

 正直精霊たちがここまで熱くなるのは意外だったけれど、意外な一面が見られたってことで逆に良かったんじゃないかな?


 二人のオンディーヌが申し訳なさそうにこちらに近づき、魔法で服の水気を取ってくれた。


 「気にすんな。こっちも見てて楽しかったよ。」


 そう言うと嬉しそうに笑ってくれた。

 いろいろ予想外はあったものの、みんなが楽しく試合をすることができたので良かったと思う。

 広場も無事に元通り。何も問題はない。


「またやろうな!」

「次はチームを変えてやりましょう!」

「魔法禁止など、縛りを作るのも面白いかもしれませんね。」


 みんなが口々に意見を出す。それだけ楽しかったってことだよな。


「ああ、またやろうな!」


 初めて経験した雪合戦はとても楽しかった。





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