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47.雪合戦

ブクマありがとうございます!


 大雪が降った。

 もちろんこれまでにも積もるくらいの雪は何度か降ったのだが、今回は三日間にわたる猛吹雪だ。


 ヒュゴオオォォッッ!


 ものすごい風が吹き付ける。

 視界も真っ白。外に出ることは諦めた。

 ライアやノーム達は大丈夫だろうか?

 精霊だからなんてことは無いと分かってはいても、やはり一緒に暮らしてきた仲間として心配になる。

 吹雪が止んだら様子を見に行こう。


 四日後、ようやく風も止み、三日ぶりに外に出た。

 重たいドアを押し開けると、一面真っ白の銀世界になっていた。


 「すっげー!!!雪だ!真っ白じゃん!!」


 セシルが興奮して外に出る。

 ズボッと足が埋まった。三十センチほど雪が積もっている。


 「おお!足跡がつく!!」


 構わずにズボズボと雪を踏み締めて歩くセシル。

 他の面々もだんだんと家から出てきた。


 「あらぁ、すごいわねぇ。」

 「すごい吹雪だったものね。何ともなかった?」

 「こちらは問題ありません。」

 「私たちも特に問題はありません。工房のエルフやドワーフたちの様子を見てきます。」


 そう言ってサラは工業区の方に走って行った。

 雪の中でも軽やかに走るのはさすがエルフと言ったところか。

 そういえば精霊達は?


 「ライアー?大丈夫?寒かったねー!」

 「大丈夫よ、フランカ。あなたは平気?」

 「うん!風がすごく強くて怖かったけど、大丈夫だよ。ノームさんたちは?」

 「彼らも平気よ。精霊ですもの。雪なんてへっちゃらよ。」

 「良かったー!」


 二人の会話を聞く限り、みんな大丈夫そうだな。


 「ここまで降ると、雪かきをしても意味が無いのう。雲行きを見るに今夜もまた降りそうじゃしな。」


 ロベルトさんが諦めたように笑う。

 確かに、雪かきしたところでまた降るんじゃなぁ………………


 いっその事、雪で遊んでしまうか。

 どうせなら楽しんだ者勝ちだ。家に籠ってたってやることは限られているんだし。

 たまにはみんなで体を動かさないとな。

 何より、病弱だった俺はこんな雪の中に立っていたことなんて無いのだ。

 せっかくなら思いっきり遊んでみたい!


 「よし、雪合戦をやろう!!」










 みんなに広場に集まってもらう。

 「ケイ?一体どうしたの?」

 「いやさ、せっかく雪も積もったんだし、みんなで雪合戦でもやりたいなって。」

 「雪合戦?」

 「雪合戦とは?」

 「合戦……と言うからには、戦いでしょうか。」

 「雪上模擬試合といったところかのう?」


 え、みんな雪合戦知らないの?


