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33.試飲会

 ついにビールが完成にした。

 早速大人たちで試飲をしてみる。


 大樹の根元に建てた簡易小屋からビール樽を取り出し、コックをひねると少し濁った黄金色の液体が出てきた。

 ちなみにノームたちに樽を作ってもらうとき、しっかりコックもお願いしておいた。

 こういう小さな工夫は大事。まあ偉いのは俺ではなく作ってくれたノームなんだけどね。


 今まであまり素振りを見せていなかったが、実はみんなかなり楽しみにしていたらしい。

 身を乗り出してビールが注がれる様子を見守る大人たち。

 そして全員の手にコップが行き渡った。


「では、村長、一言頼む。」

「えー、コホン。世界樹の加護とみんなの努力で無事にビールができた。どうか良い味に仕上がっていますように。そして、この酒が俺たちのさらなる発展の足がかりになることを願って……乾杯!」


 みんな一斉にビールを一口。俺にとっては人生初の酒である。

 口に入れた瞬間、しゅわ、とした炭酸が舌を通り抜け麦の香りが広がる。そしてなんとも言えない苦味とほのかな甘味。

 ……美味い、と思う。嫌いな味ではない。

 だが一般的にこれは美味いビールになっているのか?こればっかりは周りの反応で確認するしかない。



「………………」

「……………………」

「…………これは…………」

「…………なんと……………………」


 え、ノーコメント?失敗だった??

 俺が「えっと…………」と声をかけようとしたとき。


「「「「うんまぁーーーーいいいいい!!!!!」」」」

「「「「「美味しい!!!!」」」」」


 一斉に叫びだす大人たち。

 び、びっくりした……。子どもたちも何ごとかと遠くからこちらを覗いている。


「これは驚きです……!」

「想像以上の出来ですね!」

「いや、こんなビールは今まで飲んだことがありません!!」

「こいつは驚きじゃ!王都の上物にも負けておらんぞ!」

「こんな美味しいビールができるなんてねぇ。」

「大成功なんじゃない!?」

「間違いないですね!」

「これならきっとドワーフも満足ですよ!」

「ビールはあまり飲んだことがないのですが、これは美味しい!」


 全員が全員大絶賛だ。

 ということは本当に美味しいのか。成功ってことでいいんだよな? 


「えっと、これは成功ってことでいいんだよな?」

「当然じゃ!まさかこれほどの味のものができるとはのう!!」

「世界樹の御加護のおかげでしょうか。」

「あぁ、美味しい!ドワーフに渡さずにみんなで飲んでしまいたいくらいよ!」

「ぜひまた作りましょう。村の恒例行事にするのです!」

「麦畑とぶどう畑ももっと広げてもいいんじゃないかしら?」


 このはしゃぎっぷりをみるに、ビールは成功したようだ。

 そして「麦畑とぶどう畑の拡張」というマリアさんの案に全員が大きく頷く。何度も頷く。俺の目を見ながら。

 無言の圧だ。


「そ、そうだな。俺たちも酒を楽しみたいし、ドワーフと取引を続けることになっても良いように、酒用の畑を広げることにしよう。」


 美味しい酒の前には、村長の威厳も何もあったもんじゃなかった。








 ビールも無事にできたということで、ガルクたちは三度目の仲間探しへ。今回は南にあるギア山脈の方へ足を伸ばしてみるらしい。

 ギア山脈は大地の神ガイアスの名から付けられたといい、魔族領と人間の国を隔てる形で位置している。元は大きな火山で、伝説では数万年前に大地の神ガイアスの怒りによって大噴火がおこり、今の山脈の形になったんだとか。山の向こう側は魔族領ということで、人間は山に近づきもしない。遠くから「神の山」として拝むだけの存在であるとロベルトさんが説明してくれた。

 なるほど、それなら鬼人にとっても好都合だな。一人でも仲間が見つかるといいのだが。


 装備を整え、翌朝出発。今回のメンバーもガルクとビオラ、エルド姉弟だ。ナディアは毛皮加工に残り、ジェイクは村を守るために一応残るらしい。

 まあ確かに、戦力を少し残しておくと安心だしな。この小さな村にジェイクの力は過剰戦力とも言えるが。


 ジェイクの働きは凄まじい。

 狩りでは大物をいとも簡単に捉え、素早く解体をする。毛皮を受け取ったナディアは大急ぎでなめし作業へ。

 皮の内側の皮下脂肪処理が追いつかないということで、セシルに助っ人に入ってもらった。

 さすがは器用なセシル。ナディアの手ほどきを受けながら器用に皮下脂肪を削り取っていく。どうやら難しい細かい箇所のやり方まですぐに習得していったらしい。

 食事の席で延々と褒め続けるナディアに、セシルの顔は真っ赤だ。


 また、ジェイクが地下倉庫の穴掘りをどんどん進めてくれたので、立派な肉の保管庫も完成した。

 どうやらオンディーヌたちは水を凍らすこともできるらしいので、地下倉庫の壁面を凍らせて冷凍庫のようにする。下級精霊の力ではそんなに長持ちしないらしいので、週に一回程メンテナンスをお願いした。これで冷凍保存ができるようになった。


 建築でもジェイクは大活躍だ。重い丸太や石材を軽々と運び、ノームたちも大喜びだ。

 おかげで新たに三棟の住居ができた。村全体では七棟の家だ。

 ちなみに今の内訳は、

 人間の男性陣(俺、ロベルトさん、セシル)で一つ。

 女性陣(マリアさん、テレサ、フランカ)で一つ。

 ガルク一家(ガルク、ビオラ、ゼノ、カルナ)で一つ。

 エルド、エルヴィラ、ナディア、ジェイクで一つ。


 これに三棟できたわけだしエルドたちは男女で2:2でもいいかもしれないな。

 ガルク一家の家に比べて少し小さい作りだし、鬼人は大柄だから少し圧迫感があるんじゃないか?


 というか、いっそみんな家族ごとで分けるか?他人と一緒に住むよりは、一家族一軒の家のほうが落ち着くだろう。

 俺のような一人暮らしが数人できるが、それもありだと思う。

 そうすると今のメンバーで七軒の家。新しく来る鬼人が何人かはわからない。


 加えて他の建物も入用になるかもしれないし、うーん。一家族一軒はちょっと保留か。

 というか、そろそろ本気で村全体の再開発を考えてもいいかも。このまま行き当たりばったりに作るとせっかくのきれいな建物たちもごちゃごちゃして見えてしまうし、エリア分けなんかもしっかり考えて作ったほうがいいに決まっていいる。



 よし、今夜地球に転移しよう。そんで、姉貴に相談しながら村の全体図を考えていこう。

 来世の俺が住むことになる村。どうせなら住むのに便利で見た目もきれいな村がいい。


 









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