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46.餅つき

季節感ガン無視です笑

夏になると冬が恋しくなりますね。

 冬に食べたくなるものといえば、そう、お餅だ。

 夏の終りに育て始めた稲は、世界樹の加護のおかげで量は多くないがなんとか収穫できた。

 普通のうるち米は普段食べる用と味噌や醤油づくりのための米麹用でもう残っていない。

 しかし、同時に育てていたもち米が残っていた。

 この際だから、お餅づくりにチャレンジしてみる。



「あら、村長は何をするの?」

「あ、マリアさん。実はお餅っていう新しい料理を作ってみようと思って。」

「まあ、すてきねぇ。どんな味がするのかしら。私にも教えてくれる?」

「もちろん!手伝ってくれると嬉しいよ。」


 マリアさん協力のもと、食料庫に保管しておいたもち米に水を吸わせる。

 一晩は置いておいたほうが良さそうなので、その間に杵と臼を作ってもらう。

 家具担当の緑帽子隊リーダー、ミドリに絵を描いて説明。単純な作りなので数時間もせずにできてしまった。


「明日になったら、これを蒸して、この道具でつくんだ。」

「意外と時間がかかるのねぇ。」

「その分美味しさは保証するよ。」


 おっとそうだ。蒸し器もほしいな。これも追加でミドリに注文。

 俺の拙い説明にもかかわらず、四角い形の蒸し器が完成。枠の部分は木製で、中のザルの部分は麦わらを編んで作ってもらった。

 本当に器用で助かるよ。そう言うとミドリはちょっと照れながらも、おなじみの人差し指ポーズで挨拶。

 さて、あとは明日を待つばかり。


 翌日、キッチンに立つ俺とマリアさん。

 もち米もいい具合に水を吸っている。

 これを昨日作ってもらったばかりの蒸し器で蒸していく。火加減、時間はわからないから感覚で。

 マリアさんは長年の料理の感覚からか、初めてのもち米の扱いもバッチリだった。


「そろそろいいんじゃない?」


 マリアさんに言われ蒸し器を火から外す。やけどをしないように蓋を取ると、真っ白い湯気がモワッと顔にかかる。

 もち米はいい感じに蒸されていた。

 これを臼に入れる。かなり熱い、頑張って入れる。

 もち米のいい匂いを嗅ぎつけ、子どもたちが覗きに来た。


「何やってるのー?」

「『お餅』っていうのを作っているんだよ。」

「『オモチ』?ゼノ、知ってるか?」

「ううん、知らない。セシルは?」

「おれも知らない。」

「でもなんか美味しそう!」

「ぼくらにもくれるー?」

「もちろん、ほら、熱いから離れてな。」


 子どもたちがうっかりやけどをしないように気をつけながら、無事に全部移し言えた。

 入れたら杵でついていく。最初はこねるように小刻みに動かす。かなり杵にくっついてやりにくい。

 マリアさんが「水をつけたほうがいいわね」と木製のボウルに水を用意してくれた。

 米の原型がなくなるまでひたすらこねていく。しばらくついていると、だんだん餅っぽくなってきた。

 よし、いよいよ餅つきだ。


「せやっ」


 杵を振りかぶって下ろす。かなり疲れる作業である。これ、杵を二つ作ってもらえばよかったな。

 ゼノが「代わろうか?」と言ってきたので選手交代。

 鬼人のゼノのほうが圧倒的に力が強いもんな。

 おれはひっくり返す役、だったんだが……


「あっつっ!!!」


 餅は思っていたよりも熱く、しかも重い。なかなかうまくひっくり返せないし、やけどをしそうだ。


「ちょ!ジェイク!ジェイク呼んできて!!」


 情けないがこれは無理だ。熱さにに強いジェイクに応援を頼む。

 セシルがすぐに走って呼んできてくれた。


「よっ!」「ほっ」「よっ!」「はっ」


 そこからは正直俺の出番はなかった。

 ゼノが付き、ジェイクが返す。やり方が分かってきたのか、二人とも良いタイミングでリズムよくついていく。

 段々と餅ができてきた。


「なんか不思議な感触だね。」

「もっちりしていて伸びがあります。」

「こういうもんなんだよ。食べると美味しいよ。」


 出来上がった餅を小さくちぎって丸めていく。

 が、餅とり粉を用意していなかったのでベタベタひっついてしまった。自分の準備不足を反省。

 まあ味は変わらないだろう。


 そんなこんなで、トラブルは多かったがなんとか完成した。

 上手く行かなかったところは次に生かそう。

 次はもっとたくさん作ってもいいな。もち米はまだ少しあるのでまたやろう。


 皆を呼んで試食会。

 喉に詰まらせないようによく噛んで食べることだけしっかりと言い聞かせる。

 餅は大好評だった。

 残念ながらしょうゆもきなこもなかったので、砂糖や塩、蜂蜜など思い思いのものをつけて食べる。

 来年こそは醤油ときなこだな。よし、大豆の生産拡大だ。




 その後もしばらく餅ブームは続いた。

 特にエルフたちに大受けだ。子どもに負けず大人のエルフがガンガン食べに来る。

 おかげであっという間になくなってしまった。

 少なめとはいえ、一週間も持たないとは想定外だな。


「来年はもち米の生産を増やしましょう。」

「いいですね。」

「今回の三倍、いえ、四倍は確保したいところです。」


 エルフたちの気合がすごい。

 どうやら、餅つきは毎年の定番行事になりそうな予感。

 

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