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34.再開発計画

 見慣れた病室。俺は地球に戻ってきていた。

 今回の目的はズバリ村の再開発計画作りだ。

 時計を見ると、23:55。前回の消灯時間から二時間後ってとこだな。


 さて、再開発と言っても具体的にどうすればよいのだろう。

 うーん、考えようとすると思いつかない。とりあえず、まずは困っていることや心配なことを箇条書きにしてみる。


 ・景観……必要なものを都度建てているのでごちゃごちゃだ。ヨーロッパ風の家のすぐ裏に神社のような建物がある。

 ・利便性……食料庫を住居エリアに置いたため、畑が広がるとめちゃくちゃ遠くなる。製粉所なんかもバラバラの場所にある。

 ・安全……今の所問題はないが、大雨や台風、地震なんかが来たときの事も考えなくては。なにより、魔物や変なやつが入ると困る。

 ・人の流れ……新しい移住者が来たときの仮住まい、ドワーフなど、他の集落との交易の準備ができていない。


 思いつくだけでもかなりある。これをすべて解決し、安全で便利で美しくて住心地が良くて…………

 

 ……無理だ。才能の問題だろうか。

 それとも今の村が固定観念となって邪魔しているのか。思いつかない。


 こんなときは専門家(仮)だな。素直に姉貴に相談しよう。村作り以外にも色々アイディアとか聞いておきたいし。

 とりあえず姉貴に連絡、今困っていることなども簡単に送った。

 返事が来る。仕事があってちょっと時間がかかるかもしれないから週末に来てくれるらしい。

 ……てことは三日後か。久しぶりに地球を満喫しよう。村づくりに使えるものが見つかるかも。

 ふかふかのベッドに寝転び、のんびり過ごす。草と綿のベッドも悪くないが、やっぱ地球の布団にはかなわないな。

 もっと人が増えれば綿花の栽培も広げられるんだろうか。

 あと、シルク。シルクを手軽に使えるようになりたい。できればシルクスパイダーももう少し欲しい。


 とかなんとか考えているうちに、約束の週末が近づいてきていた。









「なるほどね。やぁっとそういうところにまで気が回るようになったか。」


 ブドウを一つつまみ、口に放り込みながら姉貴が言う。

 ちなみにこのブドウは母が差し入れに持ってきたものだ。後で食べようと冷蔵庫に入れておいたのだが、当たり前のように姉貴が食べている。別に慣れっこなので気にしない。姉貴自身も全く気にしていない。まったくジャイアンめ。


「それで?どういうふうにしたいとかイメージはあるの?」

「うーん……それが思いつかなくてさ。利便性もあって景観もそこそこ良くて安全で……とか?」

「いや抽象的すぎ。全然わからんわ。むしろそれで作れって言われたら普通の人間はキレるよ?」

「しょうがないだろ。今まで町のデザインとか考えるどころか、気にしたこともないんだから。」


 テレビとかでヨーロッパの町並みを見て、綺麗だなーと思うことはあったが、どういう工夫があるとかは気にしたことがなかった。

 それどころか自分の町の景観も気にしたことがない。

 何があるから便利とか、市民の安全のためにどんな工夫があるとか、観光客招致のために何をしているとか、自分にはあまり関係ないと思っていたからな。


「ま、私も別に詳しいわけじゃないんだけどね。とりあえず、今の町がどんな感じか教えてよ。どこに何があるとか、上空から見たイメージ図的な感じで。」

「町と言えるほど発展してないんだけど…………。」


 現段階ではまだ『村』、いや、『集落』か?基準がわからん。

 それはさておき、俺は紙にざっくりとした地図を書いた。


 えっと、まず村の中心に世界樹があるだろ?その周りは広場になってて……。

 住居や畑、水路、食料庫…………今まで建てた建物たちの位置関係を思い出しながら書いてみる。

 上空から見たことが無いから、距離感とかスケールとかは違うかもしれないけど。





「…………こんな感じかな。」


 できた地図を姉貴に渡す。姉貴はそれを見るなり、「こりゃ酷い。」と言い放った。

 うっ……いいんだよ。今から良くなるんだから。


「んー……とりあえず最終的にどんな感じにしたいかのゴールを決めよう。それに沿って、技術レベルに応じて少しづつ建て替えていくの。

 まず、利便性だっけ?そもそも住居のすぐとなりに畑の貯蔵庫があって、食堂の目の前に製糸場ってアホなの?

 畑は畑、工業は工業、住宅は住宅、それぞれのエリアで分けるの。

 ちなみに私達の町を参考にするなら、この病院は商業区にある。

 駅に近くて、一番利便性もあって、何かあったときに人が来やすい場所なの。ほら、コンビニもデパートもこの辺りに密集してるでしょ?

 うちの実家は住宅街、同じように住宅が並んでて、デパートや工場なんかは近くにないでしょ?そういうふうに考えるのよ。」


 なるほど、そういうことか。あらためて自分の町を見るとヒントがたくさん転がっているんだな。

 姉貴は新しい紙にサラサラと書いていく。


「町の中心の、この大きなシンボルツリーはいいわね。周りを広場にしたのもいいと思う。例えばこの広場を中心に町を四つに区切って____」


 姉貴はそう言いながら木のイラストを中心に十字を書く。


「ここが町の入口、この縦線に沿ってメインストリート。左手前に商業エリア、お店とか宿とか食堂とかね。右手前に工業エリア、広場の奥側に住居エリアと農業エリア…………」

「今の入口に近いのは畑エリアなんだけど……。」


 入り口、というか一番利用する道は畑の方向にある。この地図だと反対じゃないか?


「外から来る人のこと考えてみ?さあ街につきました!ワクワク、どんな街なんだろう?一面の畑です!……行きたいと思う?」

「……思いません。」


 納得。

 もう下手に口出しするのはやめよう。

 どうぞ、俺に構わず続けてください。


 その後も姉貴は時折俺に質問しつつもどんどん書き込み、簡単ではあるが町の完成予想図ができた。

 メインストリートの両側には商業エリアと工業エリアが広がり、道は碁盤の目のようになっている。

 建物のテイストと高さはなるべく揃えて全体に統一感。これはヨーロッパや京都なんかの観光地でもやっているらしい。

 工業エリアも観光客のことなんかを考え、一般人が立ち入るような種類の建物をメインストリート側に、一般人にはあまり縁のないような工場系を奥の方に配置。

 広場の奥は住居エリアと農業エリア。ここは住む人のことを考えてのんびりとした田園風景が広がるヨーロッパの田舎風に。

 その他にもここはこうだあそこはどうだと細かい仕様が書かれている。

 水路も将来的には上下水道を地下に張り巡らせる。地下にすることで野生動物やら鳥の糞なんかが落ちるのを防げるし、雨が降っても溢れにくいとのこと。今はほんとに畑の用水路って感じだからな。

 あとは道路の舗装やら建物の素材やらは発展度合いに応じて考えろと言われた。

 すごいな。俺には絶対に考えつかない工夫がたくさんある。

 まじで尊敬。相談してよかった。

 冷蔵庫にもう一房残っているブドウもお土産に渡してやろう。


 ついでということで、新しい服のデザインや小物類、あとは天然素材でできる化粧水やシャンプーと言った美容製品の作り方なんかを渡された。これは村の女性たちのためにらしい。可愛い子や美人な女性が髪も肌も荒れ放題なのは同じ女性として見ていられないんだと。

 いや、そもそも見たことないだろというツッコミはやめておいた。怒られるのは目に見えている。




 

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