44.面接
本日は夜にまた更新します。
ジェイクをドワーフの村に使いに出し、移住希望者に再び来てもらう。
七日後、集まったドワーフたちに俺たちの方針を伝える。
村の規模に合わせて数名移住を許可すること、移住者は面接で選ばせてもらうこと、移住しない者達には他の村や町で自分らの作品を売ってもらい、そのお金で酒の買取ができるようにすること。
移住できるのが数名と聞いて残念がってはいたが、概ね理解して貰えた。
これを機に頑固一徹の商売から少しは柔軟になるといいな。
ということで早速面接開始。面接官は俺とジークとライア。ライアを入れたのはもちろん嘘や不正を防ぐため。ジークとの契約で、ドワーフたちにライアの威厳は効果絶大ということを知ったからね。
ジークも「ライア殿がおれば下手なことは言えんじゃろうな。」とニヤニヤしている。
面接は結構時間がかかった。ドワーフと一括りにしても、作るものの専門や得意分野も違うし、アピールも様々だった。
自分の作品を見せるもの、鍛治以外の有用性をアピールするもの。酒への情熱を語るもの。
朝から始めたはずなのに、全てが終わる頃には太陽が傾き始めていた。
その後、面接官三人で話し合い、合格者を決定。
即日通知。不合格者の中には怒ったりごねたり様々だったが、これはしょうがない。何をしても覆らないと悟ったドワーフ達はすごすごと帰っていったよ。
というか、「村の規模に合わせて」採用なんだから、これから村が大きくなれば追加募集も有り得るのに。
ま、そこは彼らに任せよう。ここで諦めるもよし。追加募集に備えてさらに腕を磨くもよし。
ジークじゃないけど「自分の道は自分で切り開け」ってね。
ちなみに採用したのは以下の四人だ。
バルタザール:刀匠、武器職人
ジークベルトのライバル的存在で、若い頃はいつも互いの腕を競い合ってきたとか。いくつもの小国の騎士団の武器制作を一手に引き受けていたこともある実力派。ジークベルトが高待遇で迎えられていると知り、自分もと売り込んで来たらしい。専門は武器だが、人間の街では包丁などもよく売れている。
グレゴール:彫金師、宝石加工職人
ジークベルトの元弟子で、彫金を専門とする。宝石や高価な細工の目利きや製作にかけてはジークベルトも認めるほど。ドワーフの割に穏やかな性格をしている。ものすごく手先が器用で、作品を見せられた時はその精密さに驚いたよ。俺が心の中で即採用を決めた人物だ。
ヴェンデリン:彫刻家
元は世界中からオファーが来るほどの彫刻家で、彼が作るものは本当に生きているかのような出来栄えだという。しかし、頑固で貴族の要望を突っぱねることを繰り返し、各国で追放、またはお尋ね者になっているとか。生活に困り、村に移住を決意。なぜ貴族の要望を突っぱねたのかと言う質問に対しては「彼奴らは自分の姿も見たことがないのか、やれ俺の足はもっと長いだとか、やれ私はこんなに太ってないだとか、話にならん。ありのままの美しさを彫刻に宿すのがワシの勤めということを全くもって分かっとらんのじゃ!」とのこと。要は写実主義らしい。
正直迷ったが、芸術家が村にいるといいな、と思ったので採用。
ゲオルク:採掘師
ジークベルトの古い友人。鍛治の腕はからっきしだが、鉱石を嗅ぎつける鼻と腕は素晴らしい。ドワーフのくせに鍛治が出来ないとしてバカにされていたんだとか。それもあって、鍛治ではなく鉱石や宝石などの素材の採掘専門に転向したらしい。ジークの強い推薦で採用。職人ばかりに目を向けていたけれど、確かに採掘も重要だもんな。この森の中で良い素材を探しあててもらうことを期待しよう。
そんな感じでジークを含め五人のドワーフが仲間になった。ちなみにジークの専門は鋳造、工芸だという。「まぁ、要するになんでも出来るって事じゃ」と自信満々に言われた。そんなもんなのか?
とにかく、ドワーフたちはそれぞれ自分の工房や設備を作りたいと言っていたのでトウリョウに相談。
工業区にそれぞれの工房を建てることになった。また、全員工房で寝泊まりして過ごすとの事だったので、工房の二階部分を居住区域に。
こだわりの強い職人たちの工房作りは結構大変、かと思いきや、意外とノームたちと上手くやれている。
工房内に炉を作りたいだとか、ここに机がいるだとか、ここの素材は石材じゃないとダメだとか、細かい造りもなんやかんや協力してできている。気がつくと立派な工房が出来上がっていた。
ドワーフ達はホクホク顔で、人差し指ポーズまでやっている。いつの間にそんな仲良くなったんだ。
ライアによると、ノームとドワーフは近い種族らしい。どちらも大地の大精霊が作った存在だとか。だから分かり合える部分も多いのだろう。
……あれ?確かエルフたちも大地の神の子孫とか言ってなかったっけ?
でも見た目も違うし、魔力の強さも違うし、似ているかと言われれば全然似てない。
どういうことだろう?
まあいいか。考えてもわからん。
仲良くしてくれればそれで良いのだ。
まぁとにかく、厳しい冬が来るまでにはドワーフたちの家(兼工房)も何とかなりそうだ。
ちなみに村長の家として新たな建物も建設中だ。
俺は別にいらないと思ったのだが、これから先、客人が来た時に、いつまでもみんなが使う食堂に通す訳には行かないと押し切られてしまった。それにいつまでも小さな家に三人で住んでいたら村長の威厳に関わるらしい。
まあその辺はよくわからんが、迎賓館も兼ねているようなので了承した。
ただ急がなくていいとは伝えてある。本当に必要なものを優先的に作り、空いた時間でのんびり進めてくれたらいい。