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4.元の世界に戻りました

本日は2話投稿します。

感想、評価、ブクマよろしくお願いいたします。

 目が覚めると、また白い空間にいた。


「ん?あれ…………?」

「どうやらうまく合流しようじゃな。」

「はっ、ディミトリオス様!おかげさまでなんとか人に会えました。ありがとうございます。」

「うむ、うむ、よいよい。どうじゃ?あの者たちとやっていけそうかの?」

「はい、みんないい人たちで安心しました。それで、あの……」


 聞いてみたかったことを恐る恐る口にする。いや、答えはだいたい予想はついているんだけど。


「私の母親になる人物というのは……?」

「フランカという少女に決まっておろう。この世界の人間は、十五歳で成人し結婚することもできる。今はまだ子どもでも十年後は十八歳じゃ。結婚して子どもを生んでもなんの不思議もなかろう?」

「デスヨネー……」


 ていうか、この世界の成人早くないか?十五歳って中学生だぞ!?


「つまりじゃな、ケイよ。そなたはフランカという少女を守り、あの子が快適に過ごせるように環境を整えるのじゃ。そうすればそなたの来世は安泰じゃ。」

「は……はい。わかりました。がんばります。」


 八歳の女の子のために生きるって、今までの俺の常識からするととんだロリコン、いや、母親なんだからマザコン?ああもう訳わかんなくなってきた。

 いや、とにかく俺の周りにいる人達が平和で楽しく暮らせるようにすればいいんだ。フランカはもちろん、セシルもテレサもロベルトさんもマリアさんもみんないい人だし、みんなのために頑張るのは嫌じゃない。

 難しいことは考えなくていいんだ。


「そうじゃそうじゃ、ケイよ。次からは転移の際にここへ来ることはなくなる。転移の鍵は『眠り』じゃ。そなたが眠りにつくと転移が起こり、目覚めると眠った場所とは違う世界におるはずじゃ。それと、エルネアから地球に行こうが地球からエルネアに行こうが、転移した際に経過している時間は二時間じゃ。つまり目が覚めたとき、そなたは病院で意識を失ってから二時間後の世界にいることになる。」

「わかりました。色々とお世話になりました。また何かありましたらよろしくお願いいたします。」

「うむ。しっかり見守っておくから、そなたの望むままに行動するがよい。」



 目を閉じると、意識が薄れゆくのを感じた。









「あ、先生!意識が回復しました!」

「血圧、脈拍、共に正常です!」


 慌ただしい声と、バタバタと響く足音、規則的な機械音。

 目を開けると病室だった。

 そうか、元の世界に戻ったんだな。


「圭!しっかり!母さんよ!!!」

「うん、わかるよ。もう大丈夫だから。」


 痛いほどに俺の手を握り、必死に呼びかける母さんの声。目尻には涙が光っている。

 ああ、母さん。俺、死ぬはずだったんだよ。

 でもそれは手違いでさ。

 本当は、半年後に死ぬんだ。


 言いたいことは色々あったが、結局何も言わないことにした。そんなこと言ったって悲しませるだけだし。

 意識がまだ混乱していると思われるし。


「圭くん、自分のフルネームと生年月日を言えるかい?」


 主治医の先生が語りかける。


「名前は細川圭。生年月日は二〇〇一年五月十六日。二十歳です。」

「うん、意識はしっかりしているし、受け答えもいつもどおりだ。お母さん、今日はもう心配ないでしょう。」


 先生の言葉に頭を深く下げる母さん。時計を見ると、23:43だ。急な頭痛があったのが九時半ごろだから、ディミトリオス様の言う通り二時間位経ってたんだな。


「母さん、俺はもう大丈夫だから、家に戻って休みなよ。明日も仕事なんでしょ?」

「でも……」

「大丈夫だって。俺ももう寝るし、ここにいても暇なだけだよ。」

「……わかったわ。何かあったらすぐに看護師さんに知らせるのよ。」

「うん。おやすみ。」


 まだ名残惜しそうにしていたが、「おやすみなさい。」と小さく言って母さんは病室を後にした。


 俺はふうっと息を吐き、これまであったことを振り返る。


 白い空間に飛ばされて、死んで異世界に転生すると知らされた。手違いで早まっただけだけど。

 転生先は戦争真っ只中で、魔族なんかもいるらしい。

 来世の俺を少しでも助けるために、残りの寿命半年間で森を開拓しなければならない。


 ははっ。


 漫画や小説もびっくりの展開だな。

 本当にあったことなんだろうか。

 意識が朦朧としているときに見た長い夢?


 でも……


 いいじゃないか。いつ死んでもおかしくない身体なんだ。

 それなら来世の俺に投資の意味も込めて働いてやるさ。

 夢とはいえ、あんなに自然の中を歩き回って、魚なんか追い回して、他人と一緒に力を合わせて・・・

 俺がずっとやりたかった、でもずっと諦めていたことだ。

 それができるだけでも、この転移をやる意味がある。


「よし!吹っ切れた!」


 小さく声に出す。

 病室は静かだから妙に響いた。


 こうなったら、地球にいる間にできるだけ情報を集めて、必要な物資をエルネアに持ち込んで、チートな開拓をしてやるよ。


 深夜だけど全く眠くない。

 というか、寝たら転移してしまう。

 あれ?これ、俺、いつ寝るんだ?

 今度転移したときにディミトリオス様に相談してみよう。

 とりあえず、パソコンを起動。

 インターネットに繋いで、調べ物開始だ。

 エルネア開拓で必要なものは…………


 食べられる植物の見分け方とか?

 いつまでも野宿するわけにも行かないし、住居の作り方。

 自給自足が求められるから、畑や農具、種、肥料なんかもいるな。

 石鹸なんかもほしい。というか、あっちに風呂ってあるのだろうか。

 ゆくゆくは風呂も作らないとな。来世の俺が風呂に入れないなんて不憫すぎる。

 う~ん、とりあえず、衣・食・住だな。それも住居。これがないと雨ざらしだ。


 とすると、クワや斧、のこぎりなんかも必要だし、

 いや、そもそもここ病院だし、どうやって調達するよ。どう考えても怪しまれるだろ。

 じゃあとりあえずすぐに持っていけそうなもの。

 タオル、これは棚に山のようにあるからちょっと拝借していこう。

 あと、石鹸、これも持っていこう。

 食料というか、栄養補給のために飴でも持っていくか?甘いものは子どもも喜びそうだし。

 あとこれからの計画とか、知識を共有するためにもなにかメモできるもの、ノートと油性ペンくらいでいいか。

 電化製品とかプラスチックとか持ち込んでもなあ。出どころを疑われるし、向こうで再現できるかわからないし。

 ああ、もう少し相談してから地球に戻るんだった。


 とりあえず覚えられる範囲のサバイバル知識を頭に詰め込み、病室から持っていけそうなもの数点をしっかりと小脇に抱え、俺は眠りに落ちた。


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