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45.冬が来た

 本格的な冬が来た。

 ここは森の中ということもあって寒い。そして雪も降る。

 女性陣が秋からコツコツと作ってくれた毛糸のセーターや靴下が大活躍だ。

 そして毛皮の防寒着も。最初は鬼人達が元々着ていたような総毛皮の野性的な防寒着だったが、毛糸のカーディガンや毛織物の上着と合わせることでオシャレな感じになった。

 毛皮や羊毛の質もいいし、もう少しデザイン等を発展させれば充分売れると思う。

 毛皮加工をしてくれた鬼人やエルフにも感謝。


 暖房は暖炉の火だけなのだが、これが意外と暖かい。冬場は畑仕事もないので、用事のある時以外はみんな家にこもりがちだ。換気だけはこまめにするような言っておいたよ。

 俺は一応寝る時以外は食堂にいるようにしている。何かあった時一番集まりやすいところだからね。

 マリアさんは料理をしている時以外は、食堂の暖炉のそばで編み物をしていることが多い。その姿がよく似合う。フランカやエルフの子どもたちが数人マリアさんを囲んで編み物を教わっていた。


 そうそう、子どもたちと言えば冬の間は時間があるので、読み書き計算を教える冬季学校も開いた。

 先生役はエルフ達に交代でお願いしている。意外と子どもだけでなく、鬼人の大人たちも参加しているのには驚いた。せっかくの機会だから読み書きができるようになりたいらしい。

 向上心があるのはいい事だ。ちゃんとした教育はこの先絶対に自分のためになるからね。

 冬季学校はとても好評だった。辺境の村や鬼人の里では、今まで勉強の機会なんてろくになかったらしく、タダで学べるなんてありえないと言っていたよ。

 そのうち読み書き計算だけでなく、日によってロベルトさんの農業教室や、ジェイクの体術教室など、色んな先生が誕生した。

 意外とみんな先生になりたがっていたのにも驚きだ。まあ、得意なことを披露したいという気持ちはわからんでもない。

 今まで当たり前にやってきたことが、尊敬の眼差しで見られるんだものな。

 日が経つにつれ、午前中は読み書き計算、午後はゲスト先生による自由参加の特別授業という形に収まった。

 子どもたちの勉強への意欲もなかなかだ。エルフの子達は元々勉強はするものだとすり込まれているし、研究熱心な種族的特徴もあっていつも真剣に勉強している。人間や鬼人の子どもたちもそれにつられて頑張っている。

 大人たちが「こんなありがたい機会は滅多にないんだから!!」と何度も言っていたと言うのもあるのかな。


 先生役以外のエルフたちは自分たちの研究を徐々に再開した。

 俺が目をつけていた薬学、発酵、シルクスパイダーの研究チームには既に話をしてある。

 春になったら薬草畑も作り、キズぐすりや火傷直しなどの薬を作って貰う。設備が安定したら量産もいいかもな。

 発酵研究チームには、秋に収穫した大豆を使った味噌と醤油、そして酒の製造と改良をお願いした。味噌と醤油は地球から転送してきた現物を少しだけ渡しておいた。ネットで調べた作り方も伝えてある。

 作ること自体は何となく出来そうだが、完成度を高めるのが彼らの仕事だ。地球産のこの味に近づけて欲しいと言うことで依頼。見たことも無い調味料、しかも美味しいということで彼女らの研究者魂に火がついたらしい。早速作り始めている。

 酒担当のリネットには、他に作れそうな酒がないかを聞いてみる。するとエルフの里で、ビールの酒精をさらに高めた麦酒に挑戦していたという話だった。恐らくそれはウイスキーじゃないのか?その研究、是非とも続けてもらいたい。

 また、ワインでも使うブドウによって味わいが変わったり、白ブドウを使ったワインの研究などもしていたらしい。研究のために、白ブドウを畑に植えて欲しいとお願いされた。

 白ワインか。いいな。ぜひ植えてみよう。

 地球に帰ってワイン用の白ブドウを探してみるか。


 シルクスパイダーの研究は正直言って行き詰まっていた。何しろ蜘蛛に沢山の子を産ませる必要があるのだ。そして上位種ほど変異体を産む確率が上がる。

 しかし、ただでさえ希少なシルクスパイダー、それも上位種なんてそうそういるはずがない。

 エルフの里で実験に使っていたシルクスパイダーの上位種、キルスパイダーは檻を噛みちぎって逃げてしまったらしい。木と蔦で作っていたとはいえ、檻を噛みちぎるって結構怖いぞ。

 それならシルキィに協力を仰ごう。そう考えたのだが、シルキィは冬場は冬眠中だ。春になったら打診してみよう。


 ほかのエルフたちも、それぞれの研究に必要な設備を注文したり、畑や動植物の飼育栽培を俺に打診したりと忙しそうだ。


 ドワーフたちも、自分の工房で早速作品造りに取り組んでいる。たまに様子を見に近くまで行くと、カンッ、カンッ、と力強い音が聞こえる。

 ジークは鉄製品の他にガラスの小物を作っていた。この腕前が人間や魔族に認められ、引退するまで彼の作品は王侯貴族御用達の高級品だったらしい。だがさすがにこの村で使う人はいなかった。というか、そんな貴重なものを気軽に使えるほどみんな図太くはなかった。

 でも、ガラスの製造ができるというのは大きい。板ガラスの製造方法を教えれば建物の窓なんかを作ってもらえないかな。今度打診してみよう。

 彫刻家のヴェンデリンには、服作りで使うマネキンやトルソーを作ってもらっている。

 これはテレサからの依頼だ。どうやら本格的に服作りに目覚めたらしい。「このワシにかかれば簡単な仕事よ!」と自信満々に休むことなく丸太を彫り続けている。大人の男性、女性、子ども、鬼人と様々なサイズで作るらしい。

 また、ゲオルグは、この辺りの新しい鉱脈を発掘しようとノームやエルフたちに情報を聞いて回っている。

 さすがにこの雪の中、鉱脈探しに行きたいと言われた時には止めたよ。そのまま雪像にでもなられたら嫌だしね。

 ゲオルグは「むう」とか「ぬう」とか渋っていたが、何とか理解してくれた。自分たちが雪が得意でない種族というのをよく分かっているらしい。

 その代わり、春になったら一番に出かけると条件をつけられた。

 ま、確かに俺もこの辺りの鉱物資源については知っておきたかったし、丁度良い機会かもな。


ブクマ、評価、どうぞよろしくお願いします!

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