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31.戦士の帰還

 ガルクたちが旅に出ている間に、居住エリアの建築を進めておく。

 何人増えるかわからないけど、家が無いよりは家があったほうがいいに決まっているしな。

 家族ごとに住むとして、二~三家族くらいだろうか?それとももっとか?

 とりあえず二棟ほど建てておこう。そしてトイレも増やす。人数が増えて利用回数も増えたしね。

 何回かトイレ待ちを目撃したこともあるし、自分の目の前に次の人が並んでいると若干気まずい空気になる。

 小心者の俺にはけっこうダメージを食らうことなのだ。

 理想は各家にトイレが有ることだけど、それはもう少し人数が増えてからだな。とりあえずはトイレと鬼人用の住居をトウリョウに依頼する。

 木材の切り出しがなくなった分ノームたちも建築に集中できるみたいで、気合が入っていた。

 ハーフティンバーの建物が並ぶさまは、ヨーロッパの片田舎のようで結構気に入っている。奥に神社が見えるのがアレだが。

 ……やっぱり頃合いを見て再開発とか考えたほうがいいのか?また姉貴に相談しよう。





 十日後、昼過ぎにガルクたちが返ってきた。二人とも沈んだ顔をしている。


「おかえりなさい。大変だったでしょう。」

「まあ、まずはゆっくり休みなさい。」

「おかえり。見つからなかったのか?」


 黙って首を振るビオラ。ガルクが重い声で言った。


「見つかったのですが、だめでした。すでに死んでいました。」

「……そうか………………。」


 話によると、山の中腹に獣に喰われた鬼人の死体があったらしい。かなり食い荒らされていたが、残った部分から仲間だと特定してきたとか。


「死体は三人でした。うち一人は子どもです。……助けてやりたかった。」

「身元……誰の遺体かはわかったのか?」

「……ええ。3人共良い仲間でした…………。」


 沈んだガルクとビオラ。なんと声をかけたらいいんだろう。考えたが思い浮かばない。

 今は何を言っても逆効果だと思い、「お疲れ様。とりあえずゆっくり休んだほうがいい。」とだけ言って肩をたたいた。


 夕暮れ時には、エルド姉弟が返ってきた。

 屈強な男を一人連れている。


「おかえり。見つかったのか?」

「ああ、よかった。なかなか帰らないから心配したのよ。」

「こちらの方がそう?」

「はい。彼はジェイク。里で一番の戦士でした。」


 ジェイクは二メートル以上はある大柄な男性だ。浅黒い肌に長めの黒髪がなんとも言えない迫力を出している。なんでも里を襲撃された際に、皆を逃がすためたった一人で六十人の兵士を食い止めたとか。


「我々が生きているのも、ジェイクが兵士を抑え、逃げ道を守ってくれたおかげです。まさか生きているとは……本当に良かった。そして改めて礼を言わせて欲しい。」


 ジェイクを見たガルクはそう言って頭を下げる。

ジェイクは首を振り、「それでも大勢が死んだ。できるなら皆助けたかった。」と悔しそうな表情をする。

 それにしてもよく生きていたな。この長い期間をたった一人で。そこは流石里一番の戦士と言ったところか。

 ジェイクは大きな怪我は無いようだが、腰にまきつけた毛皮はかなり臭うし、髪も肌もベタベタボサボサだ。聞けば一人で狩りをし、その毛皮をそのまま身につけて寒さをしのいでいたらしい。


「あなたが村長ですか?まずは仲間の保護をして頂きありがとうございました。そしてどうか、私もその末席に加えていただきたい。この村の盾として、命ある限り忠誠を誓います。」


 俺に向かって跪き頭を下げるジェイク。

 ものすごく様にはなっているが、そんな家来みたいな扱いをするわけじゃないし、もうちょっと楽になって欲しい。


「頭をあげてください。もちろん歓迎しますよ。それと、そんなにへりくだらなくても大丈夫ですから。これから頼りにさせてもらいますね。」


 そう言うとジェイクはしっかりと頭を下げた。

 なんか戦士と言うより武士って感じだな。

 ともかく頼りになりそうだ。


 まずはジェイクを風呂に入れる。ついでにガルクたちも。

 そしてみんなで歓迎と帰還を祝っての宴会だ。

やはり鬼人がそろうと消費スピードがすごい。女性陣がこれでもかと用意した料理が次々になくなっていく。

俺たちも食いっぱぐれないようにせっせと食べた。


 ジェイクは鬼人の中でも鬼の遺伝子を強く受け継いだらしく、体の丈夫さや身体能力は純粋な鬼に匹敵するらしい。むしろ、本能のままに突っ込む鬼たちよりも、人間の知能を持ち合わせている分強いかもしれないというのだ。

 まじかよ。そんなすごい人が仲間になってくれるとは心強いな。


「私の身体は鬼とほぼ同じ丈夫さを持っています。なので炎にも強いんですよ。ただそのせいで、鬼に間違えられることも多いんですがね。」


 なるほど、焼き払われた里で兵士を食い止めることが出来たのも、ジェイクの鬼の遺伝子のおかげだったのか。

 見た目もガルクたちとは少し違う。

 角はより長く、爪も獣のように尖っている。

 口を開けた時に大きな牙が見えるのも特徴だ。


 なんにしろ、頼りになることは間違いないな。

 セシルやフランカも最初はビビっていたものの、ジェイクの優しい話し方に安心したのかすぐに打ち解けていった。


 宴会もだいぶ落ち着いたところでお開きに。

 新しく建てた家を割り当て、みんな疲れただろうから早めに解散。


 明日からまたフルメンバーで頑張ろう。




 

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