 「雪合戦っていうのは、要するに雪玉を投げ合う遊びだよ。チームに分かれて相手に雪玉をぶつけるんだ。」


 俺はみんなに雪合戦の説明をした。

 ついでに独自のルールも作ってみる。


 チームに別れて、雪玉を投げ合う。

 雪玉が当たったらアウト。アウトになったら挙手で知らせ、それ以上攻撃はできない。相手もアウトの人を執拗に攻撃してはいけない。

 アウトかどうかは自己申告制だけど、そこはみんなが楽しむためにズルは無しで。

 制限時間は五分間、もしくは味方が全滅したら終了。

 当然だけど、石や氷など、雪玉以外を投げるのは禁止。もし発見したらその時点でそのチームは負け。


 説明を聞くと、みんな「楽しそう!」と乗り気になってくれた。

 今までこういう遊びって少なかったのか?意外と大人もノリノリで少し驚いた。


 体格や身体能力に差がありすぎて危険ということで、四部門に分けることにする。

 一回戦は一般の部。人間と子どもエルフ、ドワーフによる試合。

 二回戦はエルフの部。大人エルフたちによる試合。

 三回戦は鬼人の部。力の強い鬼人達のみの試合。

 四回戦は精霊の部。ノームとオンディーヌの有志による試合。


 審判はライアにお願いした。


 「ふふふ、いいですよ。皆さん頑張ってください。あ、不正行為はダメですよ。すぐに分かりますので。」


 なんとも怖い……いや頼もしい審判だ。

 そうして第1回雪合戦大会が開催された。







 一回戦、一般の部。

 チーム分けの結果、村長チーム(ライアが命名)は俺、セシル、ジーク、グレゴール、ゲオルグ。そしてエルフの男の子アロンとセディ、エルフの女の子のクラリス。合計八人のチーム。

 ロベルトチームはロベルトさん、テレサ、マリア、フランカ、バルタザール、ヴェンデリン。そしてエルフの男の子のフィルとリッキー、エルフの女の子のリディア。合計九人のチームだ。


「では、よーい、はじめ!」


 ライアの掛け声で一斉に雪玉を作り始める。初めてということもあり、雪玉づくりに意外と時間がかかる。

 最初に攻撃を仕掛けたのはうちのチームのアロンだった。

「それっ!」

 狙うはバルタザール。なかなかの球速だ。

「ぬぅっ!やりおったな。」

 惜しい。あと少しのところで避けられた。バルタザールはアロンに狙いを定める。やり返す気満々だ。

 しかし、雪玉を作るためにかがんだところへジークが投げ、見事ヒット。

「ふふん、脇が甘いわ!」

「貴様ーっ!!」

「はぁっ」

 二人が争っているところへロベルトさんが的確なコントロールで雪玉を投げる。

 ジークにヒット。ロベルトさんは「ほっほっほ」と嬉しそう。

 フランカはセシルに向かって雪を投げまくる。もはや雪玉になっていないが、スピード重視の雪合戦ではそのくらいがいいのかもしれない。

「へへーん!当たらないよ!」

 からかうセシル。ついでに雪玉を投げリッキーに当てる。よしよし、さすがは器用な男。

 フランカは雪を投げまくっている拍子に、まぐれでマリアに当たりマリアはアウト。

「あらあら、やられちゃったわぁ。」

 そういうマリアは楽しそうに笑っている。

 俺も負けてられない。雪玉を作ってどんどん投げる。狙うはロベルトさんだ。

 しかし、ひょいっと器用に避けられてしまった。

 そんな俺にも色んな方向から雪玉は飛んでくる。素早く身を引いて避け…………きれなかった。

 みると、ニンマリと笑うテレサ。くっそう!やられた!

 クラリスがフランカに当て、リディアはセディに当てる。まさに大混戦だ。

 ヴェンデリンは職人の性か、雪玉を丁寧に作っているところに三方向から狙われアウト。

 動きの良さで目立つのはセシルと、意外にも最年長のロベルトさんだ。

 セシルはなんと二刀流、両手に雪玉を持って投げまくる。そして見事テレサとリディアを仕留めた。

 ロベルトさんは的確なコントロールで確実に当てていく。グレゴール、ゲオルグと次々にヒットさせていく。


「そこまで!」


 時間切れで試合終了だ。結果は…………村長チームの生き残りがセシルとアロン、クラリス。ロベルトチームの生き残りがロベルトさんとフィル。三対二で俺たちの勝ちだ。


「この勝負、村長チームの勝利!」


 わあっと歓声が上がる。みんなでハイタッチ。MVPのセシルは得意顔だ。

「セシルはすごいな。両手で投げて当てるなんて。さすがだよ。」

「へへっ!まだまだやれるよ!」


「惜しかったわね!」

「でも楽しかったわぁ。」

「久しぶりにはしゃいでしまったのう。」

「もう一回やりたーい!」

「次は負けないよ!」


 負けたチームも楽しそうだ。

 エルフの子どもたちはリベンジに燃えている。

 しかし、再戦は置いておこう。試合を見たエルフと鬼人が今か今かと待ちわびているからな。



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